「淵」第242号が届きました。#今日の短歌
「淵」第242号が届きました。
たくさんの短歌を紹介するわけにいかないので、いつものように前号の短歌の中から選んだ、「私の好きな一首選」を紹介したいと思います。
今回の一首選者は、大野雅子さんと大宮ふじ江さんです。
私の好きな一首選 大野雅子 選
〇 怪我させず無事に帰すをこころして孫らの好物並べる夕餉
渋谷富子
〇 青春の五月のバラは消えぬまま紺碧の空に沸く雲のごと
角田章予
〇 霧の中より生まれくる尾瀬沼の乳白色の時の間を行く
佐々木誠吾
〇 幼くも二人の男孫ら吾に懐き泣いて笑って至福の時を
澁谷孝男
〇 竹の子とフキを分け合い妹と筑波の山に別れの茜
大宮ふじ江
〇 言の葉をめくり繋げて思い込めひとすじに詠む初夏の午後
大木静花
〇 一語づつ必死に言葉たぐり寄せつむぐ心の糸の愛しも
木下容子
〇 雪溪に鷹羽ばたきて田植えなり緑になれば登りたき岩手山
丹波ともこ
〇 転倒した左の腕がままならず十分弾いては十分休む
伊達美智子
〇 立ち寄りしニコライ堂の一隅に山下りんのイコン鎮もる
澤田毬子
〇 復活の祭りは春のよきしるし静かに祈りぬ戦い止む日を
大野雅子
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私の好きな一首選 大宮ふじ江 選
〇 美智子妃にわづかに似るとふ御仏にま向かひて立ちてほほゑみ返す
渋谷富子
〇 水車小屋五分咲き桜と菜の花とうららうららと旅気分
角田章予
〇 あるがまま自然の掟に従えて生きる日々にて有難きかな
佐々木誠吾
〇 花吹雪寂しかろうか花冠からはなればなれに散りゆくさまは
大野雅子
〇 歳重ねあまたの病われ抱え妻は頼れるこころの杖に
澁谷孝男
〇 言の葉をめくり繋げて思い込めひとすじに詠む初夏の午後
大木静花
〇 一語づつ必死に言葉たぐり寄せつむぐ心の糸の愛しも
木下容子
〇 よく見れば雪の下からきみどりの新芽こげ茶の土をはい出ぬ
丹波とも子
〇 嫁ぐまで娘が奏でしピアノあり手放しがたく調律続く
伊達美智子
〇 大和路の染め入る鹿鳴集われ羽ばたけば大寺の屋根
澤田毬子
〇 古希迎え別れの数が出会いより多くなりゆく夕暮れの空
大宮ふじ江
※ 今回も目を通していただき有難うございます。