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「禁断の国史」が超面白い。(三)スサノオノミコト(素戔嗚尊)

第一章 神話時代の神々

(三) 素戔嗚尊 (暴れん坊だが、歌詠みでもあった)

 イザナギが黄泉の国から逃げ帰り、禊ぎを受けると、左目からアマテラスが、右目からツクヨミ、鼻から生まれたのがスサノウである。
 鼻息が荒いという比喩があるように活力、いのちの源泉を吹き込んだ。
 乱暴者だったスサノオは高天原を追放されて出雲へたどり着き八岐大蛇を退治し、美女を娶り出雲を治めた。

 このスサノオを祀る全国の総本山は京都の八坂神社、関東の総本山は大宮(さいたま市)の氷川神社。世界的に有名な八坂神社の主神はスサノオなのである。八坂神社は祇園祭の胴元であり夥しい(おびただしい)参詣客が集まる。
 
 スサノオはヤマタノオロチを退治した。大蛇を切った尻尾からでてきた剣が三種の神器のひとつ、草薙剣だった。『古事記』には「古志の八岐大蛇」と意図的な記述がある。鋭利な剣が使われていたという記述は鉄器の存在を意味する。
 また、大蛇に八つの頭があると聞いて八つの壺に強い酒を入れて酔わせた。この意味は当時すでに酒があった証、日本の食文化の高さを物語る。

 つまり出雲は文明的に高度に拓けていた事態を意味する。
 当時の地政学では朝鮮半島、中国大陸に近い先進地域は日本海側だった。
 北陸に散在する縄文遺跡のなかでも若狭の鳥浜貝塚、能登の真脇、金沢のチカモリ遺跡、越中の北代、越後の木津遺跡群、長者原と馬高、笹山など無数の遺跡が発掘され、研究が続けられている。

 ヤマト王権を象徴する古墳より前の時代、これら縄文遺跡では、巨木の柱を立てて、おそらく祭壇としていた。ストーンサークルも明らかに信仰の祈祷儀式に関連する。古墳が古志国に入ってくるのは出雲との政治同盟以後である。

 つまり「古志の八岐大蛇」と古事記がわざわざ「古志の」を冠したように、スサノオが出雲に行く前までは古志(越=北陸地方の勢力。「高志」とも書く)が出雲を支配していたのではないのか。のちにオオクニヌシが古志の糸魚川へ行ってヌノカワ姫に求婚するというのは、今度は出雲が古志を従わせたという意味である。

 さて、日本最古の和歌はスサノオが詠んだ「八重垣」である。
 『古事記』に拠れば、

  八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を

 アマテラスに追放され、出雲に降ったスサノオが八岐大蛇を退治したあとクシナダヒメを妻に迎えた心境を詠じた和歌。
 このスサノオから和歌三十一文字が定まった。

 まだ誰も論じていないが、この「八重垣」とは古志の侵攻から出雲を防備する「砦」、もしくは「軍事要塞」を意味している。

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※ 今回も山崎正弘先生の見識が冴えていますね。
  わかり易く古代に入れるので、誰が読んでも面白いです。
 「禁断の国史」 山崎正弘著 ハート出版。

※ 次回は、ニニギノミコトです。ご期待くださいませ。

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追記です。2025,1,13.

うれしいお知らせです!

「禁断の国史」が超面白い。(三)スサノ…」は先週特にスキを集めた#読書の記事です!


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