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月の引力が君を見せるなら 僕は奪われないようにこうして気を引く
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#恋愛

証拠品が足りないわけじゃない、と君は裁くけど。不安そうな顔。
殺人未遂で立たされてる僕の現状だけが君の証人。

ミジンコも宇宙もぜんぶにあの鯨の肌を思い出す
海の向こうの遠い国でも 銀河の先の星でも
脳の裏でずっと泳いでくれよ

物言う花が咲いている
モモノハナ
羽衣盗んだら灰にして呑んでやる
揺蕩う首筋 三日月印
その茎 折ったら終いだ
お嬢サマ、拝借させて頂きます

沁 雪降る泥の飢え
沁 陽降る花の思た

脳 舌 小指
煎じて飲むだけじゃア……
熟れたらなンとか心配不要
賞味は万事 口付けも微笑む

海より肉よりもずっと深いところにいる
受け売りだけど
馬鹿が喜ぶ桜になるなら
死体よりもずっと深いところにいる
芽吹かなくていい
根を這って
骨身を折るまで髄までここにいて
春風の吹く前に霜焼けの下で
凍えてしまって
幾億年後に目を覚まそう

地面離陸

地面離陸

月の裏に行こうか
瞬きの合間に辿り着くだろう
安心して
彼らにも夜はあるんだ
だから一緒に踊ってしまおうよ
冬眠船から抜け出して

月の裏に行こうか
38万キロメートルを飛び越えて
安心して
僕らにも夜はくるんだ
だから一緒に眠ってしまおうよ
寒空の窓を開けて

安心して
アポロ11号なんて嘘だから

君の役はカウブーニャ
呪いをかけられたカウブーニャ
喉が乾けば目の前に葡萄酒
お腹が空けば目の前にパン
お姫様 望めばなれるかもね
王子様 呼べば来るかもね
死んじゃえって君がいったらお終いね
僕の役は呪い

なびく帆が折れたって
銀食器にとっぷり乗った星粒が
僕らの航海を涙している
真っ暗な快晴
月のお零れが君の頬をなぞる
鉛の海に溺れないよう
君は手を絡めている
なびく帆が折れたって
初めから櫂を漕ぐ気なんて無かった
夜風の怠惰に乗っかって
蝸牛の航路
君ごと連れて絶海を彷徨う

印を押す カンバスに布かれた骨身の表に
良い魔除けだろ 特別、無料で付けてやる
かわいいかわいい君だからさ
他の奴には秘密だ
チラッと見えたらお洒落だろ
かわいいかわいい君に似合うよ
他の奴に渡してたまるか
チラッと見えたら逃げてくだろ
記憶の隅に木枠の裏の領収書つきだ

秋星に惚を翳す

秋星に惚を翳す

星座にうつつを盗まれた
星座にうつつを盗まれた
寒さ寒さ寒さ風の生易しさが頬を殴る
火照った
熱帯夜を攫って感傷的な微笑みを浮かべる
ごめんなさいね、ごめんなさい、ね、と
夜風にあンまりにも嘲笑されてるンだと
ずっと勘違いしたくなる
勘違いしてなきゃ耐えられない
あたりまえに掴めない星へ手を伸ばす

あたまン中が微温湯の体液に浸かされていく
明かすには少し熱すぎた
煮だった痛手に良く効くみたいだ
傷に沁みる
傷に染みる
ドス黒も煤には変わったかしらん
変わりにソッチは滲みちまったかい
悪気はないんだ
ただ溢れちまったンだ
悪気はないんだ
ただ気が触れただけなンだ

電子の世界じゃ全てが絡まり恨めしい
お前の伝う糸を切りたい
真っ逆さまおっこちて
蚊帳の外、青い死の画面で藻掻く俺に出会えるだろうから
そこからは終いだ
波の届かぬこの場所じゃ否定肯定術は無し
ろくでなしは嫌いか
沈めてしまいたいよ、ナァ
沈めてしまいたいよ、ナァ……

胃袋裂いて君の香りで封をしても缶詰め如きは所詮ごっこネ
腸に君の言葉を練り込んで毎日分にしたって快眠はできやしないな

味が落ちたら火を通してやる
賞味期限を騙してやる
腐っちまうまえに
腐っちまうまえに

甚む前 新鮮な一級品を見舞いに行く
それで結局寝込んで幸不幸な御中毒