松たか子さん主演、2025新春ドラマ|ドラマ感想「スロウトレイン」
「今日という日に、ここまで
黒が1つもない服を…」
列車で話す3人は兄弟で、今日は23回忌だったらしい。
しっかり喪服を着た葉子(松たか子)カラフルな都子(多部未華子)間で苦笑いする潮(松坂桃李)のセリフが飛び交う。
電車を降り、ホームを歩く2人に、都子が言う
「私、韓国いく」
おおお?!というところでOP
好きな雰囲気だなぁと思っていたら
「音楽 長岡亮介」の文字
えええええええ?!
音楽まで、目が話せない(この場合、耳?)
2025年、お正月。
新春スペシャルドラマ「スロウトレイン」を観た。
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交通事故で両親と祖母を1度に亡くした兄弟。
3人いっしょに鎌倉の実家で暮らしていたけれど
少しずつそれぞれの幸せに進んでいく。
✒家族、兄弟、両親の死、編集者、マッチングアプリ、国際恋愛、同性愛、結婚、韓国、孤独、子ども
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ここからはネタバレを含みます。
彼氏と韓国に旅立った都子。
入居に準備金がいると言われて100万円を渡しているのに、なかなか仮住まいのコンドミニアムから引っ越せない。
彼を問い詰めたら「結婚しよう」「2人で暮らす部屋を探している」と。
怪しすぎるし、危うい。
日本を出る前、葉子に「もっと計画的に動けないの」と言われて、都子は言っていた。
「明日、死んじゃうかもしれないんだよ」
過去の記憶がそうさせている、と思うと苦しかった。
そして、都子はプロポーズを断る。
「葉子ねぇが、まだ結婚してない」と。
一方の葉子は、独身というだけで、どうして幸せじゃないみたいに思われるんだろうと思いながら、ミステリー作家の百目鬼(星野源)にすすめられてマッチングアプリをはじめていた。
「どうしてみんな、番にしたがるんでしょう」
マッチングアプリで会うことになった相手に話す葉子。
「あなた、孤独じゃないんですよ」
「一人でも生きていけるって、ひとりじゃないから言えるんです」
ひとりが不安で、アプリを使っている男性は言った。
過去に「ラストマイル」や「逃げ恥」について記事を書いたことがあるけれど(記事をリンクしています)
このドラマでは、大きな事件は起きず、時間がゆっくり流れている。
その分、一人ひとりが丁寧に描かれていて、セリフが響く。
全編を通して、電車や盆石、ちらし寿司などのアイテムが良いアクセントになり、きれいなギターの音が寄り添っていた。
好きだ。
主演の松たか子さんが、地に足のついた、しっかりとした普通の人を自然に演じていて、穏やかで染みる。脚本の野木さんは、松さんに「当て書きですから」と直接、伝えられていたそうだ(日曜天国で聞きました)
私は、無類の当て書き作品好きなのだけれど、このドラマも「好きな当て書き作品ランキング」上位に入ってくるだろう。
ラストまで穏やかでありながら、あたたかく、前向きで、何よりみんなが幸せそうで「うわぁ。よかったー!いい年明けだ!」と思えるようなドラマだった。
実は、ネットニュースで潮と百目鬼が付き合っているというネタバレを知ってしまってから観たのだけれど(リアルタイムで観られなかったことをとても後悔した)それでも、よかった。
潮の恋愛については
ふと言ってくれた「毎日一緒に居られたらいいのに」を真に受けて、たくさん考えて、筋道をつけて、その後で、相手はそうでもなかったと知ってショックを受ける百目鬼に、思いっきり感情移入した。
「大きな幸せを見せられると、いやいや、これくらいでいいです。と思ってしまう」と言っていた潮に、「相手は家族じゃないんだよ。ちゃんと言わないと」と言ってくれた葉子のシーンもよかったな。
最後に読まれる、亡くなった両親への手紙で
葉子は、自分は子を持たないと語る。
それは両親の幸せとは違うかもしれないけれど、葉子の在り方だ。
なんだか、何度も観たくなる。
そんな新春ドラマだった。
一人の人も、誰かといる人も、どんな人が一緒でも
明るい気持ちで観られると思う。
今年も、いろいろなことがあるだろうけど、
それぞれの形で居よう。