人と組織. 19 - 日本における人づくりの課題 (1)
昨今、社会人の「学び直し」に関する議論が多い。
学び直しは確かに必要であり、とても大事なことである。
しかし、いささか腑に落ちないのは、
・新しい環境に対応できる人材づくりの手段は「教育」だけなのだろうか?
・社会人が学びなおすための制度等「インフラづくり」を構築しないと本当に人は、学べないのだろうか?
という点である。
例えば、日本の学校教育や社会人教育の大きな特徴は、「均質性重視の大量生産型」で、「社会で価値創造を担える人材の育成」といった視点はほとんどない。
そのために、個重視ではなく、画一的、マス型の教育手法がその特徴といえる。
結果として、画一的な人材を大量に輩出するのには、都合がいいが、独自な思考や考え方を有した人材を育てることは不可能であろう。
出来合いのメニューがたくさん用意されているので、自分で考える、自分で工夫するということもさほどしない。
結果的に指示されたことには忠実だけれど、その域はほとんど出ない。
自ら工夫する、工夫して動くといった自主性や主体性には、大きく欠如してしまう。
これは、為政者や経営者、或いはマネジメントする側にとっては、とても使いやすく便利で都合がいいだろうが、これでは新しい世界の流れをリードしうるような人材を育てることは難しいであろう。
自主的に動く、主体的に行動するというのは、ある意味で生物としての野生の一種といえる。
変化を嫌い、旧来からのやり方を守っている間に時代は大きく変わってしまった。
小手先の対応策で「やった感」を出し、抜本的な改革は見送る。
その繰り返しをしているうちに世界との差が大きく開いてしまった。
微修正のループから脱却するためにも、将来像の構築とそれに向けた大改革が必要なのではないだろうか。
例えば、学校教育ひとつとっても、現在の受験エリートは、「勉強するのは自分のため」と教えられてきているので「その成果を社会に還元する」、「社会に恩返しする」といった感覚は全くない。
その結果、「自分さえよければそれでよしとする 「自己完結的人間」や「自分最適的人間」を量産しているといえる。
我々日本人の根源的な生命力の衰えは、この辺にあるのでないだろうか。