NHK短歌、俳句への投稿作・10月号
こちらへの投稿作も月まとめでアップしていこうと思います。
短歌
選者:川野里子先生 題詠「ガラス(硝子)」
カバーガラス載せてつぶれるミジンコに謝りながら観察続ける
ガラス棒熱して沸騰石作る巧者は実験の運びもうまい
※カバーガラスの歌は佳作に採っていただきました。
川野先生、ありがとうございます!
選者:山崎聡子先生 題詠「怒っていたこと」
「通院で」「体調不良」明らかな言い訳を許せざりき若き日
身勝手な親と思へど長じれば男女の別れる理由さまざま
選者:吉川宏志先生 題詠「夏の虫」
森奥の参詣道にて壮大な蟻の空中婚に阻まる
黒砂糖入れて煮詰めた酢の液をカブトムシと一緒に舐めてたあの日
※この液は無茶苦茶おいしいです。ビールを入れてもいいです。
選者:岡野大嗣先生 題詠「ライブ」
WBCあの9回は完全に手を止めていた上司まで言う
生放送衝突事故を見て以来目が離せなかった羽生結弦さん
俳句
選者:夏井いつき先生 題詠「朝顔」
朝顔の枯れしままなる新婚家
朝顔は開く前夜が美しき
年越しのうすく小さき朝顔や
選者:山田佳乃先生 題詠「鳳仙花」
鳳仙花蟻にぶつかる零れ種
鳳仙花弱者の怒りほど強し
選者:村上鞆彦先生 題詠「新豆腐」
ビル裏に水乾きゆく新豆腐
新豆腐うすら青きに箸を入る
選者:高野ムツオ先生 題詠「七夕」
七夕の天や祈りに白濁す
七夕や千の言葉が燃ゆるなり
沸騰石の話・・・
沸騰石というのは微細な空気の入ったガラスの欠片のことです。これを水などの液体に入れてから加熱すると細かい空気の泡が出続けて、ボコッと突沸するのを防いでくれます。
作り方は、ガラス棒をバーナーで熱してドロドロに溶かしながらこねて空気を入れ、冷やして固まってから小さく割ります。理系の学生は基礎実験の授業で本番の実験を行う前にまず教官から沸騰石の作り方を教わるのですが、これが巧い人は実験の運びも巧い。
これは「飲み込みが早い」「手先が器用」のほかに「バーナーが怖い~失敗したら怖い~とか言わずにさっとやっちゃう、つまり度胸がある」のだなと、思ってみていました。もちろん実験は度胸以外に慎重さも必要なのですが。
私、2リットルの丸底フラスコを割ってしまい(結構高い。モノタロウで6千円くらいする)、教官に申告して、新しくもらったやつも割ってしまいました。もう一個下さいと申し出たときの彼の怖い顔と言ったらさぁ。
その教官はぐうぜん、入試のときに白紙の回答用紙を回収しにきたのと同じひとでした。