昆虫標本ダイエット/#毎週ショートショートnote
蝶の鱗粉が脂肪糖分を吸収する事が判明した。鱗粉は蛋白質とキチンから成っている。キチンは動物性の食物繊維であり、これが脂肪糖分を吸着するのだ。
しかも蛋白質には肌の弾力を維持する効果があり、美容ダイエット食品への応用が図られた。全国から数多の蝶が集められ鱗粉が採集された。蝶を殺し、羽を分離器にかける。標本の蝶も対象にされ、青い鱗粉が特に吸収率がよいことが判った。
そこで青い色素の多い烏揚羽、青筋揚羽の養殖が始まった。
孵ったばかりの蝶を箱に詰め、炭酸ガスを送る。絶命した蝶の羽を一体づつ捥ぎ取る。そのうち動物愛護団体から抗議がきた。無論、そうだ。研究者達は殺さずに鱗粉を採る方法を考え、羽を特殊な薬品につけ鱗粉を剥がす方法を編み出した。
透き通った羽で蝶は生き残った。だが温度調整など司る鱗粉が無いと、飛べないのだ。蝶たちはガラスケースの底に蠢きながら交尾した。彼らの卵から孵った蝶にもなぜか鱗粉が無かった。研究は中止された。
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たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。