オン・アイス
あー、もう雪いらん
誰かもらって、札幌の雪山
しかも、気温が高くて
水っけあるから、やたら滑るやないか
路地は、雪に埋もれて
道路の範囲が分からない
よって、大きな道しか通らない
すると大、渋、滞
今朝、交差点で信号を渡る人の
足もとを見ていたら
コンバース履いてる青年がいた
寒々しいズボンの裾からは
生足が見えて、まさかのくるぶしソックス
まぢかよ
おしゃれに夢中、てな感じでもないから
冬靴、夏靴の概念がないんだな、と
予測が立つ
母ちゃん、世話してやれよ
なんて独りお節介していた
がぁ
街に出ると、なかなかの確率で
若者たちはスニーカーで
スケートするように交差点を渡っている
中年には、ない習慣だ
しかも、けっこうな割合で
すっ転んで、笑ってる
アホか、コイツら
いやいや、雪の降らない
暖かい地方から来た人なのかもしれない
大学生とか観光客
雪道の歩き方を知らない人だから
転んでも仕方がないじゃないか
そんなことを思いながら
駐車場から職場まで歩いていると
道の真ん中あたりに人が立っていた
なんだ、うちの職員じゃないか
山ちゃん:
吉野さん、おはようございます
吉野さん:
あ、あ、あー、、、ああぁ
お、おはようございます
吉野さんは、両手を膝に屈んで
何かに耐えているようだ
ははーん、すごく滑る氷の上に
やっとの思いで立ってるんだ
その静止画で、すぐに分かった
除雪が入った道は
雪が磨かれて、ツルツル路面になる
もしくは、下が氷でその上に雪が積もると
罠みたいにツルッと滑る
吉野さんは、そのツルツルに
まんまとハマってしまったらしい
イメージとしては
生まれて初めてアイススケートしてます
と言った感じ
山ちゃん:
大丈夫じゃないみたいですね
防寒具に自信のある俺は
吉野さん救出のため
ツルツル路面に向かった
すると、吉野さん
しなきゃいいのに
再び歩こうとして両手を広げる
途端に足もとがガクガク言い出して
生まれたての子鹿みたいだ
山ちゃんの心の声:
ウケる!もう少し見ていたい!!
吉野さん:
あや、あ、あ、あぁぁぉおおあお
また寸でのところで
両手を膝にやり、事なきを得る
その静止画に、俺はすぐそばまで近寄って
手を差し伸べたのが
大間違い
吉野さんの両手は、支持を得るために
膝から離してはいけなかったのだ
吉野さんは膝から手を離し
俺の手を掴んだ途端
ああああああああああああああああ
ガクガクガクガクガクガクガクガク
俺もろとも、すってんころりん
おおおおあおおとああおあああああ
られれれららららららあああおおお
吉野さん:
ごめんなさい
這っていきます
何が何だか分からない2人
吉野さん、起き上がれず四つ這いで端に避難
俺は立ちあがろうとするのだけれど
ガクガクガクガクガクガクガクガク
山ちゃん:
おろろろろ、ろろろ
両手を膝にのせて、ピタッと立ち往生
早朝のあたりは、とても静かだ
自分の呼吸が聞こえる
息が生ぬるい
脈拍120オーバー、俺緊張してる
今度は、俺が子鹿の番だ
すると、ひと時の冷静さが
俺の頭を支配した
そうだ、うっかり忘れていた
先ほどアホ呼ばわりした若者たち
すまない
どんな靴を履いていようが
滑る時は、滑る
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