「ホワイトカラー消滅」を読んで
冨山和彦著「ホワイトカラー消滅」(発行所:NHK出版)を読んだ。
このところおかしいな、と思っていたことの答え合わせが出来たようで、スッキリした。
働き手が減ることへの対処
本書は、ビジネスの最前線で活躍する著者の経験とセンスに基づく未来予測。その基礎データのひとつに、リクルートワークス研究所が2023年に発表した「未来予測 2040」があった。HPの要約版を眺める限りでは、2040年の労働力不足は、1,100万人。2030年なら340万人の労働力不足する見通しだ。
以前、パーソル総合研究所・中央大学が2018年に発表した「労働市場の未来推計」では、2030年には650万人弱の労働力不足となっていたので若干違いはあるけど、方向性は同じ。
両研究所に限らず、いろんなシンクタンクが、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口推計」等を基礎に、各機関独自の分析と推計モデルを考案し、予測しているけど、だいたい同じような傾向を示している。昔から、社人研の人口統計を見ているけど、だいたい合ってる。
少なくとも、天気予報や経済予測よりも精度の高い予測だと思う。
労働力の供給不足(人手不足)は既に始まっているし、10年、20年後には、ますます厳しい事態になることは、たぶん、間違いない。
労働力不足対策は、「人から機械へ」、あるいは「移民の拡充」しかない。 つまり、「人から機械へ」では、機械化出来る仕事を見つけて、システムや機械に任せる仕事・・・エンジニアやコンサルタント、システム機器メーカー等々のビジネスが膨らんでいく。
「移民の拡充」なら、移民の促進や定住や就業支援事業等々。
本書では、中間管理職業務を担うホワイトカラーは消滅、と言ってるし、エッセンシャルワーカーの分野では、DX等による業務全体の抜本的見直しや統合・集約化、あるいは電子化や機械化が始まっている、と述べられている。たぶん、今後ますます加速する傾向にある。
一方の移民の拡充については、難しい状況だ。 たぶん、根底には、日本人の民族性なんかがありそうだ。 それに本書でも述べられているように、いずれ日本の人口は大幅に減少するわけで、それまでの繋ぎ策としてどうするか考えるべきなんだろう。 それよりもユニクロの柳井会長が言っているような一握りのクリエイティビティの高い移民を受け入れ、日本を活性化させていって欲しい気もする。
他人事では、済まない
人の数は国家の基本。
広い意味では一般論になるけど、自分自身のことでもある。
労働人口の現象は、自分の進みたい分野や産業の行方に大きく影響する。
同一労働同一賃金も常識になり、正規雇用者と非正規雇用者なんて概念も無くなるかも。SNSやサブスクも増えて、もはや副業も既成事実。
労働人口減少は、日本の社会を大きく変えていく。
同じ仕事ならば、長く勤めようが短かろうが、同じ賃金のまま。
子供が生まれようが、住宅を購入しようが・・・物価上昇程度の賃上げはあるかも知れないけど、それだけじゃ、ちょっと辛い。
いつだって、スキルアップしながら仕事してかなきゃならない。
フィンランドみたいに、大学の学費が無料なら、仕事を離れて、スキルアップしてから仕事に戻る方法もあるけど・・・
日本は、そういう国家体制になってないからなぁ。
本書は終章で「日本再生への20の提言」をまとめていて、参考になる話ががいくつもあった。
(敬称略)