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「ことば、身体、学び」を読んで
為末大・今井むつみ共著「ことば、身体、学び」(発行所:扶桑社)を読んだ。副題は、「できるようになる」。
このところ、フィンランドブームが続いているので、少し違う種類を読もうと思って手に取った。
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594095796
為末大さんは、ハードルの元オリンピック選手。選手時代、「コーチを付けずに自己流でチャレンジする」という話をどこかで聞いて、変わった人だなぁと当時は思っていた。今はコーチを付けない一流のアスリートはたくさんいるので、彼が先鞭をつけたのだろうか。
今井むつみさんは、初めて知った人。言語心理学の先生らしい。ひょっとしたら、この先、何かの本で出合うかもしれない。
ことばの魔法
ちょっと古いけど、昭和の時代に池田隼人首相が言った「所得倍増計画」は、「頑張っていたら、いつか必ず夢が叶うよ」と言っているようで、人々に夢と希望を与えた。まぁ、そんなに何もかもがうまくいくわけじゃないけど、誰にだって、自分を鼓舞する魔法の言葉がある。
政治家だけでなく、流行語だって、そういうものの一つ。
「言霊」を信じてるわけじゃないけど、読んだばかりのフレーズが心に刺さり、何かの楽曲がいつまでも頭の中をリフレイン。今日も一日頑張ろう、なんて思えた。
ナッジ(nudge)とか、こじゃれたことを言わずとも、言葉は、時として、感銘を与えるだけでなく、人を動かす。
本書で、最初に気になったのは、「足を三角に回す」だ。このフレーズ、実は今も走る時に意識してる(つもりだけど・・・)。
ジョギングが好きで、確かに、一歩踏み出した後を、しっかりさせると力強く走れる。読んだ瞬間、ナルホド、と思い、走ってみて実感した。さすがに為末さん、世界に名立たるトップアスリートだった。
オノマトペって、面白い
言葉の魔法ではないけど、「グルグル回す」とか、「そろりそろりと歩く」とか、呪文のような言葉も面白い。 「オノマトペ」って言うらしい。
オノマトペは、古代ギリシア語で、「onomatopoiia(オノマトポイーア)」に由来するとか。自然界の音や人や動物等々の状態や動きを、真似した擬態語のことを言うらしい。
「グルグル」は、「グルグルかき混ぜる」とか、「目がグルグル回る」なんて感じでオノマトペって、状況を説明するのにいいのかな、と思ったら、「ゴロゴロ」には、「雷がゴロゴロ」もあるし、「休みの日に家でゴロゴロ」とか、いろんな場面で使う。だから、オノマトペって、使い勝手イイことばかりじゃないよ、と本書にも書いてあった。為末さんは、一度学んだことを咀嚼して、自分の頭で考え直し、より深く理解する人のようだ。トップアスリートだからというおごりが感じられなくていい。
ともかく、オノマトペは、学問的な分析も進んで、児童学習やら、介護支援やら、いろんなところで役立っているらしい。
為末大さんは、このオノマトペって観点から、アスリートの育成を考え直し、今井むつみさんに問いかけ、二人の対話が始まっていく。
緊張したら、どうする?
本書で、大きな大会前で緊張してるアスリートに、コーチが「いつもどおりやればいい」と平常心を助言するシーンが出てくる。為末大さんは、こんなコーチが嫌でコーチを付けなくなったのか、どうか知らないけど、誰だって、緊張することはあるし、そんな時に平常心なんて持てない。誰でも知っている。※こんな時に平常心を保てるのはトップアスリートくらい。
緊張すると言えば、私も現役時代、大勢の人の前で話をする時、いつも緊張してた。逆に、緊張しない時は大概スベッて失敗した。ので、「イイ塩梅に緊張する」のが上手くいく。※イマドキは「塩梅」なんて言わないか。
「緊張してる」と思ったら、それはイイ兆候と自己暗示。正しいのかどうか知らないけど、そう思うと緊張とお友達になれた。
私の場合は、話し始めの前に、僅かな「沈黙の間」をつくった。大勢の人がいるのに、シ~ンとする様子は、ちょっとゾッとするけど、その沈黙を自分が支配してると思うと、なんか自信が出てきて、スルスルと始められた。
たぶん、人それぞれの対処法があるのだろ。為末大さんは、深く深く掘り下げ、スポーツに活かそうとしているので、それが面白い。
自分の頭で考える
本書で、今井むつみさんが「私たちはほとんどのことを外部の知識に頼り切っていて」と言い、「自分の外にある知識を、自分の知識と同一視して使っている」と話していてハッとした。ちょっと驚き、でも納得した。
読書感想のブログを書く時、本で得た知見は、出来るだけWebとか、他の本とか、あれこれウラをとっているつもりだった。でも、それだって二次情報、三次情報でしかなく、確かに人任せだなぁ。
まぁ、出来るだけ、可能な範囲で事実をはっきりさせて、全てについて、自分の頭で組み立て直して、考えていこう。
そんな感じで、本書は面白い。いつか、また、読み返してみたい。
(敬称略)