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「一俗六仙」を読んで

 川村隆著「一俗六仙」(発行所:東洋経済新報社)を読んだ。

 かつて書店で本書(タイトル)を見つけた時は、なんとなくお説教っぽく感じて、買うのをためらった。のに・・・

 「一俗六仙」って言葉の響きが、どうしても気になるのだ。
パラパラめくってみると、気軽に読めそうだったので、買ってみた。

 一俗六仙は、中国のことわざか漢詩の一句かと思ったけど、著者の造語だとか。 
仕事の大緯線から引退したら、仕事から身の日々は週1日に絞り、残りの6日間は晴耕雨読にしたい、とか。理想的だ。
 フィンランドでは、テレワークも進んでいるけど、既に「週休3日制」を模索し始めているとか。現役世代でも、週休3日になると、働く人休む日が半々に近くなる。仕事一辺倒の人生から、プライベートも充実出来そう。そこれこそが、ワークライフバランスのとれた生活。 賃上げもとっても大事だけど、テレワークで週休3~4日制で兼業可、なんてことが当たり前になると、時代が変わったって思えるだろうな。
 逆に現役を引退しても、著者のいうようの、少しは世の中と関りがあってもいいかも知れない。 
いや、人それぞれ、か。趣味や研究で忙しく、一俗もいらない。七仙でいい、なんて人もいるだろう。

次の世代を、遠く見つめて・・・

 本書は、昭和のビジネスマンが引退して書いた回顧録的なエッセイ。
著者は、日立製作所のエンジニアとしてスタートし、社長・会長を務めた人。日立のトップになった時は、ラストマンとして未曽有の赤字で危機的状況を救い、V字回復させた人。 その後も、震災後の東京電力会長を含め、多くの会社の社外取締役も担っていた、そんな産業界の重鎮。

 大企業での賃上げが決まり、マイナス金利から脱却し、日本も成長へ舵を切る。 もちろん、中小企業の賃上げはまだ先だから、急成長は期待できないし、バブルの頃のようなインフレも怖い。

 日本の未来はどうなってしまうのだろう。
著者のような重鎮たちが指揮して、日本再生を進めてくれるといいのか。

 いや、違う。 と思う。

  熊本の半導体企業誘致に端を発する半導体や関連産業の拡充が始まった。和歌山でのロケット打ち上げに失敗したけど、宇宙産業も拡充していくのだろう。お家芸のアニメやゲームも、もっと世界中に発信していけるようなインフラが進んでいくはず。 そこまで。

 重鎮たち、ありがとう。
 重鎮たちを担ぎ、働き続けた全ての昭和世代に、ありがとう。

これからは、何にも染まっていない若い世代に任せよう。

 何も言うまい。 見守っているだけ。
本書に示された「次の世界を思う」を読んで、そう感じた。

                                                                                                  (敬称略)

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