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「世にもあいまいなことばの秘密」を読んで
川添愛著「世にもあいまいなことばの秘密」(発行所:㈱筑摩書房)を読んだ。
タイトルを見た時から、面白そう。
読んでみて、やっぱり、面白かった。 日本語大好きの人にお薦め。
不思議な言葉たち
例えば、「はなをかく」と言われて、何を思い浮かべるだろう。
・・・花を描く、
鼻を掻く、
華を書く、
端を欠く・・・
前後の文脈がなければ、どの「はなをかく」のか判断のしようがない。
言葉なんて、万人が分かり合えなくたっていい。
わかり合いたい人同士の遣り取りから始まった。 秘密の言葉
たぶん、それは、日本に限らず、どこの国だって同じ。
だから、言葉は育つ。進化する。
例えば、
近頃、美味しい食事を「ふつうに美味しい」と言う人が増えてきた。
私なんかは古いタイプなので、美味しいんなら、「とても」とか「格別」とか、言って欲しい・・・と思ってしまう。
けど、そうじゃぁ、ないんでしょうね。
最初は誰かの言葉遊びで始まったのかも知れない「ふつう」。
仲間内で広がり、次第にその輪が広がっていき、多くの人が使うようになると、「ふつうに美味しい」が市民権を持つようになる。
これも言葉の面白さ。 で、難しさだ。
言葉の意味が増えるどころか、本来の意味合いが薄れ、どんどん変わっていく言葉すらある。
例えば、宅配便用の段ボール箱に「天地無用」なんて書いてあると、どうにでも扱ってくれと思ってしまう人もいる。ホントは、上下さかさまにしちゃダメという意味。だけど、どうにでもしてくれ、と思う人が増えれば、段ボールの扱い方もそうなってしまうかも。
「気が置けない」なんて言葉も、今では、要注意人物のような扱い方が増えてきている。
だけど、最近の若者たちの略語は、流石に付いていけない。
「り」とか、「あね」とか。わからん。
「きまZ」とか「乙」なんかは、面白いけど・・・
日本語は難しい
ちょっとWebで調べてみた限りでは、表意文字(漢字)と表音文字(ひらがな、カタカナ)から構成される日本語のような言語は、他には見当たらなかった。 中国語等にもカナに似た注音符号が使われていたりするけど。
たぶん、日本の漢字は、中国由来なんだろうけど、その上、昔からあった仮名文字と合わせて、「日本語」として仕立て直して使ってる。和漢混淆文と言うのか・・・わからんけど。
外国文化でも、良いと思ったものは、どんどん取り入れてしまう無邪気さというか、素直な貪欲さは、日本のお家芸。
とにかく、本書は日本語の面白さに溢れている。
著者は言語学者。ありふれた日常会話を、切れ味鋭く分析し、
ああそうか、へぇ~、なるほどの連続。
あっという間に読み終えてしまう。 もう終わり・・・と。
久々に、そう思える本に出合ったな。
(敬称略)