山上晶子/喜如嘉翔学校/廃校活用

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大政展タイトル「ハーモニー」に思うこと

私の自宅の敷地のすぐ横に小川が流れています。せせらぎの音が心地よい素敵な環境なのですが、夜中に大雨が降ると洪水が心配で一時避難をすることしばしば。先日の大雨もまさにそんな状況で、被害も多少あって疲労感が残る朝にインスタをけだるくスクロールしてたら、くっと心に入り込んできたのが、自分のお店の投稿写真、「ハーモニー」。(手前味噌) 大政さんは今年合気道を始めて、相手との優劣を競うかわりに相手の力と調和するところに心を惹かれ、たくさんのものどうしの関係が、やきものでいえば土・釉薬

    • 晴読雨読「百年の孤独」

      注)2020年11月1日掲載の琉球新報コラム「晴耕雨読」の文章です 読む前と読んでからで自分が変わってしまう本。 あの安部公房がこう評したと聞き、安心して言う。私が沖縄にいるのはこの本が原因だ。 かぐわしい体臭と美貌で世界中の男を虜にする手を使って食事をする少女は唐突にシーツにからめとられて永遠に天上に昇り、厳しい母親の目を盗んで浴室で逢引きを重ねた娘の相手のしゃべらない男にはつねに黄色い蛾がまとわりついている。17人の女に17人の息子を生ませた男に土を食べる女。チョコレ

      • 共同売店の次へ(落ち穂R3.6.29)

         楽しかった落ち穂の連載も今日で終わり。突然だが、楽しかった共同売店運営も明日で終わることになった。7月からは別の方の運営に切り替わる。  「共同売店」という深淵なる問いに相対した2年間、この妙に吸引力ある存在に引き寄せられたさまざまな方との交流は刺激的だった。  思えば私がいちばん夢中になったのが、昔懐かしい集落の小さな売店が無限の可能性に満ちているように思えたことだ。集落の利用者の方々に加え、素敵な農産物や卵やオーガニック食品や県内のスペシャルな食品と、これらを生産しセレ

        • 田嘉里共同売店(落ち穂R3.4.21)

           当売店では、メインのミッションである「集落の住民の利便性に応える」いわゆる共同売店の定番商品を扱いながら、日に日に減少していく顧客と売り上げを補うために、ほかのものも販売している。  まずは、ナチュラル志向な商品。若い層を中心に近年ますますニーズが高まっている。それから、次世代を担う農家さんの農産物。農家としての足場を固めていくさまを近くで見てきたので、彼らの高い志の賜物である商品を販売できることは無上の喜びだ。ワイン発祥の地と言われるジョージア(グルジア)のワインもある。

          いきなり田嘉里(R3.1.12)

           多くの沖縄愛好者のように、旅行で訪れるうちにすっかり沖縄病にかかってしまった私たちは、栃木県からやんばるに移りたいと知人のつてを頼って家探しをお願いし、じきに大宜味村田嘉里の貸家が空く、古いけど住めるよーと知らせを受けた。へたに選り好みするより流れに身を任せようと、自分たちでは下見せず情報もあまり集めないまま移ることを決めた。こうして2004年、田嘉里ライフが始まった。  7月頭の移住だったが、秋には夫の陶芸の展示会が大阪で組まれていた。工房の場所の当てもなかったが、区長さ

          目に見えないもの(落ち穂R3.1.29)

           大宜味村にはぶながやがいる。大雑把にいうとキジムナーとほぼ同義のもので、村の4つのアピールポイントのひとつとして定められ、あちこちにイラストがあったり保育所の花形パフォーマンスも「ぶながや音頭」だったりと、常に身近な存在だ。実際の目撃情報は田嘉里・喜如嘉・謝名城・饒波に限定されているようだ。近所にはぶながやを見た人にもいれば、そんなのいるわけないと一笑にふす人もいる。そうだ、地元のとっておきの面白いストーリーがあるから、共同売店に来てくれたらこそっとお話しするとしよう。  

          目に見えないもの(落ち穂R3.1.29)

          いよいよ共同売店(落ち穂R3.2.13)

           いつ売店の話になるの?と首を長く待たれている方も多いと思う。などと自分で勝手にハードルを上げたりして、このテーマについてこの場で書くことに緊張してしまう。  共同売店は人々の関心がとても高いと感じる。メディアの取材を受ける機会も多いしSNSの反応も上々だ。都市部ではほとんどみかけなくなった、いわゆる昔ながらの商店。値段も高いし品ぞろえも変わりばえがしない、機能性だけでいうとスーパーにもコンビニにもかなうはずがなく、それゆえに時代に淘汰されてきた存在が、北部では「共同売店」

          いよいよ共同売店(落ち穂R3.2.13)

          令和な共同売店(落ち穂R3.3.3)

           共同売店がなくなったら失われるなにか大切なものとはなにか。  集落というごく小さい範囲にある共同売店の今の役割としてよく語られるのは、買い物弱者の拠り所、見守りなどの福祉的機能。個人的には、お客さんどうしが売店でたまたま会って軽口をたたいたり情報交換したりといった一見なんでもないことが、実は集落の根幹をなすことなんじゃないか、と思ったりする。  田嘉里も今では人はまばらで、イベントごとでもないとなかなか人どうしの、特に世代をまたいだ交流が起こらない。そんななか売店は、開

          令和な共同売店(落ち穂R3.3.3)

          共同売店幻想(落ち穂R3.3.18)

           自分でも共同売店をやれるかも、と思ったきっかけは、安田協同店の存在だ。6年前から運営している移住者の夫妻は、スペシャルティーコーヒー栽培というカッコよすぎる本業がある。そして当初からSNSで発信していた。かれらのおかげで、移住者、副業、面白そう、というイメージがあった。自分が始めた少し後には、やはり移住者の若い方が辺野喜共同店の運営を始めた。さらに、愛と希望の共同売店プロジェクトという共同売店の魅力を発信する若い二人組がいるし、ほかにもちらほら売店を起点とした地域の課題解決

          共同売店幻想(落ち穂R3.3.18)

          かりそめの店主(落ち穂R3.4.3)

           所用でコザの街角に赴き作業着にマスク姿で立ち話をしていると、杖をつき視力も低下しているだろう通りすがりのご老体に「ちゅらかーぎーやさー」と話しかけられる。齢50の乙女はこれで36時間くらいウキウキできる。やんばるの集落で街角と縁なき日々を送っている者からすると、ここは「ストリート」だなと感じる。  官能都市という考え方がある。ものすごく面白いのでぜひ詳細を検索していただきたいが、無理に単純化して言うと、大手不動産の論理で再開発される退屈な都市に対し、人が豊かに楽しく暮らす

          かりそめの店主(落ち穂R3.4.3)

          教育委員Yの勝手に人生相談2021~芸術編

          新成人Zのなやみ 私は成人になろうというのに「芸術」がまったくわかりません。それどころか、「芸術」ときくと、創造性がない自分は世界から除け者にされたように感じ、身構えて委縮してしまうので、こんなの自分に関係ないと思うようにしています。でもなぜかヤツ(芸術)が気になってしまうのです。どうしたらいいでしょう? 教育委員Yのこたえ Zさん、成人おめでとうございます!「芸術」が気になるとのこと。それは人間らしく生きていくうえでとても大切なポイントです。こんな質問ができるあなたには確

          教育委員Yの勝手に人生相談2021~芸術編

          教育委員Yの勝手に人生相談2020~カオス編

          新成人Xのなやみ:私は成人だねおめでとうと言われると不安に駆られてしまいます。なぜなら特にとりえもないしこれから大人として責任を背負って生きていける気がしないからです。どうしたらいいでしょう。  Xさん、まずは成人誠におめでとうございます。これは嫌味ではなく、社交辞令です。決まり文句です。なので、何十回と言われても深く考えないでください。成人式とは、節目です。まずは、20年生きられたことをお祝いしましょう。今日のこの節目に、責任を背負うからこそ面白おかしく生きられる、その極

          教育委員Yの勝手に人生相談2020~カオス編

          未知との遭遇

          ※このエッセイは、第16回おきなわ文学賞に応募したものです。(佳作入選) ・・・ 若草色とショッキングピンク。それぞれのラベルにシンプルな線でポップな人の顔が描かれている。都会から来たソムリエが持参してくれた二本のチェコ産のワインは、大ぶりな陶器のカップに無造作にどばどばどばと注がれる。銀河に浮かぶ星々にほど近いやんばるの森のふもとで、世界の新興ワインのナチュラル志向な潮流について学び、湿り気を帯び澄みわたる夜のやんばるの大気について語る。虫の声と星空を肴に味わった新しさ