【第7回】わたしは何処からどう見てもすべただ:「二人、いつか稲穂が輝く場所で」
酢豚、かと思った。あれは一見簡単そうに見えるが具材の全てを下揚げしなければならないので、意外と手間隙がかかる。そんな風に考えた後、わたしはようやく彼が言った言葉が料理名ではないことに気付いた。すべた、だ。要は、あばずれだ。
あまりに前時代的な言葉だ。わたしは、その言葉を現実の生活で始めて聞いた。そのせいか脳がどうやら認識してくれなかったようだ。わたしは、ようやく言葉の意味を理解し、それからまたしばらくして、自分が罵られているということに気付いた。
「この、すべたが」