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【コラム】腹黒い11人の女Spin-outコラム

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わたしの二作目の長編小説『腹黒い11人の女』のスピンアウトコラムです。以前、連載していたWebマガジンがなくなったので、noteに再掲載しました。主人公・ちえりの独り言、ちえりの…
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#大人の恋愛コラム

【Vol.1】腹黒い11人の女に勤めるひとりの女:ちえり

 渋谷駅、井の頭線口から出て、向かう方向は公園通りでもセンター街でもなく、無料風俗案内所…

三谷 晶子
2年前
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【Vol.18】「女はいいよな」という男:北村

 女は得だ、女はいいよな。そんな風に言う男は昔からいる。結局、男の方が得なのか、女の方が…

三谷 晶子
2年前
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【Vol.19】キャバクラで息子とかち合った男:庄司

 常連が多い店だと客同士が顔見知りになったり、同じ会社の人間や友人同士が店でかち合ったり…

三谷 晶子
2年前
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【Vol.20】女をけなしまくる男:澤田

 キャバクラ嬢と言えば、男にちやほやされるばかりの職業だと思われがちだが、実は「好きだ」…

三谷 晶子
2年前
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【Vol.21】女をいつも殴ってしまう男:原

 DVをする男は、現在、随分と一般的で女が五人集まれば、殴られたことがある女が必ずいる。し…

三谷 晶子
2年前
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【Vol.22】水商売の女は助けを求めていると思いたがる男:山田

 女には皆お姫様願望があるという。では、男には王子様願望があるのだろうか。  正確に言え…

三谷 晶子
2年前
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【Vol.23】【ちえりの独り言】金、金、金は魔法の呪文。

 世間では、キャバクラに勤める女は高給を貰っているということになっているようだが、現実は全く違う。   そりゃあ、新宿や六本木あたりの有名店で指名を沢山取っている女達は稼いでいるだろう。だが、わたしがいる店のような場末では時給はせいぜい二千円程だ。 One day Chieri's soliloquy  一日、夜の八時から二時まで六時間働くと日給は一万二千円。  それで月に二十日働いても二十四万円。更にそこからお客に渡す名刺代、制服のクリーニング代、そして帰りの送迎の

【第1回】そう言われたらわたし、何も言えないんです:「二人、いつか稲穂が輝く場所…

 指名客は、ノルマを達成出来るぎりぎりの分だけいればいい。客が多い程、時給は上がるが面倒…

三谷 晶子
2年前
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【第2回】君がお店に勤めている女の子だって事を俺はよくわかっているんだ。:「二人…

 それから田守は週に三日、店に来るようになった。しかも、早い時間から営業終了時間までだ。…

三谷 晶子
2年前
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【第3回】でも、わたし、そんな風にしてまでは来て欲しくはないです。:「二人、いつ…

 その言葉に男は口を閉ざした。口を開け、呻くように、出来れば、と言いかけた。しかし、すぐ…

三谷 晶子
2年前
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【第4回】そして、同時に自分にも恐ろしさを感じていた:「二人、いつか稲穂が輝く場…

 田守はその日、いつものように、開店とほぼ同時に店に来た。おしぼりを出し、飲み物を出し、…

三谷 晶子
2年前
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【第5回】あ、もしかして指輪が気に入らなかった?:「二人、いつか稲穂が輝く場所で…

 その言葉に、田守は笑顔でこう続けた。 「え、それはもちろん一緒に暮らすんだから、今後は…

三谷 晶子
2年前
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【第6回】今までもずっと指名以外の何も欲しくなかったの:「二人、いつか稲穂が輝く場…

 お願いだからわかってくれ。そう祈りながら言った。田守の顔は蒼白になっていた。唇の端から…

三谷 晶子
2年前
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【第7回】わたしは何処からどう見てもすべただ:「二人、いつか稲穂が輝く場所で」

 酢豚、かと思った。あれは一見簡単そうに見えるが具材の全てを下揚げしなければならないので、意外と手間隙がかかる。そんな風に考えた後、わたしはようやく彼が言った言葉が料理名ではないことに気付いた。すべた、だ。要は、あばずれだ。  あまりに前時代的な言葉だ。わたしは、その言葉を現実の生活で始めて聞いた。そのせいか脳がどうやら認識してくれなかったようだ。わたしは、ようやく言葉の意味を理解し、それからまたしばらくして、自分が罵られているということに気付いた。 「この、すべたが」