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森のなかを散策。未知すぎてわからない、だからこそ目が離せない!

トンネルを抜けるとそこは雪国…

…いえ、近所の坂をひたすら登ると雪景色。六甲山系でした。

きのう宣言したとおり、今日私は木々のつぼみを見にいくだけで…
だから、まったくそんなつもりじゃなかったんだけど…

しかし、いったん走り出した車は引き返せない。

外は氷の世界。
ハンドルを手に、汗を握る私。

でも、なんか…
体の細胞がイキイキ活性化している気が。

ふいに緊張感が生まれたからなのでしょうか?

ああ!人よ!走ってくれてありがとう。
通りすがるサイクリング姿に勇気づけられます。

1時間ほど路肩の雪に注意を払いながら、くねくね。
やっと到着。正面ゲートにきて、窓をシャーっとおろします。

おじさんが不思議そうな顔で
「一人で来たんですか?雪、見に来たんですか?」とのこと。

「はい、一人で。木のつぼみを見に来たんです」
「ああ!それは趣味がいいですね。いい時期です。本当に好きな方はそれを見に来るんです」

そんな会話を交わして、駐車場でハイキングシューズに履き替える。
さあ、何かがはじまる予感!どんな一日になるのか。


森林植物園の事務所前につくなり、なにやら目の前で繰り広げられる会話。

「Yさん、すみません。一人しかおらんもんで…残念やな。はじめての外の人おらんけど、いいでしょうか」
「はい、いいですよ。じゃ、いきましょうか」

と、歩き出す男性1人女性1人。見送るスタッフ1人。
どうやら、たった今、観察ツアーがはじまったようです。

ふーっと二人を見る私。
「あ、もしかして。行かれます?」とスタッフの方。
「え、いいんですか?でしたら、はい。行きたいです」と私。

「おーい!Yさーん!お一人参加するってー。よかったー!お願いしまーす」

振り返るガイドYさんと、女性に。
「よろしくお願いします」とペコリ。

というわけで。
着くなりさっそく、はじまってしまいました!森林散策ツアー。

まずはじめに観察したのは、この冬の顔シモバシラ。
ここからは、写真を中心にお届けします。

シモバシラ。茎の根本の組織から水が染み出て霜ができるのだそう。
今日はほんのすこしだけ霜が観られました。
さあ、行きましょういきましょう。お願いしまーす!
まだエントランスだけど早くも別世界。
森林植物園の広さは約142ha。ユニバーサルスタジオジャパン3個分なのだそう。
これ、インスタで観ました!バイカオウレン。
ここ数日で花開いたばかり。セツブンソウ。
まだ花が開きそう。雪のなか、なんだか健気でかわいらしい。
ユキワリイチゲ。開きはじめたばかり。春先に花をつけるこんな植物たちを、スプリングエフェメラル=春の妖精(春植物)というのだそう。

簡単に自己紹介をしました。
「私、九州出身なんですけど、2年ほど前に神戸にきて。そしたら職場の人がこの植物園がすごくいいから、っておすすめしてくれて。今日はじめて来たんです。木のつぼみを見にきました」

すると、ガイドのYさん。
「ああ、そうですか!それは嬉しいな。いや、私はね愛知県名古屋の出身なんです。昔から植物が大好きでねえ、神戸にきたのは15年前。神戸といえば、六甲山のイメージは会ったんですけど。こんなところがあるよって、弟に教えてもらったんですよ。それで、今ここでガイドしてます」

女性の方も。
「私は六甲だから、すごく近所に住んでるけど。でも、ここまで上がって来たら、あたりが雪でしょう?ええー?ってびっくりしちゃったわ」

と、ご挨拶を交わしつつ。

様々な植物を案内してくださるYさん。女性は常連さんのご様子で。私は、ひとり「へえ~!」と感嘆の声をあげながら、おふたりに着いていきます。

キブシの花芽。タンニンの材料。
木の根元に穴。イノシシが掘ったあとなのだそう。
根元にはカブトムシの幼虫がいるからなんだって。
アジサイのドライフラワー。
アジサイの芽。
最初に出会った野鳥、シロハラさん。お腹のあたりが少し白っぽい?
ヤマコウバシ。冬山の中でも葉が落ちてないので目立ちます。受験生のお守りなんだとか。
イチョウの枝ぶり。一本の長枝にはたくさんの短枝がついているのだそう。
身近な木なのに全然知らなかった…。
サルスベリの木肌。削ると中が少し緑色、
葉緑素があるからなんだって。つまり幹で光合成をしている。
ホウノキの葉っぱ。大きくてびっくり。
抗菌作用があるので、昔の人はお寿司をまくのに使ったのだそう。
シアトルの森へ。
セコイアメスギ。大きくて背が高い!

Yさんの知識の広さと深さに驚かされながら、
私は「植物のこと、どうしてこんなに?」と聞きました。

すると「昔から大好きなんですよ!」とYさん。

それでも不思議そうな顔をする私に、
「植物って、なんかわかんないことが多いですよね~」とのこと。

なるほど。

たしかに、人間がわかってることなんて微々たるもの。
それを思うと「わかんないこと」って、ますます広大すぎます。

ソシンロウバイ。ほんのり酸っぱい爽やかな香り。
花びらがうっすら透けてロウ細工みたい。
マンサク。「まんず咲く」だからマンサク。
ヤマウグイスカグラの芽。淡いピンク色です。
梅のつぼみ。まだ小さくて固く結ばれてます。
今年は1カ月咲くのが遅いんだとか。
ハンカチの木の芽。
ヤマコウバシの芽を、近づいてよーく見ておられます。
タラヨウ。葉っぱの裏に文字が書ける。昔の人は経文を書いたのだそう。今は郵便局の木。
あそこに見えるのは!ルリビタキさん…では?
こちらは、アオジさん。
ニシキギ。枝にヘラみたいなのがついてる。「補強のため」という説もあるけど、
本当のところ、なんのためにあるかは、わからないんだとか。
名前がよくわからなくなっちゃったけど…托葉とおっしゃいました。
植物っておもしろいカタチが沢山ありますね。
長谷池の周りを歩きます。スイレンの花が咲くのだそう。
むむっ!橋の欄干に見えるのは…
カワセミさん!お初お目にかかります。
シジュウカラさん。胸のネクタイ柄がポイント。
ホオジロさん。
ラクショウの気根。湿地から根を出して呼吸をするらしいです。
オニグルミの芽。
わ、わっ。かわいい…ジョウビタキさん。胸のあたりがふわふわ。
私の目の前1メートル先くらいに来てくれました。ありがとう。
あそこに、ルリビタキさん。
植えたばかりのメタセコイア。40年くらいで大木になるのだそう。
Yさんのお話が深くて、空を見上げてしまいました。

「メタセコイアって、化石で見つかったのがはじまりで、古い歴史がある木ですけど。生きているものは、はじめて中国のある村で発見されたんですね。なんで、その村でメタセコイアが生き残っていたんだと思います?これは、プラントハンターの方から聞いたお話ですけど…

村では、赤ちゃんが生まれたら、必ずメタセコイアを1本植えていたんです。村のまわりは、資源がほとんどないんですね、燃料にするまきの木くらいしかない。だから、赤ちゃんが生まれたらこの木を植えて、亡くなったら棺桶をつくる。そういう風習があったから、その村でメタセコイアが生きてたそうです」

ガイドYさんのお話。
ナギの葉っぱ。波立たない凪の状態。そして強くて破れない。
だから、夫婦円満の木(笑)

さあて、エントランスに帰ってきました。
ほんとは、約1時間ほどのツアーなんだけど…気づけば2時間半のツアー。

す、すみませんっ!寄り道しすぎちゃったでしょうか…
でも、連れてってもらって本当にありがとうございます!

「いやあ、あんなにいろんな鳥に会えることってなかなかないですよ。サービス旺盛だったなあ。きっと、日頃の行いがいいんですよ!」

と、Yさんのありがたいお言葉。深々とお辞儀をしてお礼をしました。

クチナシの実。栗きんとんの黄色い着色に使われるのだそう。

植物の未知。

わからない、だからこそ、面白くって。
だからこそ、きっと広がっている人生。

ひとくちに「好き」って言っても。
その人の「好き」って、かなり奥深いですよね。

それぞれがオリジナルすぎて。


かくいう私も、今日はかなりオリジナルな一日でした。

だって、つぼみを探しに出かけただけなのに。

人にも、鳥にも…
こんなにたくさんの出会いが待ってるとは思わなかったから。

人それぞれの
人生って、未知すぎます。

今日の天気は、雪のちくもりのち晴れでした。さすが山の天気。

今回おとずれた森|神戸市森林植物園
私はレンタカーで行きましたが、三宮からバスも出てます。なかなか1日では見切れないほど、見どころ満載の場所です。園内散策会(日曜・祝日)は10:30/13:30 の1日2回。Instagramアカウントは、@kobe_arboretum

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