
ChatGPTのディープリサーチがついに実装されたので日本の対トランプについて聞いてみた
今朝、筆者のplusアカウントにもChatGPT deepリサーチが実装されました。ブラウザ版ChatGPTを立ち上げた時の画面はこんな感じです。

早速、試しにこんな質問をしてみした。下記の2枚のスクショを入れて、「今日は2025年2月26日です。トランプ大統領が、ロシアのウクライナ進行を止めたい西側に対抗し、習近平と共にロシア側に付きました。この件について、後ほど詳細なリサーチをお願いしたいので質問をまとめてください。」と質問してみました。


この2枚のスクショは、下記のTBSニュース動画から撮りました。
実は、最初ChatGPT-4oでスレッドを立てていたのですが、下記の部分をdeepリサーチしてもらった後とまりました。以下引用
EU+日本がアメリカ抜きで動く可能性
もしアメリカがこのままロシア・中国と「暗黙の了解」を結ぶようなら、EUと日本が独自の同盟関係を強化するしかない。
EUはNATOの独立強化を進める可能性がある。
日本も「自主防衛」の方向に進むかもしれない。
台湾はますます日本とEUに接近するしかない。
つまり、「アメリカ抜きの西側陣営」が生まれる可能性が出てきた。
引用終わり。
筆者はこれに対して、「じゃあ、今後のトランプの動きによってはこうなりかねないのでdeepリサーチしてみて」と言う質問をしたらdeepリサーチを開始しました。



どうやらフリーズしているようなので、o3-mini-highに同じ質問をしました。以下返答の引用:
Zun、了解!まずは今回の「トランプ大統領が習近平と共にロシアを支持し、西側と対立している」という前提でリサーチしたいポイントを整理してみよう。以下のような質問を考えておくと、情報収集するときに効率的だと思うよ。
トランプ大統領の立場・発言の背景
トランプ大統領はいつ・どこでロシア寄りの姿勢を明言したのか?
具体的にどのような発言や声明が出ているのか?
アメリカ政府内や共和党内の反応はどうか?
トランプがロシア側に付くことによる国内外の政治的メリットや狙いは何か?
習近平と中国政府の公式声明・外交方針
中国政府はいつ・どのようにロシアを支持する姿勢を示したのか?
習近平は今回のロシア侵攻に対してどの程度積極的に支援を表明しているのか?
ロシアを支援することによる中国の戦略的メリットや狙いは?
国際社会の中国への反応はどうか?
ロシア側の動きや反応
ロシアはトランプや習近平の支持をどのように評価しているのか?
ロシア国内や軍事作戦における変化はあるのか?
侵攻の現状と、国際社会の制裁・圧力への影響は?
西側諸国の対応・国際情勢への影響
アメリカやEUを含む西側諸国は、この新たな連携にどう対抗・対応しようとしているのか?
NATOの動向や各国首脳の反応はどうか?
経済制裁や外交的圧力の強化、あるいは緩和の可能性は?
国連安保理や国際機関での動きはどうなっているか?
グローバル経済・エネルギー市場への影響
ロシアと中国の接近、アメリカの立場変化はエネルギー価格や国際貿易にどう影響するか?
対ロシア制裁の拡大や回避策は存在するか?
ドルや人民元、ルーブルの通貨の地位・為替レートへの影響は?
ウクライナの現状と対応
ウクライナ政府や軍の現状、支援体制はどうなっているのか?
ウクライナへの軍事支援(兵器や資金)は西側諸国からどの程度続けられているのか?
ウクライナ国内の世論や国際支援の要請はどう変化しているか?
他国の動向(日本や新興国など)
日本を含むアジア諸国はどちらの立場に近いのか?
新興国や中立的立場の国々の動きは?
ブロック化の進行や、外交・経済関係の再編が進む可能性は?
国際秩序・安全保障への長期的な影響
アメリカを中心とした既存の国際秩序が揺らぐ可能性はあるのか?
「米中ロ」のパワーバランスの変化は、今後の世界情勢にどう影響するか?
核兵器や軍拡競争のリスクは高まっているか?
こういった切り口を押さえておくと、トランプ大統領の発言の背景や中国・ロシアとの関係性、そして国際社会全体の動向を幅広く調べられると思う。次にもっと深掘りしたい項目があれば教えてね。
引用終わり。
これに対して、「例えばイタリアの首相はトランプさんと仲がいい。EUはこのまま反ロシアでまとまっていられるのか?をまずリサーチしてみて。トランプ大統領が明確にロシア支持を示し、中国と北朝鮮、ロシア側にアメリカが入った今、EUはどういう動きにでるのか?アジアとの連携?オーストラリア、ニュージーランドとの連携なども含めてリサーチしてみて。」公質問すると、deepリサーチを開始しました。

12分のdeepリサーチ後直ぐにチャットが始まりました。以下o3-mini-highが導き出した回答がこちらです。
米国の対露転向に対するEUの対応
前提: トランプ大統領がロシア支持を明確にし、アメリカが中国・北朝鮮・ロシア側に加わった場合、欧州連合(EU)はかつてない安全保障上の試練に直面します。このシナリオの下で、EU各国の対ロシア政策や内部対立の変化、EUの対露統一姿勢の行方、米国抜きの安全保障体制の可能性、アジア(日本・台湾)との連携、オーストラリア・ニュージーランドとの協力強化について、最新の公式声明や各国の動向を基に検討します。
EU諸国の対ロシア政策の変化と内部対立(イタリアの例を含む)
米国の方針転換により、EU内部では対ロシア政策をめぐる温度差や路線対立が一層顕在化する可能性があります。特にイタリアなど一部の国では、対露強硬路線を維持するか、米国(トランプ政権)に歩調を合わせるかで板挟みとなる懸念があります。実際、報道によれば**「ローマ(イタリア政府)は欧州の結束を取るか、米大統領に同調するかを巡って揺れており、ジョルジャ・メローニ首相もまだ決断できていない」**とされています。
メローニ政権はこれまで対ウクライナ支援を続けてきたものの、与党内には親ロシア的な立場をとってきた政治家もおり、米国の態度変化はイタリアの路線に影響を及ぼす可能性があります。
他方で、ハンガリーやスロバキアなど従来から親ロシア色の強い政権は、米国の動きを追い風にEUの対露制裁や軍事支援への反対を強める恐れがあります。ハンガリーのオルバン首相(トランプ氏とプーチン氏の支持者)は、公に**「ブリュッセル(EU)の立場――『必要な限り殺戮を支援する』という姿勢――は道義的にも政治的にも容認できない」**と批判しています。
またスロバキアのロベルト・フィツォ首相も、EUがバイデン前政権の対露強硬策を「盲目的にコピー」したと非難し、今や和平交渉の場で「EUは無力さをさらけ出し、傍観するしかない」と嘆いています。このように一部加盟国が反対姿勢を強めれば、EU内部の足並みの乱れや対露政策の変化(対露融和論の台頭)が現実となりえます。
EUは反ロシアで団結を維持できるか
米国抜きでもEUが反ロシア姿勢でまとまれるかは大きな課題ですが、多くのEU加盟国・指導者は引き続きウクライナ支援と対露強硬姿勢の維持を主張しています。例えば、欧州理事会常任議長(ポルトガルのコスタ首相)は「ウクライナにおける平和と欧州の安全保障は不可分であり、ウクライナとEU抜きに持続的な和平交渉はあり得ない」と強調しています。フランスのマクロン大統領も、ウクライナに「降伏」を強いるような和平は受け入れられないと警告し、プーチン大統領が真に停戦に応じる意思があるか疑問だと述べています。これは、ロシアに有利な不公正な和平を認めないという欧州主要国の立場を示しています。
加えて、東欧・バルト諸国を中心に「今こそ団結が必要だ」という声が上がっています。ポーランドのドナルド・トゥスク首相(同国はEU議長国)は各国と協議を重ね、**「国際情勢は深刻で、我々の安全保障をめぐる内輪揉めをしている猶予はない」としてEU内の結束維持を訴えました。バルト三国のリーダーたちも一斉にロシアへの妥協に警鐘を鳴らしています。リトアニアのナウセダ大統領は「一時的な停戦は持続的平和ではない。侵略者は今こそ永遠に止めねばならない」**とゼレンスキー大統領への支持を表明し、ウクライナへの支援継続を強調しました。またEU上級代表(外交安全保障政策責任者)に就任したエストニア前首相のカヤ・カラス氏も、ロシアへの譲歩策は1930年代の対ヒトラー「宥和政策」の轍を踏むものだと厳しく非難しています。このように多数の加盟国は、たとえ米国が離反してもウクライナ支援と対露制裁を堅持し、ロシアに対する欧州の団結を維持する必要性を訴えています。
しかし実際問題として、米国の後ろ盾なしでEUがどこまで結束を保てるかは不透明です。上述したようにハンガリーやスロバキアに加え、イタリアなど主要国にも路線転換の可能性が生じれば、対露強硬派(ポーランドやバルト諸国)と慎重派・融和派との溝が深まりかねません。それでもEUの中心国(ドイツ・フランスなど)は「欧州の安全保障は欧州自身で守り抜く」という決意を表明しており、容易に対露姿勢を崩すことはないとみられます。
米国・NATO抜きの欧州安全保障体制の可能性
米国が同盟から離反した場合、NATOによる集団防衛体制は有名無実化し、EUは自前の安全保障体制構築を迫られます。フランスのマクロン大統領はかねてより「欧州戦略的自律(Strategic Autonomy)」を唱え、欧州独自の防衛力強化や「欧州軍」創設の必要性を訴えてきました。ドイツでも、野党党首で次期指導者候補と目されるフリードリヒ・メルツ氏が**「欧州を強化し、米国から自立すること」を最優先課題に掲げる**など、米国に依存しない欧州防衛への機運が高まりつつあります。
実際、EU各国はウクライナ戦争を契機に国防費を相次ぎ増額し、共同軍備調達や欧州防衛基金による軍事産業育成、防衛協力(PESCO枠組みなど)の強化に取り組んでいます。
とはいえ、米国抜きでロシアに対抗できるだけの防衛力を欧州が短期間で備えるのは容易ではありません。専門家の試算によれば、米軍の抑止力を代替するため**「欧州には追加で30万の兵力と、少なくとも年間2,500億ユーロの防衛費増額」が当面必要**とされています。
現状のEU諸国の防衛費合計や兵力では大幅に不足しており、これを急速に埋めるのは財政的・政治的負担が大きいのが実情です。また、米国の関与低下はNATOの集団防衛(第5条)への信頼低下も招き、ロシアに対する抑止力そのものが揺らぐ懸念があります。
例えばロシアが欧州のある加盟国に軍事侵攻や威圧を行っても、米国が介入しない可能性があれば、NATOは機能不全に陥りかねません。
そのため、EUは当面「NATOの欧州柱」を自認して欧州域内で防衛協力を深化させつつ、米国抜きでも機能する安全保障ネットワークを模索するとみられます。一案として、フランスやドイツを中心に「欧州安全保障理事会」的な枠組みや、イギリス(非EUだが欧州主要国)との連携強化も考えられます。また核戦力についてはフランスの核抑止力の欧州共有なども議論され得ます。しかしいずれも構想段階であり、米国の離脱という急変事態に即応できる体制が整っているとは言い難い状況です。結局のところ、欧州は防衛力増強と結束維持により「米国抜きでも自らを守る」覚悟を示しつつ、米国の対欧安全保障関与を完全には諦めず繋ぎ留める努力を並行して行うと考えられます。
アジアとの連携の可能性(日本・台湾との協力)
米国が離反する事態では、EUは価値観を共有するアジアの民主主義勢力との連携を一層重視するでしょう。中でも日本は「自由で開かれたインド太平洋」の理念を共有する戦略的パートナーであり、安全保障面での協力強化が進んでいます。実際、2024年11月にはEUと日本が初の安全保障・防衛パートナーシップ協定を締結し、共同軍事演習や防衛産業の協力など軍事分野での連携強化に合意しました。
これはEUがインド太平洋地域の国と結んだ初の本格的安全保障協定であり、日欧が中国・北朝鮮・ロシアなど共通の脅威に対処すべく防衛面でも歩調を合わせ始めたことを意味します。EUの外交安全保障上級代表ボレル氏は訪日した際に「欧州とインド太平洋の安全保障は密接に結びついている」と指摘し、日本側も石破茂氏(仮想シナリオ上の日本国首相)の言葉として**「今日のウクライナは明日のアジアかもしれない」**との認識を共有しています。このように日欧双方が欧州とアジアの安全保障課題は連動しているとの見方を強めており、米国抜きでも日本とEUが協力して中国やロシアに対する抑止力を維持しようとする可能性があります。
台湾についても、EUは公式には「一つの中国」政策を維持しつつ、その民主主義と安全保障にも関心を強めています。EUおよび主要加盟国の議会代表団が台湾を訪問する機会が増え、経済分野ではEUと台湾の投資協定やサプライチェーン協力も模索されています。また外交面では、**G7各国外相およびEU上級代表が共同声明で「台湾海峡の現状を一方的に変更することに反対し、平和と安定の重要性を再確認」**するなど、台湾海峡の平和維持に関する明確な立場を示してきました。
この声明では台湾問題の平和的解決も促しており、EUとしても中国による武力行使や現状変更の試みに断固反対する姿勢です。米国が仮に中国側に立つような局面でも、EUは日本やオーストラリア等と協調しつつ台湾海峡の安定維持と台湾の国際社会での地位向上を後押しする方向に動くと考えられます。ただし軍事的な直接関与については依然慎重であり、主に外交的・経済的手段で台湾を支援する可能性が高いでしょう。
オーストラリア・ニュージーランドとの協力強化の可能性
米国を欠く西側同盟を補完・再編する上で、オーストラリアやニュージーランドとの協力強化も重要になります。これらの国は英国やカナダ同様、長年米国と協調してきた民主主義国であり、インド太平洋地域におけるNATOパートナーでもあります。実際、NATOはオーストラリアとニュージーランドを日本・韓国と並ぶ「インド太平洋のパートナー」と位置づけており、サイバー防衛や新興技術、気候安全保障など幅広い分野で協力を強化しています。
ニュージーランドはロシアのウクライナ侵略開始以降、NATOの包括支援パッケージに拠出するなどウクライナの自衛努力を一貫して支援してきました。オーストラリアも米英とのAUKUS協定で原子力潜水艦導入を進めるなど軍備増強を図りつつ、ウクライナへ武器供与や人道支援を行っています。こうした実績から、欧州とオーストラリア・ニュージーランドは基本的価値と戦略利益を共有していると言えます。
今後、EUはこれらオセアニアの同盟国との安全保障対話を深め、インド太平洋と欧州の安全保障を一体のものとして捉えるアプローチを強めるでしょう。例えば、EUは既にニュージーランドとの包括的協力協定(PARC)を締結し、外交・安全保障や防衛分野での対話を定期化しています。
オーストラリアとも戦略パートナーシップの下でテロ対策やサイバー安全保障協力を進めています。また、NATOは2022年の戦略概念で「中国の野心と強圧的政策」や「中露の戦略的連携」が欧州にとって新たな脅威であると明記し、インド太平洋パートナーとの協調を謳っています。EUとしても、米国を欠く安全保障環境で中国・ロシアに対抗するため、オーストラリアやニュージーランドとの軍事演習や情報共有、人材交流などを強化していく可能性があります。これにより、地理的に離れたこれら同盟国との間に相互防衛の意識を醸成し、「米国抜きの有志連合」として抑止力を高める狙いです。
結論
トランプ政権下で米国がロシアや中国側に回るという衝撃的な状況において、EUは自主防衛と同盟再編を迫られます。イタリアを含む加盟国各国の対露スタンスには変化の兆しが出るものの、ポーランドやバルト三国を中心にロシアへの強硬姿勢を維持しようとする力が働き、EU全体として反ロシアで団結を図る努力が続くでしょう。しかし米国の軍事・核抑止力の喪失は安全保障環境を一変させるため、EUは**「欧州の運命は欧州自身の手で握る」**との覚悟で大規模な防衛力増強と戦略的自律の追求に動かざるを得ません。同時に、日本や台湾、オーストラリア、ニュージーランドといった価値観を同じくする民主主義諸国との安保協力ネットワークを構築し、米国抜きでも「自由と秩序」を守る国際連帯を模索するでしょう。現実には課題も多いものの、EUは公式声明でも「ウクライナの平和なくして欧州の平和なし」と表明している通り、米国が離れても自らの安全と隣国の主権を守る責務を全うすべく包括的な対応策を講じると考えられます。
引用終わり。
何と、一旦スレッドを閉めていたさっきのChatGPT-4oへの質問を開いてみたら、ちゃっかりモデルをo3-mini-highに変更して答えを出していました。しかも16分でdeepリサーチ作業が終わっているので、ボタンはあるもののhatGPT-4oではdeepリサーチを対応していないのでモデルを切り替えなかったためフリーズしていたようです。

返答は下記の通り。
2025~2029年トランプ政権下における日本の防衛政策の展望
アメリカの軍事・外交政策の変化と日米同盟への影響
在日米軍と防衛費負担問題: トランプ氏は第1次政権中、同盟国に対し従来以上の負担増を強く求めた経緯があります。実際、日本には在日米軍駐留経費の**「3倍増」を非公式に要求し、韓国には「5倍増」を突きつけたと報じられています。こうした前例から、第2次トランプ政権でも日本と韓国に同様の大幅負担増を要求し、仮に同盟国が拒否すれば在日米軍の撤退さえ「取引材料」にする可能性が指摘されています。トランプ氏自身、「米国だけが日本防衛義務を負うのは不公平だ」と日米安保条約の片務性**を批判してきた経緯があり、この不均衡を正すべきだと主張しています。そのため、日本側には在日米軍駐留経費の更なる増額や、同盟の双務性(相互防衛義務)の強化を迫られる展開が予想されます。実際、トランプ政権下では在日米軍駐留経費や貿易交渉をめぐり日本側の交渉余地が限られる可能性が指摘されており、同盟関係には波乱含みの局面もあり得るとされています。特に在日米軍の駐留継続と引き換えに日本の負担増加が条件づけられるような圧力が高まれば、日米同盟の在り方そのものが問われることになるでしょう。
日米同盟の変化:強化か形骸化か: 第2次トランプ政権期の日米同盟は、双方の対応次第で二極的なシナリオが考えられます。ひとつは、トランプ氏の要求に日本が応える形で防衛力強化と負担増を実施し、結果的に同盟が実質強化されるシナリオです。実際、岸田政権は防衛費の対GDP比2%への増額や「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有など、防衛力抜本強化を進め始めました。
日本側のこうした取り組みについて、トランプ氏は歓迎し評価する可能性があります。ある分析では、トランプ政権は日本の防衛費増額や反撃能力の導入を「高く評価」し、岸田-バイデン体制で進んだ指揮統制・共同運用の深化や防衛産業協力の路線も継承すると予測されています。また、トランプ政権による米核戦力の近代化・拡大は、日米間の拡大抑止(核の傘)協議をさらに深化させるとの指摘もあります。つまり、日本が自主的な防衛力強化で応えれば、トランプ政権下でも同盟は維持・強化され、より対等で実効的な安全保障協力体制へ移行する可能性があります。
一方で、同盟の形骸化というリスクも無視できません。トランプ氏は同盟軽視とも取れる言動を繰り返しており、実利を得られない関係には容赦なく圧力をかける傾向があります。例えばNATOに対しても「加盟国が防衛費負担を増やさねば防衛義務を留保する」と示唆しており、日本に対しても同様に、負担増や同盟のあり方見直しを飲まなければ米国の防衛義務を縮小する姿勢を示す懸念があります。
第1次政権では実現しなかったものの、トランプ氏が在日米軍の削減や日米安保条約破棄を私的に検討していたとの報道もありました(実際に2019年には日米安保条約からの離脱を示唆する発言が伝えられています)。このため、第2次政権でトランプ氏が強硬に動いた場合、同盟の信頼性が低下し、日本の安全保障基盤が揺らぐ可能性があります。特に米国の同盟コミットメント(関与)が弱まり欧州や台湾海峡での米抑止力が低下すれば、**「日本の安全保障上の利益は著しく損なわれる」と専門家も指摘しています。総じて、2025年以降のトランプ政権下で日米同盟は、日本側の防衛努力次第で「荒療治による同盟強化」にも「亀裂の拡大による形骸化」**にも転び得る不安定な局面を迎えると言えます。
日本の防衛政策の変化
防衛費増額の可能性と影響: 2025年以降、日本の防衛政策はすでに始まっている大幅な防衛費増額路線をさらに推し進めるとみられます。岸田政権は2022年末に閣議決定した安保関連3文書で、2027年度に防衛力強化のための予算規模を2022年比でGDP比2%(約11兆円)に達する水準へ増額する方針を打ち出しました。これは従来のGDP比1%前後から実質的に防衛費を倍増させる計画であり、5年間の防衛関係経費総額43兆円という前例のない規模になります。世論調査でも、防衛力強化そのものには一定の支持が見られます。例えば2022年4月の日本経済新聞の調査では「防衛費をGDP比2%以上にすること」に55%が賛成し反対33%と、増額支持が上回りました。また別の調査でも「日本の防衛費増額に賛成」は5割超との結果が出ています。ウクライナ戦争や台湾情勢を受け、日本国民の多くが安全保障環境の厳しさを実感しており、「防衛力強化は必要」との一般論自体には理解が広がっているといえます。
しかし、急激な防衛費拡大に伴う影響や課題も顕在化しています。特に増額分の財源確保策として政府が示した増税案に対しては世論の反発が強く、「防衛増税」に反対63%・賛成28%(NNN・読売2023年1月調査)という数字も報じられました。2022年末の別の世論調査では、防衛費43兆円計画に賛成47%・反対45%と拮抗し、その財源説明が「不十分」と感じる人が84%に達しています。つまり、防衛力強化の必要性は認めつつも、「どう負担するか」で世論は揺れている状況です。多くの国民は増税ではなく「他の予算の削減」や「国債発行」で賄うことを望んでおり、社会保障費とのトレードオフや生活への影響に慎重な声が強いのです。このため、政府・与党内でも増額財源を巡る調整が難航し、岸田首相は増税時期の先送りを決めましたが、それにも批判が出るなど政治的課題は山積しています。防衛費増額そのものは今後も粛々と進む可能性が高いものの、それを持続可能な形で実現するためには、財政面・政治面で国民の理解を得る努力が不可欠でしょう。
自衛隊の役割拡大(攻撃能力強化・憲法改正議論): トランプ政権下で米国の支援が不透明になるリスクに備え、日本は自衛隊の役割拡大や抑止力強化にも力点を置くと考えられます。すでに日本政府は「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を決断し、長射程ミサイル(トマホーク導入や国産スタンドオフミサイル開発)による打撃力を高める方針を示しました。この動きは従来の専守防衛政策の大きな転換点であり、北朝鮮のミサイル脅威や中国の軍拡に対抗する抑止力として国内でも比較的支持を得ています。実際、ある民間調査では日本による「敵基地攻撃能力」保有に64%が賛成と報告されました。また、防衛装備移転や宇宙・サイバー分野での日米協力強化、無人兵器・AIの活用など、自衛隊の任務・能力は今後ますます高度化・拡大するとみられます。米軍と一層緊密に統合運用できる体制を整えつつ、有事に日本が**「自らを守る」**力を飛躍的に強化することが目標となるでしょう。
こうした自衛隊の役割拡大を進める中で、避けて通れないのが憲法改正論議です。日本国憲法第9条は自衛隊の活動を厳しく制限しており、集団的自衛権の行使も「存立危機事態」に限定されています。安倍政権下の2015年に安保法制整備で限定的行使が容認されたものの、依然として**「完全な双務性」からは遠い状況にあります。トランプ氏が求める同盟の対等化(双務性向上)に真剣に応えるには、日本が法的制約を緩和し、米国防衛へのコミットメントを明確化する必要が出てくるかもしれません。現にトランプ氏は「日本は米国を守ってくれない(守れない)」現行制度への不満を示しており、同盟維持のため日本側から憲法改正を含む踏み込んだ対応を検討すべきだとの声も専門家からは上がっています。与党内では憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項創設など改正項目の議論が続いており、次期衆院選までに国民投票を目指す動きもあります。もっとも、改正には国民投票で過半数の賛成が必要であり、ハードルは高いままです。ただ安全保障環境が一層悪化し、国民の危機感が高まれば、「常に最悪シナリオに備える」**との安全保障の鉄則に立ち戻り、タブー視されてきた憲法9条の抜本的見直し論議が現実味を帯びる可能性も否定できません。
日本の独自核武装論の台頭の可能性: 最も踏み込んだ自衛策として挙げられるのが核抑止力の自主的な確保、すなわち日本の独自核武装論です。日本は唯一の被爆国であり、長年にわたり核兵器廃絶を訴えてきた経緯から、核武装には強い社会的抵抗があります。現状でも政府は非核三原則(「持たず、作らず、持ち込ませず」)を堅持し、独自核保有は現実的な選択肢ではないと公式には否定しています。世論調査でも「日本が核兵器を持つべきでない」という意見が依然多数派ですが、その比率には変化の兆しも見られます。例えば2022年末のある調査では、「日本の核兵器保有について44%が選択肢として考えるべきだ」と回答し、「不要」とする37%を上回る結果が出ました。従来なら核武装反対が圧倒的だった日本で、約半数が何らかの核オプションを視野に入れ始めていることは注目に値します。北朝鮮が核ミサイル開発を放棄しない場合、日本も核兵器を持つべきだと考える人の割合は年々じわじわと増えており(2022年で約9%との調査も:2024年の核拡散問題に関する報道)、特に安全保障の危機感が強まるとこの数字がさらに上昇する可能性があります。こうした独自核武装論台頭の背景には、米国の**「核の傘」への信頼低下があると考えられます。先述の通り、日本国民の約7割近くは「有事の際に米国が日本を守ってくれるとは思わない」と答えており、米国の拡大抑止に不安を感じる声が多いのが実情です。トランプ第1次政権下でも、同氏が「日本や韓国も自前で核武装する方がよい」と示唆するような発言を行ったと伝えられ、同盟国に核武装を容認するかのような姿勢が波紋を呼びました(※注:2016年米大統領選中の発言)。
もし第2次トランプ政権で米国による核抑止の保証が揺らぐ事態になれば、日本国内で「自国の生存を守るために核兵器も選択肢に」という議論が今以上に活発化するでしょう。その具体的形態としては、独自開発による核保有だけでなく、米国の核兵器を共同運用する「核共有」(ニュークリア・シェアリング)の検討などもあり得ます。実際、安倍晋三元首相はウクライナ戦争勃発直後の2022年に日本で核共有の議論をタブー視すべきでないと提起しました。この発言は物議を醸しましたが、ヨーロッパの同盟国(NATO)では核共有体制により米核兵器を配備・共同運用している例もあります。日本でも安全保障上の必要に迫られれば、こうした措置を検討する可能性はゼロではなく、2025年以降の情勢次第では「現実的な抑止策」**として議題に上るシナリオも否定できません。
もっとも、核武装には膨大な障壁が横たわります。技術的・経済的な面はともかく、外交的には核拡散防止条約(NPT)体制への違反や近隣諸国との緊張激化を招きます。また国内世論も依然根強い反対があり、被爆国としてのモラルや国是との抵触が避けられません。ゆえに日本政府が直ちに核武装に舵を切る可能性は低く、代替策として米国の核抑止力への関与強化(例:核戦略協議への日本参加や核共有)や、ミサイル防衛・通常戦力による抑止力向上を図るのが現実的でしょう。つまり、2025~2029年の日本防衛政策は、「急速な防衛力拡充(予算・装備の拡大)」と「抑止力の質的向上(反撃能力、同盟調整、必要なら核抑止の議論)」を両軸に、安全保障の自立性を高めていく方向に進むと考えられます。その一方で、平和国家としての理念や財政制約との折り合いをどうつけるかという政治的課題にも直面し続けるでしょう。世論も「抑止力強化は必要だが、自ら負担するのは慎重に」と複雑な声を上げており、防衛政策の大転換には国民的合意形成が欠かせません。
3. トランプ+習近平+プーチン+金正恩「連合」成立の場合の影響
もし2025年以降、トランプ米大統領が中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩総書記という権威主義的なリーダーたちと連携・協調するような事態が生じれば、国際秩序は劇的に変容し、日本の安全保障環境にも深刻な影響が及びます。この仮想的な「米中露朝連合」シナリオは、日本にとって最悪の未来とも言われるものです。
以下、その場合の各側面への影響を分析します。
米中関係と地域秩序への影響: 最大の懸念は、米国と中国が対立を避けて勢力圏を分割するような取引に至ることです。専門家の中には「日本にとってのワースト・シナリオは、米中が太平洋を二分する世界だ」と指摘する声があります。実際、習近平氏は以前から「太平洋には中国と米国が受け入れられる十分な空間がある」と述べており、2017年のトランプ氏との会談でも2大国の共存(勢力圏の棲み分け)を唱えていました。もしトランプ政権がこの考えに同調し、太平洋西側の主導権を中国に委ね東側を米国が引くような合意がなされれば、日本や台湾、韓国は事実上中国の勢力圏に組み込まれかねません。これは戦後一貫して米国の「抑止の傘」の下にあった東アジアの秩序を根底から覆すもので、日本の安全保障に対する打撃は計り知れません。
具体的には、米国が台湾防衛への関与を弱めたり、日本への安保コミットメントを後退させたりする可能性があります。トランプ氏自身、台湾について「半導体ビジネスを奪ったくせに防衛を求め、しかも費用を払わない」などと不満を口にしたことがあり、台湾有事に無条件で関与する姿勢は明確ではありません。
最悪の場合、トランプ政権が中国との取引材料として台湾問題で譲歩し、たとえば**「台湾への中国の影響拡大を黙認する代わりに米中直接衝突を回避する」**ような密約が結ばれる懸念もあります。その場合、台湾への武力行使に対する米国の抑止力は大幅に低下し、中国が台湾に対して軍事的冒険に出るリスクが高まります。台湾有事は日本有事に直結すると言われるほど日本への影響が大きく、在日米軍基地やシーレーン防衛の観点から日本が巻き込まれる可能性が極めて高いです。しかし米国が静観を決め込めば、日本単独で中国軍事力に対峙するのは困難であり、地域のパワーバランスは中国に大きく傾くでしょう。
ロシア・ウクライナ情勢と欧州安全保障: トランプ氏がプーチン大統領と手を結ぶような形になれば、ロシアに対する西側の圧力網は緩み、ウクライナ戦争を含む欧州情勢にも重大な変化が生じます。多くの専門家が予想するように、トランプ氏は大統領復帰後、ウクライナへの軍事支援から手を引く可能性が高いと見られます。実際、トランプ氏は「大統領就任から24時間以内にウクライナとロシアに和平をまとめさせる」と発言しており、ウクライナに停戦・領土割譲を事実上受け入れさせるディールを追求する懸念があります。シンクタンクの予測でも、トランプ政権は軍事支援継続の条件としてウクライナに停戦交渉受諾とNATO非加盟を求め、停戦成立後は対露制裁の緩和を通じてロシアとの関係改善を図るだろうと指摘されています。
このシナリオでは、ロシアは実質的にウクライナ領土の一部掌握を認められ、西側の制裁も解かれていきます。プーチン政権にとっては大きな外交的勝利となり、NATOの東欧防衛ラインには深刻な穴が開くでしょう。さらにトランプ氏はNATOそのものにも懐疑的であり、前述のように「防衛費負担の少ない加盟国は守らない」と公言しかねません。欧州の安全保障専門家の間では「トランプ氏が2期目を取ったら確実にNATOを離脱する」とまで語られており、第1期では時間が足りなかったが2期目なら本格的に欧州との同盟関係を解体しかねないとの見方もあります。仮に米国がNATO防衛義務を放棄・縮小すれば、欧州諸国はロシアに対し極めて脆弱になります。バルト三国やポーランドなどロシアと接する国々は独力で防衛を強いられる恐れが出てきて、最悪の場合、東欧諸国がロシアに妥協・屈服する動き(フィンランド化の再来)すら現実味を帯びます。欧州における米国の後退は、「欧米を中心とした世界の安全保障体制」に深刻な亀裂を生じさせ、第二次大戦後維持されてきたリベラルな国際秩序の根幹を揺るがすでしょう。その影響は欧州に留まらず、アジアの日本にとっても、頼みの米国が大西洋で同盟責務を縮小するなら太平洋でも同様の姿勢を取るのではとの不安を掻き立てます。実際、「欧州で米の抑止が弱まれば、日本近隣の権威主義国家が勢いづき、日本の安保利益は著しく損なわれる」という指摘もあります。ロシア・中国・北朝鮮という日本周辺の強権的な隣国が結束を強め、米国がそれらと融和する展開は、日本に安全保障上の孤立感と圧迫感を与えることになります。
北朝鮮・東アジア情勢への影響: トランプ氏が金正恩氏との個人的関係を重視し、北朝鮮に融和的な姿勢を取るシナリオも考えられます。第1次政権では史上初の米朝首脳会談を実現し金氏と「ラブレター」のやり取りをするなど異例の関係構築を図りましたが、非核化の実質的進展は得られませんでした。第2次政権でトランプ氏が金正恩氏とのディールを再び試みる場合、懸念されるのは米国本土に届くICBMさえ凍結できれば北朝鮮の核保有を黙認するような合意です。実際、ある予測ではトランプ政権は北朝鮮を事実上の核保有国として認め、主に米国向けICBMの数量規制を重視する軍備管理を模索するとされています。さらに北朝鮮との関係改善を通じて中国を孤立化させる狙いすら示唆されています。これは裏を返せば、日本や韓国に向けられた中短距離核ミサイルについては黙認する可能性があるということです。つまり、米国が自国への脅威さえ取り除けば在日米軍やソウルを射程に収めた北朝鮮の核戦力を事実上容認するリスクがあります。
このような展開は日本と韓国にとって悪夢と言えます。北朝鮮の核ミサイルの脅威が恒常化し、しかも米国の抑止力がそれを当てにできなくなれば、両国は自前で北朝鮮を抑止・防衛する道を模索せざるを得ません。韓国では既に世論の多数(約6割)が「韓国自身の核武装が必要」と回答する状況で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も「米国の戦術核再配備や自国核保有の可能性」に言及するなど踏み込んだ発言をしています。日本でも前述のように核オプションへの支持がじわじわ高まっています。トランプ政権が北朝鮮と融和してしまえば、日本・韓国が連鎖的に核武装に傾くシナリオすら現実味を帯びるでしょう。これはNPT体制の崩壊につながり、東アジアでの核ドミノを引き起こす危険性があります。加えて、米朝接近に伴い在韓米軍の削減や米韓同盟の形骸化も懸念されます。実際トランプ氏は第1次政権時に在韓米軍撤収に言及したと伝えられ、米韓合同軍事演習も一時中止させました。第2次政権で米朝の「和平」が演出されれば、在韓米軍の大幅縮小やMD(ミサイル防衛)協力の後退が起こり得ます。それは日本の安全保障にも直結し、在日米軍の朝鮮半島有事の抑止力が減殺されることになります。
経済制裁・国際的圧力戦略の変化: トランプ+習+プーチン+金の連合ができるとすれば、国際社会の制裁や圧力の枠組みも劇的に変化します。現在、西側主導で課されている対ロシア制裁や対北朝鮮制裁は、米国が消極姿勢に転じれば骨抜き化は避けられません。上記のようにトランプ氏はウクライナ停戦後に制裁緩和でロシアと関係改善を図ると予測されていますし、北朝鮮に対しても経済制裁の一部解除などを交換条件に含める可能性があります。中国に対しても、第1次政権末期には強硬姿勢を示したものの、2期目に入って習近平氏と電撃的な大国間合意(いわゆるG2的な取り決め)を結ぶ可能性は排除できません。その場合、米中間の関税引き上げやハイテク輸出規制といった経済的対立措置が緩和・撤回されるかもしれません。権威主義国家側に立つ米国という構図になれば、国連安保理も機能不全に陥り、人権や核拡散への国際的制裁メカニズムは大きく後退するでしょう。ロシア・中国・北朝鮮は互いに協力して制裁回避の経済圏を築き、西側諸国の経済制裁効果は一段と減殺されます。例えばエネルギーや食糧面でロシアと中国が連携し、ドル決済を回避する金融網を拡充すれば、欧米主導の制裁は効力を失いかねません。結果として、力による現状変更や人権弾圧に対する国際的抑止力の低下が懸念されます。
日本の外交・軍事戦略の模索: 以上のような西側体制の動揺に対し、日本は自国の生存と繁栄を守るために独自の戦略を模索せざるを得なくなります。まず考えられるのは、防衛力のさらなる自主強化です。米国の抑止力低下を補完・代替するため、日本は長射程ミサイル、防空・ミサイル防衛、サイバー反撃能力、そして最終手段としての核抑止力など、あらゆるカードを検討するでしょう。前述の核共有や核装備の是非も含め、日本の安全保障コミュニティでこれまで忌避されてきた議論が公然と行われる可能性があります。また同時に、日本は同盟・パートナーの多角化を図るでしょう。米国が頼れない場合に備え、日本は欧州やアジア太平洋の他の民主主義国との結束を強める方向に舵を切るとみられます(この点は次節で詳述)。さらに一部には、中国やロシアとの関係改善を図って日本への直接的脅威を減らそうと主張する勢力も出てくるかもしれません。例えばビジネス界や一部の親中派は、「米中が和解するなら日本も中国と無用な対立を避けるべきだ」との現実路線を唱える可能性があります。しかし現在の日本世論は中国・ロシアへの不信感が非常に強く、仮に米国が方針転換しても日本が直ちにそれに追随して中露に接近するとは考えにくい状況です。むしろ米国抜きでも価値観を同じくする国々と協調して対抗する道を探るのが日本の基本方針となるでしょう。いずれにせよ、「米国一辺倒」の戦後日本外交は大きな転換点を迎え、自主独立の色彩を帯びた新たな安全保障戦略の構築が不可避となります。
4. 西側諸国の立ち振る舞いと日本の連携戦略
トランプ政権が従来の同盟秩序を揺るがす中で、日本を含む西側諸国はそれぞれ危機対応の再編を迫られます。欧米日など民主主義陣営は、一致団結して権威主義の連携に対抗する道と、米国に頼らず自律的な安全保障協力を模索する道の双方を追求するでしょう。以下、日本の視点から主要な連携の動向を展望します。
日本と欧州(EU)の連携強化: 米国の関与が不透明になるほど、日本とヨーロッパ諸国の協力関係は今以上に重要性を増します。近年すでに、イギリス・フランス・ドイツなど欧州主要国が自国軍をアジア太平洋地域に派遣し、日本との共同訓練や艦艇親善訪問を活発化させています。たとえば英国空母打撃群の日本寄港、独仏艦船のインド太平洋展開、日英日仏の戦闘機共同訓練など、かつて考えられなかったことが現実に起きています。欧州側には「経済的に中国と完全に切れることはできないが、安全保障面で日本と組んでリスクに備えたい」という思惑があり、日本もまた欧州の軍事プレゼンスを地域安定に取り込むことで米国不在時の穴を部分的に埋めようとしています。
政治外交面でも、日本とEUは価値観を共有するパートナーとして連携を深化させています。2019年発効の日EU経済連携協定(EPA)や戦略的パートナーシップ協定(SPA)は経済・安全保障両面の協力基盤となっており、近年はインド太平洋に関する協議やウクライナ支援でも足並みを揃えています。仮に米国が同盟義務を後退させれば、EUは**「第三極」として独自戦略を志向するとの見方も出ています。欧州は自らの防衛力強化(いわゆる欧州戦略的自律性の追求)を進めつつも、現実には米国の軍事力なしではロシアに対抗できないため、トランプ政権に対しても正面衝突を避け現実的妥協を図るでしょう。そうした中で日本に期待されるのは、欧州各国との安保協力のハブになることです。具体的には、NATOと日本の連携強化(情報共有や訓練参加、平時の連絡事務所設置など)、英仏独伊などとの防衛技術協力(例:日英伊の次世代戦闘機共同開発)、さらには欧州とアジアの外交フォーラムでの連携(G7や東アジアサミットでの協調メッセージ発信)などが考えられます。日本とEUはいずれも経済的には中国市場に依存しつつも、安全保障上の懸念から対中姿勢を見直している点で共通しており、対中ハイテク輸出規制や経済的威圧への対抗措置でも協調が進むでしょう。総じて、トランプ政権下であっても日欧の距離は縮まる傾向**にあり、日本はEUとのパートナーシップ強化によって「米国単独ではない多元的な安全保障ネットワーク」を築く方向に向かうと予想されます。
台湾・韓国との安全保障協力: アジア太平洋地域において日本が重視するのは、地理的・価値観的に近い台湾・韓国との連携強化です。台湾は日本にとって安全保障上「生命線」のひとつであり、米国の関与が不透明になれば日本が主体的に支援・協力する必要性が高まります。すでに日本政府要人は「台湾有事は日本有事」と公言し始めており、非公式ながら防衛当局間の対話や有事シナリオ研究も進んでいるとされます。2025年以降、日本は台湾との間でインフォーマルな安全保障協力を拡大させる可能性があります。具体的には、情報機関同士の連携、台湾周辺有事を想定した自衛隊と米軍の調整計画策定(間接的に台湾防衛を支援する想定)、サイバー攻撃や偽情報への対抗での協力などが考えられます。米国が後退しても、台湾が容易に武力併合されないよう、日本は経済制裁や外交的非難のみならず、自衛隊による後方支援・警戒監視など実質的な関与も検討するでしょう。ただし日本単独で台湾防衛を担うのは困難であり、オーストラリアやインドなど他のインド太平洋パートナーとも協調する形で多国間の抑止力を形成する方向が現実的です。
韓国との関係も、北東アジアの安定には不可欠です。歴史問題などで日韓関係は脆弱な面がありますが、尹錫悦政権下で関係改善が進み、安全保障協力が着実に深化しつつあります。2023年には日米韓の首脳会談(キャンプデービッド合意)で3か国の安保協力強化が打ち出され、北朝鮮ミサイル探知・情報共有のリアルタイム化や定期的な合同演習が合意されました。トランプ政権が誕生しても、韓国に現政権が続く限り、日本との安保連携を壊す動きは考えにくく、むしろ**「米国抜きでも日韓が協力して北朝鮮抑止に当たる」体制を整える必要性が高まります。例えば、日韓で弾道ミサイル警報情報を直接共有するホットラインの構築、海上自衛隊と韓国海軍による対潜・掃海協力、さらには在韓米軍に代わる日本からの支援可能性の取り決めなどが検討されるかもしれません。また、韓国国内で核武装論が強まる中、日本との間で核不拡散と抑止に関する率直な対話を行い、東アジア地域の安全保障枠組みを日韓主導で模索する動きも出る可能性があります。日韓が戦略的に歩調を合わせれば、北朝鮮や中国に対する抑止メッセージの強化につながります。一方で米国の影響力低下に乗じて北朝鮮が南北分断の恒久的終結(平和協定)を図る場合、韓国が米国寄りから中朝寄りへ動くリスクも完全には否定できず、日本は韓国の動向にも注意を払う必要があります。総じて、日本は韓国・台湾という近隣と安全保障上の運命共同体的な協力**を深めることで、地域の平和と安定を自主的に支えていく戦略を取るでしょう。
G7・QUAD・AUKUSなど多国間枠組みの対応: トランプ政権復帰により、西側の多国間枠組みも影響を受けますが、日本や欧州・豪州などは可能な限り既存の枠組みを活用して結束を維持しようとするはずです。まずG7(先進7か国)については、トランプ氏が第1次政権で見せたように意見の相違(気候変動や貿易問題など)で共同声明を拒否する場面も考えられ、足並みの乱れが懸念されます。しかしG7は民主主義・法の支配を擁護する主要国の集まりとして引き続き機能し、日本や欧州諸国は米国を説得しつつ最低限の合意を形成する方向で動くでしょう。例えばウクライナ支援や対中姿勢で米国が消極的でも、他の6か国が主導して声明や行動を取る可能性があります(いわば「G7-1」のような形での協調)。日本はG7議長国などの機会を通じ、自由主義陣営の結束維持に向けたリーダーシップを発揮することが期待されます。
QUAD(日米豪印の4カ国戦略対話)については、米国の関与度によって性格が変わり得ます。バイデン政権下でQUADは首脳会合まで開き軌道に乗りましたが、トランプ氏が対中融和に転じれば米国主導の積極性は薄れるでしょう。その場合、日本・オーストラリア・インドの3か国でQUADの枠組みを細く長く維持する努力が考えられます。特にインドは中国と国境紛争を抱える手前、米国が当てにならなくとも日本や豪州との連携を重視する可能性があります。日本と豪州も、自由で開かれたインド太平洋ビジョンを共有する盟友として、防衛装備協力や経済安全保障で二国間・三国間協力を進めるでしょう。例えば日豪間では円滑化協定の運用強化やサイバー分野の協力、日印間でも海洋安保協議の定例化などが進むかもしれません。米国が消極的でも、これら3か国が民主体制の要石として地域秩序を支える意思を示すこと自体に意義があります。反対に、トランプ氏が対中強硬路線を取る場合は、むしろ米国主導でQUADの安全保障色が濃くなり、日本はさらに深い協力を求められるでしょう。その場合は4か国による軍事演習や情報共有が一層進展し、「アジア版NATO」に近づくとの観測もあります。要は、QUADは情勢に応じ柔軟に形を変えつつも、日本にとってインド太平洋地域で米以外のパートナーと連携する重要な枠組みであり続けると考えられます。
AUKUS(豪英米の安全保障パートナーシップ)についても状況次第です。バイデン政権が進めた豪州への原子力潜水艦供与計画は、中国抑止の柱ですが、トランプ氏が中国と取引を図るならこの計画の進展が遅れる可能性があります。米議会や英国の意向もあり、すぐに白紙撤回とはならないでしょうが、技術移転や協力のペースダウンはあり得ます。そうなれば、豪州はフランスとの通常動力潜水艦計画に戻る選択や、自力での防衛力強化を模索せざるを得ません。いずれにせよ、日本としてはAUKUSに直接関与していないものの、英豪米と安全保障上の利害を共有しています。例えば日本は英米の高度軍事技術(ステルス技術や量子技術など)を得る機会を模索し、また豪州とは日豪米印の枠組み以外にも二国間演習を強化するでしょう。将来的には、日本がAUKUSに追加参加したり、逆にAUKUSが停滞した際に英豪と日本で新たな協力枠組み(例えば先端技術や情報分野での三国協力)を構築するシナリオも考えられます。重要なのは、米国が仮にリーダーシップを放棄しても、日本と志を同じくする国々(欧州も含む)が**「ネットワーク型同盟関係」を張り巡らせて相互支援を強化することです。現に米政府高官も、日本や豪州、インド、欧州諸国とのミニラテラル(小多国間)協力**を格子状に強化する戦略を掲げています。日本はこの流れの中核として、自国の安全と地域の安定に寄与する多層的なパートナーシップを築いていくでしょう。
まとめ:今後の展開と実現可能性の高いシナリオ: 以上を総合すると、2025~2029年の日本の防衛政策は、米トランプ政権の動向に大きく左右されつつも、自主防衛力の強化と多国間協力の拡充という二本柱で進展すると考えられます。専門家の見解を踏まえれば、最も実現可能性が高いシナリオは次のようなものです。
【1】トランプ政権は同盟国に負担増を求めつつも中国や北朝鮮には一定の強硬姿勢を維持し(日米同盟は圧力下で維持)、【2】日本は防衛費倍増と反撃能力保有を着実に実行し抑止力を向上させる(国内では増税問題など課題を調整しつつ推進)、【3】米国の同盟コミットが読みにくい分、日本は欧州・豪州・インド・韓国・台湾等との安全保障協力ネットワークを強める(多角的な抑止網の形成)、【4】核抑止については米国の拡大抑止に留意しつつ、核共有などギリギリの選択肢を議論に上らせることで抑止メッセージとする――といった展開です。これにより、日本は**「最悪の事態」に備えながら現実的な安全保障能力を高め、日米同盟の弱体化リスクを自助努力で補完する**道筋を描くでしょう。
一方、トランプ+習+プーチン+金連合という極端なケース(同盟の空洞化と権威主義連合の台頭)が現実となれば、上記シナリオからさらに踏み込んだ対応が必要となります。その場合、日本が自主防衛のため核オプションを具体的に検討し始めたり、欧州と事実上の軍事同盟関係を模索したりする可能性もゼロではありません。
。もっとも、そうした急激な変化は政治的ハードルが非常に高く、短期4年間で現実化する可能性は低いでしょう。むしろ日本政府としては、「米国第一」のトランプ政権ともうまく付き合い、同盟の形骸化を防ぎつつ、自国防衛力と多国間協力で不足を補うバランス戦略を取ると考えられます。
国民世論も、防衛力強化そのものには理解を示しつつ、拙速な軍拡や核武装には依然慎重です。
したがって日本の政治指導者は世論の声に耳を傾け、透明性のある議論を重ねながら、防衛政策の大転換を進めていく必要があります。2020年代後半、日本は戦後最も難しい安全保障上の決断を迫られる局面に立つ可能性がありますが、その舵取り次第では日米同盟をアップデートしつつ、自主防衛の底力を備えた新たな安全保障国家へと脱皮する契機ともなり得るでしょう。その意味で、トランプ政権の4年間は日本にとって危機であると同時に飛躍のチャンスとも言えるのです。日本が平和と安全を守り抜くためには、最悪のシナリオを想定しつつ現実的かつ段階的な備えを着実に講じていくことが肝要です。
非常に深ぼってきましたねー。これニュース番組とか見なくていいかもと思いました。
若干深堀過ぎで読むのがめんどくさいくらいです。「今のを要約して」と言いたくなりますね。
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