【61】脱カリスマ/伝説の講義で出された最後の宿題『2020年6月30日にまたここで会おう』瀧本哲史
この本のタイトルを最初に見たとき、出版社を疑う気持ちがありました
2019年に亡くなった著者が2012年の講義で伝えたメッセージである「2020年6月30日にまたここで会おう」をタイトルに据えており、商業的な意図を疑ってしまったからです
しかしそれは思い違いで、著者の本気のメッセージを伝えるに最も相応しいタイトルだと読後にはわかります
本書は2012年6月30日に東京大学の伊藤謝恩ホールで行われた講義をライブ感そのままにまとめたものです
大学生のときに『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』を読んで瀧本さんの印象は強く残っていたので、講義という生のやり取りを読んでよりメッセージが伝わってきました
筆者は安易に答えを求めることをやめて、徹底的に自分で考えることを求めています
誰かすごい人がすべてを決めてくれればうまくいく、という考えはたぶん嘘で、「みなが自分で考えていく世界」をつくっていくのが、国家の本来の姿なんじゃないかと僕は思っています。
「どこかに絶対的に正しい答えがあるんじゃないか」と考えること自体をやめること。バイブルとカリスマの否定というのが、僕の基本的な世界観になります。
カリスマやバイブルを求め、すぐに手に入る「答え」があると信じている人には耳が痛い内容です
そして筆者はそんな世界をつくっていくため、考える若者を増やすべく講義を行っていました
革命が起こるとき、若い世代が世界を変える、そして一人のカリスマではなく多くの考える小さなリーダーの存在が不可欠だと著者は主張しています
ライブ感満載ながら、スムーズに理解できる内容なのは緻密に考えられた著者の凄さを感じました
講義の最後に参加者に出された宿題がタイトルとなっています
8年後の今日、2020年の6月30日の火曜日にまたここに再び集まって、みんなで「宿題」の答え合わせをしたいんですよ。「あのときをきっかけに、この8年間、こんなテーマに取り組んでやってみた結果、ちょっとだけですが世の中を変えることができました」とか
残念ながら答え合わせをすることはできませんでしたが、この投げかけには世の中をより良く変えることへの強い意志と、それを本気で変えるためには若い世代が行動を変えることが必要だという信念が明確に伝わってきました
人の行動を変える講演というのはこういうことなんだと、「伝説」の名に相応しい内容でした
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