ショート小説『おとり捜査』※1741文字(約3分)
キラキラと煌めく星の下で、右手に血の付いた包丁を持ち仰向けに寝ていた。山の中だということはわかる。だが記憶はない。頭が痛い。
「おい」と声が聞こえる。起き上がり声の方へ目をやると一人の男が立っていた。くたびれたスーツに輝きを失った革靴、ぼさぼさの白髪交じりの黒髪。何十年も見てきた顔、間違いなく「私」だ。私が目の前に立っている。
「お前は誰だ?」と私は声を掛ける。男は「私はお前だ」と答える。私が眉間に皺を寄せると「明日のお前だ」と男は言う。「そんなことはどうでもいい。とにかく