Ernest Hemingway “For Whom the Bell Tolls” / ヘミングウェイ 『誰がために鐘は鳴る』
★★★☆☆
言わずと知れたノーベル賞作家ヘミングウェイの古典作品です。訳者は大久保康雄氏。
新潮文庫から高見浩訳の新訳版も出ているようですが、僕は旧訳版で読みました。どうしてなのか? 自分でもわかりません(購入したときは出てなかったのかも?)。
1973年の訳なので、ところどころちょっと古いかな、と感じるところがありました。高見浩訳ヘミングウェイが好きなので、新訳版で読めばよかった……かな。
原文と訳文を照らし合わせながら読んだので、かなり時間がかかってしまいました。年内に読み終えるつもりが、年をまたいでも読み終わらない始末。併読していたとはいえ、なんだかずーっと読み終わらない感じがしていて、その重苦しさが作品内に描かれるゲリラ戦と呼応したとかしないとか……。
内容は、スペイン内戦を題材にしたものです。
文体も『日はまた昇る』や『武器よさらば』とそう大きくは変わらない気がします。強いて言えば、前作の方がクリスプだったかもしれません。
さらには、抽出話法(自由間接法)というのでしょうか、地の文に内面的独白が出てくることが多かったですね。三人称で書かれているのですが、様々な人物に焦点があたり、その度に内面が描かれます。
主人公であるロベルト・ジョーダンの独白はさらに多いです。ほんと、よく喋るな、と思ったこと(笑)。
自問自答というか、もう一人の自分との思弁的な会話に分量が割かれています。原文だと人称代名詞が多いので、「このheは誰? このthemは?」という場面が多々ありました。内容も抽象的でよくわからない考えだなと思うこともしばしば。
やはりというか何というか、ヘミングウェイは短篇の方が優れている気がしますね。長篇になると、冗長というか、ダレるところがなきにしもあらずです。「橋ひとつ爆破するのに、いつまでかかるんだよー」という心の声との会話が始まってしまいました。
ヘミングウェイの長篇はページターナーとはほど遠いです。優れた小説なのは確かなのですが、一番の読みどころが文体なので、長いとちょっと飽きてくるんです。
その点、短篇だと文体のおもしろさが堪能できるので、すいすい読めます。
話自体は、まあ、たいした話でもないかなという感じです(怒られそうですけど)。『老人と海』もそうでしたが、濃密すぎてフットワークが重たくなってしまう性質がありますよね。それが魅力でもあるので、コインの裏表ですけども。
ヘミングウェイを読む順番は、短篇 → 初期から順番に読む(飽きたところで止める)というのが個人的なお薦めです。