コリン・ウィルソン 『宇宙ヴァンパイアー』
★★☆☆☆
70年代に一世を風靡したというコリン・ウィルソンの小説。
解説によると、著者は評論『アウトサイダー』で一躍名を知らしめたそうな。マルクス主義が席捲していた60年代後の思想シーンの一端を担ったそうですが、いまひとつピンと来ません。そう言われても現在では、「はあ、そうなんですか……」と寝起きのようなリアクションしかとれません。
そういった文脈込みで読むと、また違った受け取り方ができるのでしょうが、作品単体で読むとB級SF小説といった趣です。70年代のB級映画みたいだな、という感想を抱いたのですが、実際にトビー・フーパー監督が映画化しているそうです(内容は「ひどい映画でね」(村上春樹談)とのことです)。
内容はというと、エンターテインメント小説の設定とプロットに、思想的要素をパラパラと振りかけた味わい。冒頭から結末まで、わりかし停滞せずに進んでいきます。宇宙ヴァンパイアーを追走したり、謎を解き明かしていったり、お色気シーンがあったりと、エンタメ要素が多いです。
とはいえ、現代の高度にエンタメ化された作品と比べると、見劣りするかもしれません。娯楽作品として読むとなると物足りない気がします(というか、2017年に『宇宙ヴァンパイアー』などというタイトルの小説を手に取る読者がそれほどいるとは思えません。僕なら完全にスルーします)。
もっとも、選んだ村上春樹にしても、「こういった小説もあった方がいいんですよ」というノリですので、読む人もそういう心構えで本を開くべきでしょう。
個人的な話をすると、読んでいてこれくらい寝落ちした本はないです。どうしてかわからないのですが、読み終えるまでに何度も寝ちゃいました。たぶん、宇宙ヴァンパイアーの出す特殊な電磁波が作用したのでしょう。ムニャムニャ。
眠れない夜にお薦めです。
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