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子供は2人以上産むべき 校長は何を語るべきだったか
大阪市立茨田北(まったきた)中学校の全校集会で「子供は2人以上産むべき」という趣旨の発言した寺井寿男校長(61)が再任要請を断って辞任した。
問題となった発言の後には、メディアにも取り上げられ、大きな波紋を呼ぶ事態に。
市教委事務局には「価値観の押しつけ」「正論だ」といった賛否両論の電話も殺到したという。
校長は「子どもを2人以上」のあとに「これは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります」「子どもが生まれなくなると、日本の国がなくなってしまうからです」と話していた。
たしかに日本では少子化が進み、深刻な問題になっている。
このままでは、将来国を支える働き手が減少することで、年金等の社会保障制度の負担が大きくなったり、経済成長が鈍化したりするなど様々な問題が生じることだろう。
しかし、少子化問題の解決策として「女性に2人以上生むべき」と説くのは、あまりに性急かつ短絡的だと言わざるを得ない。
現代では、男性女性の区別なく社会に出て働くことが一般的になっている。
以前では考えられていなかった分野で女性が活躍することも珍しくなくなりつつある。
そうした状況の中で、単純に女性を育児に専念させるという意見にはやはり無理がある。
今後の日本の発展は、女性がいかに社会で活躍できるかにかかっている面もあることを忘れてはならないだろう。
また、子供を二人以上産むかどうかは、あくまで個人が決めることであって、他者から強制されるべきことではない。
個人には一人一人の人間としてどう生きるかという問題があり、少子化という日本全体の問題だけを考えて生きているわけではない。
少子化という問題があるものの、最終的に判断を下すのは個人の自由にゆだねられている。
少子化問題は一人一人の生き方と複雑にからみあっている問題でもある。
「子供を2人以上産むべき」という考えが間違っているにしても、「女性の社会進出が100%正しい」とも言えない。
どちらが正しくて、正しくないのか、はっきりした答えが出せない問題だ。
もしも校長が本当に少子化問題のことを子供たちに伝えたかったのなら、そうした世の中の複雑の面を子供たちに伝えるべきだったのではないだろうか。
中学生は「大人」ではないが、世の中に複雑な問題があることを理解できないほど「子供」ではない。
大人が真剣に伝えようとしていることなら、彼らはきっと耳を傾けてくれるはずである。