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【人材定着】優秀人材を辞めさせないためのマネージャー役割とは?|人材育成論

少し間が開いてしまいましたが、人材定着に関する続きを書きたいと思います。もう、お忘れかと思いますので、前回の記事はコチラです。

前回までは、人材定着の土台作りとして、1.給与・評価 | 2.残業・休日 | 3.配属・役割 について述べてきました。この土台部分を一言で言いますと、『衣食足りて礼節を知る』という言葉どおり、労務面での土台がしっかりできていないと、人材定着のために各種の取り組みを実施してもその効果は半減します、ということを述べました。

私が知る限り労務面を未整備のまま、社内の組織改革や各種コミュニケーション施策等で、人材の流出を防ごうとされている会社様もお見受けしますが、そこは順番を守って、まずは労務面からの整備をお勧めします。決して高いお給料を保障する必要もなく、その制度の中に経営者からのメッセージが込められていて、透明であれば人材定着の効果は上がります、ということを、お伝えしてきました。

給与テーブルや評価制度などは、新卒入社からのお若い社員が多い会社であればあるほど、意識・無意識に関わらず、入社後3年から5年程度は、なんとなく年次に合わせて徐々に(緩やかに)上がっていくという暗黙のルールみたいなものが存在しているケースもあります。これが経営者からのメッセージであればOKですが、そうではなく、なんとなく運用上、公には、ベンチャー精神や、実力・成果主義を謳いながら、一方で成果とは別に定性的に『頑張っている人応援!』みたいな制度なっていて、降格や減俸などと無縁の状態では、最終的には、評価が平等過ぎになってしまい、結果として社内に歪みが生み、社内は仲が良いけれど、入社後一定年数を経過すると、社員の多くが転職を考える、ということにもなりかねません。こうした点に注意が必要です、といった内容を書きました。

さて今回は、土台作りが終わった後に取り組んでいただきたい部分です。人材定着に関する中で、最も重要な中核部分です。つまり人に関するパートになります。どんなに経営者が、離職率を下げたいと願い、人材定着を望んでいても言葉だけではなく、組織にその想いが、具体的な行動として伝播しなければ、効果を発揮することは出来ません。
そのためのパートとして、この【人材定着_中核部分】について述べてみたいと思います。下記の全体図の中で、赤線で囲まれている部分です。

当初、中核部分は、4.管理体制 | 5.社内交流 | 6.研修支援 と3つのブロックに別れて紹介していましたが、お伝えしたい内容が、被ってしまうことに気が付き、4と6を1つにまとめて、4. 人材育成 とさせていただきました。
では、さっそく、人材定着のための 【4.人材育成】について述べていきたいと思います。

組織のカタチについて決めておくこと

人材定着に関して具体的な施策ポイントは、下記の8つと考えています。
以下を御覧ください。

まず最初に、組織方針という部分から見ていきたいと思います。
あえて乱暴に、組織の形態を2つに分けようとすると、1.階層型 と 2.フラット型 があります。どちらが良いか悪いかという点は、今回は議論の対象ではないので、その論点は他に譲りたいと思いますが、ここでは、経営者としてどちらの志向か?をハッキリと自覚されておくべきとお伝えします。

異論も反論もたくさんあるとは思いますが、当社では、人材定着には階層型組織の方がやりやすいとは思っています。フラット型組織でも人材定着に高い効果を出している会社様もいると思いますが、一般的には、階層型組織の方が、評価制度と報酬(給与以外のことも含めて)に柔軟性が高くなりますので、扱いやすいです。しかし、この点でも注意が必要です。実は組織はフラットが良いと願っている経営者の方が、システムとしての階層型を選んでしまいますと、制度破綻も起こりますので、しっかりと考えて選んでいただく必要があります。
『どちらかを選んでください。』と迫りますと、経営者の多くは、階層型を選ぶケースが多いですが、その選択は、人材育成、中でもマネージャー育成に大きく注力する必要がありますので、その必要性を十分に認識いただくという意味で、しっかり考えてご判断いただく必要があります。

極端な例をあげれば、社員数が100名くらいまでの会社様ですと、【顔の見える経営】(コレ自体はとても良いことだと思います)として、社長自ら、末端の社員からの細かい相談に耳を傾けてしまうことがありますが、これが原因で中間管理職が育たないという現象も散見される場合があります。日々の社員とのコミュニケーションにも関わる部分にもなりますので、その点をよくご考慮頂く必要があります。

将来計画。どこまで会社を大きくする予定ですか?

今回は、特にマネージャー育成の重要性について述べていますが、今後3年程度で、何人まで社員数を増やす予定か?その場合、組織はどのような状態になっているのかを計画しておくことが望ましいと思います。つまり、マネージャーは何人必要か?ということを把握しておくべきという意味です、更には、1人のマネージャーは、何名の部下をマネジメントするのか?も把握されておくと良いと思います。3人のメンバーをマネジメントするのと、15名のメンバーをマネジメントするのでは、求められるスキルも胆力(度胸とも言うかもしれません)も異なりますので、マネージャー育成の前提には、組織の将来予測が欠かせないと思います。稀に人材ありきで部署を作ってしまうなんてこともあり、こうした場合ですと、プレイヤーとして優秀だった人材が、マネジメントスキルへの準備が十分に整っていなく、結果、メンバーからの離反→退職を後押ししてしまう場合もあります。

こうした人材側の事情での昇格人事を未然に防ぐために、組織図としての計画も十分に準備しておき、マネジメントポストへの準備策として、マネージャー候補者の育成を計画的に推進しておくべきと思います。

信頼されるマネージャーになるための人間教育

マネージャーの役割とは、組織の力を最大化させることに尽きます。そのための前提として、まずはメンバーから、少なからず信頼を得ておく必要があります。今回は、人材定着の観点から、マネジメントスキルについて論じているので、メンバーのタスク管理が上手か下手か、であったり会議でのファシリテーション能力が高いか低いかということは、一旦、横においておきます。あくまでも上司として、メンバーから信頼されるスキルを身につけておく必要があるということです。

簡単に言えば、メンバーから相談したいと思えるマネージャーになってもらわないと困るということです、かなり抽象的な話になっていますが、この点の教育が出来ていないと、前述の例のように、末端の社員が、細かい相談を、直属の上司ではなく、経営者に持ってくるという現象が止まらず、そのため、中間管理職であるマネージャーの育成が進まないという負のスパイラルも生まれます。
前述の通り、マネージャーの役割は、【組織の力を最大化させる】ことですので、まずは組織の成果を担っているメンバー1人ひとりと向き合い、売上を上げてもらっていることに感謝するという気持ちを持ってもらう必要があります。

これは私自身の話ですが、【組織の力を最大化させる】ことを目的に、自ら手本を魅せるだけならまだしも、自分でやったほうが早いとばかりに、自らが最大の売上顧客の担当になってしまっているようなケースは、実は最悪の結果を招くということを、経営者はよく把握されておくべきでしょう。
マネージャーとは、メンバーから信頼され、メンバーが売上を上げてきてくれていることに感謝できる人材になってもらわないと困ります。この部分は感覚的でもありますし、教えたからと言って翌日からできるようなことでもありませんので、毎日の中で、きちんとマインドセットを植え付けておくことが大切です。マネジメント研修を外部に丸投げしてしまっているケースなどの場合、マネージャーとして最も大切な幹の部分が抜けてしまっているために、良質なマネージャーが育たないというケースも見られます。
繰り返しになりますが、以前(今も?)私がその悪い例です。反面教師として、実体験をもとにお伝えもできます。ですから、細かいマネジメントスキルの研修の前に、マネージャーとしての心構えを、まずは時間をかけて植え付けておく必要があります。

また、さらにリモートワーク等が浸透していくことも予想される中で、マネージャーは、今まで以上に、性善説でメンバーと接することが求めまれます。性善説については、相手への感謝の気持ちが前提にないと、なかなか思っても出来ないことなので、after コロナ時代へのマネジメントのキーワードとしても【感謝の気持ち → 性善説】と思っていただけたらと思います。

悪い上司に共通する点として、部下への感謝の気持ちが少ないという点があげられますが、こうしたことは、皆様もどこかで見たことはありませんか?

スキルマップの重要性

ここまでは、マネージャーのスキルについて見てきましたが、このパートのスキルマップは、メンバーのスキルについてです。職種や業界によって求められるスキルは異なりますので、細かい点は省きますが、マネージャーは、メンバーの仕事における上達の仕組みや、成果をあげるために必要なスキルについて、分解、整理しておく必要があります。

プロスポーツの世界などでは、以前より『名プレーヤー、名監督に成らず。』と言われてきましたが、これはまさに、成果をあげる方法を、誰にでもわかりやすく伝達、指導できるかどうか?の問題だと思います。プロスポーツの世界だけではなく、実はオフィスの中でも良く見られる現象です。

ちょっと話はそれますが、個人的には、従来の日本型組織では、チームプレイを重視するあまり、個のスキルへのフォーカスが甘くなってまったと考えています。これによって、チーム内で個人が保有するスキルセットに重複が生まれていたり、極端な高低があったとしても、チームプレイでカバーしているので、個のスキルの過不足を顕在化させる必要がなかったという問題があったと思います。
乱暴な結論を導けば、これが故に、先進諸国と比較した場合の日本のホワイトカラーの生産性の低さにも繋がっているようにも考えています。

すみません。話を戻しましょう。
決して私は、これからのマネジメントにおいてJOB型管理を強烈に推進していこうとは思っていませんが、仕事の役割に応じて、必要なスキルは明文化していく必要があるとは思います。
前述にもありました今後のリモートワーク時代においても、スキルマップはより一段と必要になってくるとも思っています。
具体的には、

・実務スキル
・コミュニケーションスキル
・プレゼンテーションスキル
・クリエイティブスキル(改善アイデアや新しいものを生み出す力)

といった要素に分けて、担当してもらう業務には、どのようなスキルが、どの程度必要なのかを明確にしておくと良いです。また、特にクリエイティブスキルあたりが難しいですが、出来たか?出来ないか?の判断基準も明確にしておくべきです。
一例をあげますと、事務職の方のスキルマップに、「事務作業の効率化に向けて具体的な案を出せる」といった項目があった場合、単に案を出すだけなら、誰にでも出来てしまいます。求められるのは、効果がでる案を出せるかどうか?になってきますので、このあたりの評価基準まで細かく設定しておくべきと思います。評価基準まで設定できれば、以下の図のように

求める人材要件が明確になりますので、制度の透明感も増していきますし、本題ではありませんが、採用も楽になります。

マネージャーに向いているタイプとそうでないタイプ

『ポジションが人を作る』という言葉があるように、結果、やらせてみたら、時間をかけて上手くなっていった、というパターンもありますので、性格的な向き不向きで、人事を決めつけるのはよくありませんが、それでも、私は、元来のマネージャータイプと、そうでないタイプがいると思っています。つまり、性格的にマネージャータイプではない人材に、マネージャーになってもらう場合には、より一層の周囲からのサポートが必要であるという認識を持っておくべきという考え方です。
スポーツの世界にも、チームの勝利を優先する選手と、個人の成績を優先する選手がいるように、ビジネスマンにも2つのタイプがいると思っています。当然に、マネージャーに求められるのは、チームの勝利を優先するタイプですから、このあたりの基本的な考えや性格を把握した上で、起用していくべきと思います。タイプの異なる人材を起用しないという話では決してありません。
既存の人事制度や給与テーブルによっては、マネジメント職にならないと昇格、昇給しないという場合もありますので、そのあたりの制度設計も含めて、社員の指向にあわせて、コースを選べるようにしておきましょう。コース選択ができないことが原因で、メンバーだけではなく、せっかく育成してきたマネージャー本人も辞めてしまうということにもなります。

マネージャー候補については、事前の十分な性格把握が重要です。過去の部活動歴などへの質問から、多少、分かったりもしますので、いろいろと聞いてみると良いと思います。社内からのヒヤリングですと、かえって情報量が多すぎてバイアスもかかるケースがありますので、社外の方などにも該当人物の評価を聞いてみる等すると良いと思います。

プレイングマネージャーはありか?なしか?

これも議論が分かれる点ですし、社員数によっては致し方のない面もあると思いますが、当社のお勧めは、プレイングマネージャーはなし!です。
理由は2点あります。

理由1:メンバー目線の弊害

どうしても、マネージャーが個人の数字を持ってしまいますと、メンバーと同じ目線になってしまい、『こんなことも出来ないの?』という指導をしてしまいがちです。人には、得て不得手があるので、そこをじっくり見抜いてあげる必要があるにも関わらず、ついつい、時間の無さも相まって自分ができること=みんなができること、となってしまう場合があります。注意が必要です

理由2:マネージャーの役割を見失う

マネージャーの役割は、【組織の力を最大化させる】ことです。しかし、ついつい自分でも数字をもっていると、未達に終わりそうなときに(未達の幅にも寄りますが)

・個人で頑張る
・チームで頑張る

の2択から選べるようになり、結果、自分でやったほうが早いとばかりに、個人で頑張ることで達成してしまうこともあります。これが長い目でみたら悪循環になります。つまりは、メンバーの育成ができない状況を放置させてしまうからです。
育成されないメンバーからは、徐々に不満が出てきますし、個人で頑張って部門の目標を達成していたマネージャーからは、メンバーにやる気がないとのストレスも貯まります。結果、双方の不満が爆発し、人材が定着しないという悪い結果を生み出します。こうしたことを避けるためにも、マネジメントとは、専任職であり、兼務は難しいとお考えいただいた方が良いと思っています。
もちろん、優秀なマネージャーは、兼務もできる人はいるので、絶対ではありませんが、プレイングマネージャーには、相応の負担と弊害があるという点は、ご理解いただければと思います。

目標設定が上手くできれば、問題なし!

ここまで長々と書いてきましたが、ご承知の通り、マネージャーに限らず、全ての社員において、目標設定さえキチンとできれば、離職率は大幅に下げられることは間違いないと言っても過言ではありません。

目標設定についても、メンバーが勝手に目標を自己設定してくるのではなく。マネージャーが目標設定してあげる必要があると思っています。自分で設定した方が、自主的な力が働きコミットメントが高まるという考え方もありますが、そうなると目標そのものがブレるので、お勧めしません。

当然に、モチベーションを維持できる(個人的には、会社組織において外部からモチベーションを上げることは相当に難しいと思っているので、維持で十分)目標を設定してあげることが重要です。
そして、管理職自身が、一緒になって「目標を達成するためにがんばろう」と思えることも大切です。そして、その後のさらなるスキルアップの展望が見えるような目標を立てることができれば尚良です。

加えて言いますと、経営目標にもとづいた目標設定を行うことが大きなポイントにもなります。経営目標を意識することで、部署ごとにどのような目標が必要になるのかを考える必要があります。これが出来ていると、個人の努力が、会社全体に貢献するに繋がりますので、、結果として会社への愛着やロイヤリティにつながります。離職率を下げる効果が期待できます。

無駄話は無駄か?

私は、無駄ではない派です。ついつい最近のリモートワークの環境もあり、あるいは【アイスブレイク】なんていうテクニカルな単語があるおかげで、無駄話の効用が軽んじられているような気がしていますが、実は、仕事中の無駄話こそ、社内の人間関係の醸成には必要なことだと思ってます。
特に上司部下においては無駄話が重要だと思っています。

毎週、1on1ミーティングを15分から30分程度行っている会社は多いかもと思いますが、この内容が、タスク管理だったり、先週からの振り返りだったりすると、それは、正直、どうなのかな?と思ったりもします。
私の経験の中にもその例は多分にありましたが、上司との1on1ミーティングで、タスク未消化を詰められないように、ミーティング直前にギリギリでこなしてくるスタッフや、未達の理由を、(今なら)『コロナの影響で・・・』などと、もっともらしい言い訳だけを上手に考えてくる例などが見受けられます。
つまりは、タスクを前提に、1on1ミーティングをすると、どうしても【ツメ会議】になってしまうのです。ツメる相手と、ツメられないための準備をしてくるメンバーとの間では、人としての人間関係が生まれる隙間が見当たりません。

もちろん、タスク管理はマネージャーの重要な仕事の1つですので、それは別のタスク管理ミーティングを設けるなどする必要がありますが、1on1では、とにかく上司部下の人間関係、信頼関係の醸成に当てて欲しいと思っています。NOアジェンダ。無駄話だけの30分大歓迎です。なかなか、人間関係、信頼関係のない人同士では、無駄話も30分間もできないので、無駄話が30分もできるようになったら、そこではじめて人間関係ができたとも言えるくらいに思ってください。是非、トライして欲しいと思います。

まとめ

いつもにも増して、今回もまとまりのない内容になりましたが、お伝えしたかった点は、マネージャーの役割は、人材定着にはとても重要ということです。そのために、マネージャーの役割を決め、マネージャーを育成し、その上で、メンバーの働きやすさを実現させてくことが重要です。
実は、私もマネージャー教育は苦手です。といいますか、お恥ずかしながら前述の通り、私自身、マネージャータイプでもありません。なので、無数の失敗を繰り返してきました。まさに失敗から学ぶです。

創業経営者には、私のようなタイプも多く存在しています。自分で仕事が出来る人が多いので、ついついマネージャー教育は重要と分かっていながら、後回しにしてしまっているケースも見てきました。
でも、今回のテーマである人材定着に関して言えば、労務の次に、真っ先に手を付けておかないといけない重要なパートだと思っています。

良いマネージャーがいる組織は、必ずと言っていいほど、人材定着は成功しています。逆も真なりです。
ついついマネージャー研修を外部の研修会社に丸投げしてしまいそうになりますが、その前に、ぜひ、社内のマネージャー候補の方との対話を進めてください。そこから今、やるべき必要なことが必ず見えてくると思います。
騙されたと思って(騙していませんけど)、ぜひチャレンジしてみてください!!


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