歌い手の人生のご褒美
妻のみみさんが、秋のコンサートに向けて熱心に楽曲えらびをしている。
古い歌曲がのびやかに流れ、部屋がぐっと格調高く高貴なムードに包まれる。クラシック音楽はぼくにはまるで縁遠い世界だったので、すこぶる新鮮である。彼女は楽譜をテーブルに広げ、時折、口ずさむ。とてもいい。
彼女は、重厚で懐の深い大柄な楽曲に挑みたいという気持を抱いているけれど、ぼくはどこか明るくコケティッシュな雰囲気の小品のほうが、今のみみさんの声質やチャーミングなキャラクタには合うように感じている。
もちろん、