見出し画像

長所を伸ばすか、短所を埋めるか


仕事帰りの妻とラグを携えて公園に行き、夕闇に塗り替えられていく空を寝転んで眺める。
先日のクラシック公演の話をする。

妻が師事する先生の門下生たちは、目先の演奏会に照準を合わせるのではなく、もっと長い目で音楽と向き合うのだという。演奏会が近づいても、平気で別の楽曲を練習するそうだ。これは驚くべきことだ。
妻が演奏曲で課題に感じている箇所をいくつか挙げたとき、「それは、今回は捨ててもいいのじゃないですか」と先生はさらりとおっしゃったらしい。苦手箇所の克服に残りの時間を費やすより、もっと別の課題(得意な箇所を伸ばすなど)に向き合うほうが有効ではないかと。

それはつまり、今回の演奏会はたまたま迎える通過点にすぎず、この先も演奏会は続くのだから、何も焦ることはない。
だって、音楽は一生やっていくのでしょう?
そう問いかけられている。
僭越ながら、ぼくは膝を叩いて同意してしまう。(しかし残念ながら、クラシック界隈ではこのような指導はきわめて異端であるらしい)

「長所を伸ばすか、短所を埋めるか」という相剋はどの分野でも頭を悩ませるに違いない。

ぼくの考えでは「長所を伸ばし、短所は逆手にとって個性に変える」というほうが痛快な感じがして好みなのだけど。
要するに開き直って「欠点も欠陥もありますが、そこがいいんじゃないですか?」とあえて揺さぶりたい。(そのパラダイムシフトを仕掛けることこそがクリエイティブな姿勢だとも思っているので)

短所の穴埋めは、足切りラインの底上げにはなっても、全体の魅力の増進には寄与しない。限られたリソースを割くのであれば、できるだけ加点につながる道に賭けたいと思うのだが、どうだろう。


いいなと思ったら応援しよう!