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『チズ』を描く。

この先の人生はどうなるんだろうか。

やりたいこと、人生をかける勇気、それは誰かが教えてくれるのだろうか。

だれか、おしえてほしい。


たまに、そう思う時がある。

これは決して悲観的などではない。

ただただ、
人生にも地図があったらいいなと思うのだ。

だから、自己啓発書や就活本を読みに行ったりする。すると、「地図」という言葉をよく見かける。

その本を手に取る。

答えらしきものも書いている。でも、それらは明日には大半忘れている。

心のどこかで。


なら、どうしたらいいのだろう。


『チズ』を描く。


気分の乗らない絵画教室

小さい頃、僕は、近所にある絵画教室に連れて行かれたことがあった。

絵を描くのは楽しいか?

僕は絵を描くより、外でドッチボールをしたい。

特別、絵に興味のない自分にとっては、

お母さんに連れて行かれた教室には興味が向かなかった。

これいつ帰れるんだろう。

そう思いながら、絵画教室が始まった。


油絵との出会い

どうやら今日、僕は「あぶらえ?」というものを描くらしい。

目の前にあるフルーツを描くのだと先生は言った。

すると、周りの慣れている人たちが、
まず木炭をもって、下書きを始める。

僕は少しせっかちな性格なので、すぐ色を描かせてくれよ!と思っていたが、下書きは大事だよと優しく先生に言われた。

とりあえず描いてみる。

目の前のものを描く。

それは、何もないところからイメージして
描くのよりは簡単だ。

線や色は、自分が見える景色を描けばいい。

下書きが終わると、だんだんと絵の輪郭を帯びてきた。

「おっいい構図だね」

そう、お母さんに言われたけど、自分は「構図」というものがわからなかったので、

少し照れた顔を見せて、ありがとうと言った。

それからイエローなんとかという物を使って、輪郭をどんどん書いていく。

そして、ついに色を塗る作業に移る。

やっと、色だ。

僕は自分が見えた景色の色を
どんどん塗っていった。

赤・黄色・緑...。

よし、

できた!!

完成した絵を先生に見せに行くと、

「いい絵だね。ここはもうちょっと色を足せそう。もうちょっと描いてごらん。」

と言われた。

色を足す?

僕は色をもう付けたのだ。
これ以上何を足すというのだろう。

色は一度塗ったらおしまいだろう。

そう思った。


チズは何度も描ける。

すると、周りの人は、もうすでに色をつけているキャンバスに、色を付けていく。

すでに塗っている景色に、少しずつより濃い色を、重ねていくのだ。

そうやって、色を足していきながら、自分が見ている景色・見たい景色を描いている。

色は、足していいんだ。

僕は色を足していいことを初めて知った。

油絵は一度描いて終わりではない。

少しずつ、少しずつ。

色を足していきながら、
自分なりの正解のチズをつくっていく。

そこからだろうか。

僕が油絵を描くようになったのは。


今では、何かあるごとに油絵を描く。

なんだか自分の原点のような気がして。

僕は、今日も描く。

油絵は
自分にとっての『チズ』なのかもしれない。



※この物語はフィクションです。

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森本瑛
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