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非暴力のウルトラマン【短編小説#36】

この星のウルトラマンは暴力を否定する。
暴力では問題の本質を解決できないと考えているからである。

ではどうするか。

まず、ウルトラマンは暴れて言うことを聞かない怪獣を強く抱きしめる。

怪獣は暴れたくて暴れている訳ではない。誰も救いの手を差し伸べず、一人で苦しみ続けたから、自暴自棄になって暴力でしか表現できなくなっているのだ。だからこそ、ウルトラマンは相手を強く抱きしめる。

どんなに暴れていた怪獣も30秒程経つと、不思議と落ち着いてくる。抱きしめられる力が強すぎて、そもそも身動きが取れないのもあるが、想いがじわじわと伝わってくるのだ。

落ち着いてきたことが分かったら、ウルトラマンは怪獣の目を見つめてこう伝えるのだ。

「他の誰が何と言おうと、俺はお前の味方だ!」

だいたいの怪獣はこれで心を鷲掴みにされる。あまりの気迫にここで涙を浮かべる怪獣もいる。どんな理由だとしても、それを全面的に肯定しようとするウルトラマンの愛情が相手にドンっと伝わるのだ。

しかし中には、そのウルトラマンの愛が信じられない怪獣もいる。その時はあえて、カラータイマーの残り時間を縮めて、ウルトラマンはこう言う。

「自分から逃げて楽になるなら逃げれば良い!でも、それじゃあ何も変わらないだろ。今変われば、未来を変えていけるんだ。限られた人生、俺と一緒にもう一度生まれ変わろうじゃないか!」

ここまで熱く訴えかけられて、心が動かない怪獣はいない。 地球に来た時から表情を大きく変えて、決意に満ちた顔で地球を去っていくのである。

戦って勝つことが善ではない。
戦わずして相手の心に打ち勝つのが、善の善なる者である。


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