息をするように本を読む 13 〜マーク・トゥエイン〜 「トム・ソーヤの冒険」
この小説はずっと以前に、あの有名な清涼飲料メーカー提供のテレビアニメになったのでご存知の方は多いと思う。
児童書のコーナーにもよく並んでいるので、子どもの読む本だと思われているかもしれない。
が、それは違う。
この小説は、もちろん子どもたちが読んでも充分面白いが、むしろ大人たちのために書かれたものだと私は思う。
主人公はトム・ソーヤという、10才くらいの少年。
両親は何らかの事情で既に亡くなり、弟のシドと一緒にポーリー伯母さんに引き取られている。
舞台はアメリカのミシシッピー川中流辺りにある小さな街。
時代は19世紀の中頃、おそらくゴールドラッシュの前後ではないかと思われる。
ポーリー叔母さんは善良で信心深い独身女性で、妹の忘れ形見であるトムを真っ当なちゃんとした大人に育てようと日夜、奮闘努力を続けている。
が、その成果はまったく現れていないようだ。
トムは絵に描いたような悪ガキである。
隙あらば叔母さんのジャムを盗み食いし、学校をサボって川へ泳ぎに行き、それを告げ口したシドに泥の塊を投げつける。
自分からアタックした可愛いガールフレンドがいるにもかかわらず、新入生のブロンドおさげの女の子に一目惚れし、彼女の家の庭に忍び込んで、成り行きとはいえ窓ガラスを割る。
道で出会ったいけすかない新参者とケンカをし、浮浪児ハックと遊びほうけ、宝探しと称してぼろぼろの空き家に不法侵入する。
ネイティブアメリカンのちょっと胡散臭いおまじないや呪術にはまり、ネズミの死んだの(?!)だの前歯の抜けたのだのを大事に収集している。
もし身内にこんなのがいたら、さぞや頭の痛いことだろう。
でも、自分自身に置き換えてみると、トムがとても羨ましい。
私にも子ども時代はあった。結構な田舎だったのでトムほどではないにせよ、ちょっと大人には言えないような悪いことも危ないこともしていた(と思う)。
でも、今思うと、やり足りない。
もっと遊んでおけばよかった。もっとくだらないバカみたいなことを、もっと真剣に真面目にやっておけばよかった。
まあ、今無事に生きているからこんなことが言えるのかもしれないが。
トムのトンデモ冒険の数々はこれから読まれる方のため、ここには書かない。
が、私の大好きなシーンをひとつだけ。
数々の悪行がばれて、トムはポーリー叔母さんに罰を科せられる。
晴天の休日、土曜日に、表通りの30ヤードもある板塀のペンキ塗りを命じられた。
この通りは遊びに出かける村の子どもたちがたくさん通る道だ。
トムは、まさに晒し者である。
はたして、トムの遊び仲間たちが次々と通りかかり、一心にペンキを塗っているトムに近づいてからかったり、馬鹿にしたりする。
しかし、トムには起死回生の秘策があった。その大人顔負けの作戦とは。
全編にわたって、クスクス笑える話やハラハラドキドキ手に汗握る冒険が盛りだくさんだ。
よくある言い回しだが、かつて子どもだったことがある大人たちに、ぜひ読んでいただきたい小説だと思う。
本を読むことは私には特別のことではない。生活の一部であり、呼吸することと同じことだ。
トムとハック、彼らとの出会いに深く感謝する。
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