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読了 「水車小屋のネネ」
新聞で連載されていた読み物ということで、ちょっと大河ドラマ的なスケールのお話でした。
作者は「好きなものを詰め込んだお話」と言っているそう。
「大河ドラマ的」な話の芯に据えられているのはヨウムのネネ。
50~60年生きる鳥といわれ、それゆえに寄り添う人間との出会いと別れが物語に反映されています。
大きな事件や事故は無いけれど、日々の生活のそこここにある出来事のなかで、喜びや悲しみを共有していくうちに、頼り・頼られていくことが大きな喜びになると教えてくれるような一冊でした。
ところどころで登場人物の発する言葉に涙が止まらないことがありました。
当たり前のことなんだけれど、それをきちんと相手に言葉にして伝えるって、本当に大事なこと。
そしてその言葉をきちんと受け止めて、自分の人生に反映させていく。
これはすごく難しいこと。
人間は中身が空っぽの状態で生まれてくる。
そのあとの家庭環境や社会環境によって人格ができて、マナーやモラルなどで中身が詰まった人間になる。
それが思春期の前くらい。
思春期ではその基本となる人格があるからこそ納得のできないことがあったり、相手の助言を素直に受け入れられなかったりする。
思春期を乗り越えても・・いや乗り越えたからこそそうやって出来上がった人格は、ますます意固地になるのが普通だと思う。
だけどこのお話に出てくる人たちは、大人になって他人から受けた助言を素直に聞き、それを吞み込んで「これからはこうしよう」と自分を変えていける人たち。
「自問自答」っていうのかな、じっくりと考えて何をしたらいいのかを考えて行動に移すことができる。
そういうところが読んでいてスッキリするのかな。
ときどきネネが空気を読んでいるような言葉も、感動しちゃう。
鳥って、なんにも考えていないようで実は人間(飼い主)のことをよく見ている生き物。
そっと寄り添ってくれるんですよ。
参考文献として「アレックスと私」が挙がっています。
こちらはヨウムのアレックスの研究をしたノンフィクションですので、興味のある方はぜひお読みください。
さて長い年月をネネとともに紡いできたこのお話、それこそ大事件などなく終わりを迎えますが、人間の人生なんてあんがいそんなものなんでしょうね。
私としては最後に作中に出てくる藤沢先生のその後が知りたかったし、藤沢先生にはまだまだ幸せな時間を過ごしてほしいと願っていましたが。
そこだけが気になっています。
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