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『ペーター・カーメンツィント』ヘッセ (猪股和夫訳)

読書記録。
ヘルマン・ヘッセの『ペーター・カーメンツィント』を読んだ。

とても読みやすい小説で、あっという間に読み切ってしまった。

孤独、小さな成功、失恋、絆、酒、地域性。
それらのキーワードが印象的だった。
田舎生まれのペーター・カーメンツィントという男性の半生を描いた話。

読んでみて、私はこういう小説が好きだなぁと思った。なぜ好きなのだろう。

まず海外文学のいいところとして、現地に行かなくても旅行した気分になれることが挙げられる。

その土地の自然、文化、社会、そして民族性のようなものを物語を通して知ることが出来る。

そして、自分に馴染みがない場所で繰り広げられる物語は、どこか安心して読める部分もあるのかもしれない。

この物語の主人公が生まれた場所は、スイス。
私はスイスに行ったことがないが、パッと思い浮かぶ景色はタイトル画像にあるようなものだ。

美しい自然。湖。緑。冠雪。
清らかなイメージ。
街は少しこんじんまりしていそう。
ちょっとだけ、私の地元と似ている。

この本の中にもやはり湖が出てきて、私の脳内の美しい景色の中で暮らしている登場人物達が、出来事が、全てどこか絵画のように思えた。

一方、春先のフェーンの描写は、結構恐ろしいというか、「春の戦い」みたいな印象を受けた。
実際そこで暮らしたら、台風のように厄介なものなのだろうか。

でもやっぱり、スイスの景色は憧れる。

またこの本には、主人公にはある程度孤独でいて欲しいという私の願いが、丁度よく反映されている。

なんてことだ。
私は、小説に何か期待をして読んでいるのか…。そんなつもりはなかったけれど。

それはともかく。

主人公の恋愛模様は非常に純粋で、私は凄く好きになってしまった。ペーター、めちゃくちゃイケメン(想像)なのに、誰とも付き合えてないじゃないか。私と付き合って…。

そしてペーターの放浪者気質のようなものに、とても安心感を抱く。なかなか馴染めず、色々旅をしたくなる感覚、少し分かる。私はあまり旅をしないけれど、したいとは思っている。

物語の後半では、障碍を持つ男性ボッピとの絆が徐々に育まれていく。ペーターの嫌悪→葛藤→愛情への感情の流れに引き込まれた。

考えさせられるところもあり、感動を誘う部分もある。

私は、二人が動物園に行くシーンが特に好きだ。
そして、動物園で見た動物を登場させて物語を即興でつくる二人の会話に脱帽。
頭の回転、早いなぁ。楽しそう。

なんだか、人と絆を育むことって素敵だな。
いいな、と純粋に思った。

いや、私にも人との絆が無い訳では無いが。
こういった物語で描かれる絆って、本当に理想的で夢のようだなと感じる。

ペーターは、なんだかんだ友情に恵まれていると思った。一人の失恋した相手とも最終的に友好的な関係を築いていて羨ましい。それは、告白した訳じゃないからか?にしても、ペーターは人間関係の距離感の操縦が上手すぎる、と思った。

彼の半生、なんだかんだ幸せそうだ。

そんなペーター、大の雲好き。自然好き。
雲か!というちょっとした驚き。自然の中でも雲を神秘の対象に選んだ作者の感性が凄いと思う。

雲かー。
雲、私も好きだけど、もっとじっくり眺めてみようかな。

ペーターが自然と向き合って創り出した色んな創作を読んでみたいと思った。

そしてこの本の自然の描写、全体的にとても好き。尊敬。

色んな自然に対して自分が何を感じるか、短い文章で沢山メモしておくのもいいかなと思った。

今までも日常で感じたことをある程度メモしてきたけれど、スルーしてる自分の感性もあるんだろうなぁ。でもなかなか文章として湧いてこない時もあるから、それはやっぱり訓練なのかもしれない。

あと関係ないけれど、スマホとかLINEとか、もはや電話もない時代に私も生まれてみたかったなと思ったり…。

では。
中途半端かもしれないけど、この辺で終わり。
色んな本読みたい!
もっともっとインスピレーションが欲しい!

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