単なる努力は感動を呼ばない【レビュー】【破天荒フェニックス】
なんの弾みだったか。流れてくるプロモーションを見て買ったのは間違いない。しばらく積んであったのも間違いない。
そして、この本『破天荒フェニックス』が大変面白かったこともまた間違いのない事実だ。
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メガネの販売をする『オンデーズ』。
その再生と挑戦を小説の形式で綴った一品だ。
どの程度面白かったかと言うと、読んだその足で近くのオンデーズに行って、次にメガネを買うときはここで買おう。と決めてきたくらい。
その場で買わなかったのは、つい先月メガネを買っているからに過ぎない。
もちろん中身の面白さと商品の良さが比例するとは限らない。ただ瀕死の会社を立て直してきた実績は嘘ではないし、何の理由もなく業績が良くなったりはしないものだ。
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そして、「小説形式」というのがこの作品のミソだろう。
言ってしまえば、それは「フィクションですよ」という隠れ蓑。事実が知りたい、ビジネスとしてきちんと役に立つ情報が知りたい。という方には向かないかもしれない。
でも、一つの作品として、エンターテイメントとして読む分にはこれほど読み応えのある形式はない。実際に起こったことを下敷きにした説得力と、タイミングや中身を「整える」ことによって生まれるダイナミクス。
それは映画「ボヘミアン・ラブソディ」が大ヒットしていることからも、その有効性がわかるというものだろう。
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実は、これに前後して前田裕二さんの『人生の勝算』も読んだ。
路上で弾き語りをしていた8歳の時から、SHOWROOMを立ち上げるまでを振り返った作品だ。
ビジネス書として出ているものに、ビジネス書以外の観点を持ち込むのは筋違いだとは思うが、こちらは正直あまり面白くはなかった。
というのも、あまりにも「努力しているから」。
外資の投資銀行に勤めて、毎朝4時半から5時に出勤しました。プライドを捨てて飲み会ではっちゃけました。どれもとてつもない努力をしたのだろう。ぐうの音も出ない。ぐうの音も出なさすぎる。それが正直な感想だろうか。
読み物として読んだ時に、ぐうの音もでないほど真っ当に努力されていると、何もいえねぇってなるんだなぁ……とそんなことを思いました。
「リアルであること」は、もてはやされる価値の一つだけれど、リアルであることが「正解」かどうかは『時』と『場合』と『相手』によるな、と。
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どちらがいい悪いではないけれど、楽しかったのは圧倒的に「破天荒フェニックス」。
今後も、こういう小説形式の自伝というのは増えて欲しい。ハリウッド映画のような計算されつくしたタイミング。池井戸さんとかが好きな人は絶対好きですよこれ。
これぞ「フィクション」の醍醐味。
ビジネス書でありながら、そんなエンターテイメントな感覚も同時に味あわせてくれる、二度おいしい作品です。
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