鰹節削り器での怪我を考える
かつお節を削る際に、皆さんが最も気になることは【怪我】ではないでしょうか。
鰹節削り器というものは、刃がこちらに向かってついている為、危険性を考える方は少なくありませんし、それは大切な事です。特に近年はお子さんと一緒にかつお節を削ろうとお考えの方も増えており、怪我の予防に常に軍手の着用や、そもそも刃物が出ていない(怪我をしにくい)形の削り器を選ばれる方もおられます。
ただ、私はここで一つ皆さんにお尋ねしたいことがあります。
『怪我をするって、そんなにいけない事でしょうか。』
指が無くなってしまうとか、縫うほどの大怪我をする、というのならば問題ですが、削り器での怪我は、きちんと道具を選べばちょっと切って血が少し流れるくらいです。
はっきり言って、庖丁で指を切ってしまうよりも小さな怪我になることが多いのです。
刃物というものの危険性を教わり、適切な扱い方を考え、失敗したら身をもって学び、痛みを知る…これは、私たち大人が実際に経験してきたことではないでしょうか。すべての失敗を取り除くよりも、失敗から学び、それをどう活かすかという事を考える大切な機会になるのではないでしょうか。
という事を考えており、過保護に怪我を避けるよりも、正しい道具の扱い方を学んでいきませんか?という事を私はご提案します。
その上で、『深い怪我になりにくい削り器』を選ぶことは、とても重要だと考えます。
今回は、鰹節削り器を選ぶ上で、怪我が深くなりやすい危険な削り器と、逆に比較的怪我をしにくい削り器の違いについてお話していきます。
目安は窪み
まず、4台の削り器を並べていますが、これは右から左に行くにしたがって、怪我が深くなりやすい順に並べています。
上の写真と下の写真の違いは、刃と鉋台の隙間の大きさです。
上の写真に写っている左側の2台は、刃と台の隙間が3〜5ミリも空いています。 これは、それだけ手や爪が入り込む幅があるということです。 ここに手が当たって、入り込んでしまったまま押してしまったら、入っている分ざっくりと切れてしまいます。 私もこれで失敗して、爪の辺りをざっくり深く切り落としてしまった経験があります。
こうなると勿論大出血で、大変な事態になりました。
(しかもこの失敗は、出汁とり教室の裏方をやっているときだったので、出血が止まらず裏の方でてんやわんやしておりました(;^_^A)
それに対して、こちらの写真の(一番右側の)削り器は、隙間が1ミリ程度と比較的狭いため、手や爪が入り込みにくく怪我をしづらい作りになっています。指をあてて前後に滑らせても、指が刃の上を滑り殆ど隙間に入る余地がありません。
できればこのように刃と台の隙間が1ミリ以下の削り器を選んでいただくのが、怪我を予防する上では良いと思います。
これは、実は削り器の価格にも比例します。
鉋の刃と鉋台の刃口に、隙間なく作るというのは、鉋の刃1枚ずつの形状や厚みに合わせて、鉋台(刃の嵌っている板を指す)を削り出さないといけないのです。質の良い鉋の刃は、手作り手打ちで作られている為、同じように作っていても1枚ずつごくわずかな違いがあり、最終的には人の手による微調整が必要です。 その代わり、そういった削り器は鉋台も比較的質が良いものが多いため、研ぎと手入れをすれば何十年も使えます。
5,000円くらいのものでは、安価に買えますが、長持ちせず、研ぎ直し不可(または研ぎと削り器の値段がほぼ同じ)のものが大半で、しかも怪我した場合に深い怪我をする危険性も高いのです。
このような事から、怪我を予防するためにも、質の良い削り器を選ぶことをお勧めしております。
いかがでしたでしょうか?
削り器をお選びになる際の一つの参考になりましたら幸いです。
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最後に…
怪我をしない事よりも小さな怪我で済ませる事、そのためにはどうしたらいいか学ぶこと、扱い方を知る事、という事を考えていく方がいいのではないかと強くお勧めします。
何故なら、刃物を使うという事は誰にでもあることで、その刃物の正しい扱い方や危険性、怪我をした際の痛みというものを早い段階で身に付けないと、いつまでも正しく扱うことができなくなります。
庖丁も、初めからうまく扱うことは誰だってできません。
それは鰹節削り器の扱い方も同じです。正しく知り、正しい扱い方を学ぶことによって、より安全により良い扱い方をする事ができます。
できるだけ、怪我をしにくい削り器を選んだうえで、ぜひともかつお節削りをご家庭でも楽しんでいただけたらな、と思います。