3/11(All those moments will be lost in time/西島大介)

放射能と幽霊。どっちも見えない。
(中略)
つまり 僕たちは
見えないものにふりまわされ続ける この先ずっと数万年の未来
いや太古の昔から

――第一話『宇宙港』より

見えないものに、ふりまわされている。9年前は(もしかしたら、今も。)放射能に。近ごろは、なんちゃらウイルスに。


中には、目に見えるものしか信じない人もいる。目に見えるもの……デマとか、かな。……ちょっと、冗談がきつかったかな。


目に見えるもの……。東日本に住んですらいない僕は、9年前に比べて、どれくらい復興が進んでいるのかも、わからない。


ちょっとだけ、調べてみた。

知るは応援になる。リンク先には、そんなことばが掲げられている。それは、間違いではないと思うけど。正しくもない気がする。僕が知りたいのは、数字じゃない。数字を見ても、今、そこに住んでいる人達の姿は見えてこない。


じゃあ、実際に行ってみればいいだろう。そんなことを、いわれるかもしれない。でも……。僕なんかに、受け止められるだろうか。その地域に根付いている弱さも強さも、その全部を。僕みたいな、のうのうと生きている人間に、受け止められるんだろうか。


平成23年。僕にとっては、大学に入学する、いわゆるハレの年だった。……3月11日までは。もしくは、12日までは。震災が起きたことをいつ知ったのか、よく覚えていない。でも、その日に読んだ新聞の、テレビ欄がまっ白だったことは覚えている。それは、どんな被害状況を映したニュースよりも、事の重大さを訴えているように思えた。

そんな思い出も いつか消える? 時が来れば?
(All those moments will be lost in time.)

――第七話『涙』より

あれから、9年も経ったんだ。9年……。来年には10年、つまり2桁になる。当時の思いは、だんだん風化されていく。その内、跡形もなくなるかもしれない。「ああ、そんなこともあったね」なんて、軽口を叩くようになるのかもしれない。被災していないのなら、なおさら。……そんな風には、なりたくないな。

必要とは限らない。
あらゆるものが 小さくなって 消えていく。

――第二話『海のトンネル』より

被災地の人達は、想像以上に辛い思いをしているだろう。想像以上にたくましく生きているだろう。被災していない僕よりも、ずっと。


それでも、ちっぽけな僕が、何かを書かずには/描かずにはいられない理由。それはきっと、忘れないため。被災地で亡くなった人達を、生きている人達を、忘れないため。


それが、これからを生きていくのに、必要なことだと思うから。

3/11更新

All those moments will be lost in time/西島大介(2013年)

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相地
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