冬の友だち
毎年、冬になると「そろそろですね」と集まる友だちがいる。
「そろそろですね」
「そろそろですよ、でも、まだ白菜が高いかな」
「白菜と大根安くなってきたね」
「セリも出てたよ」
「そろそろですね」
「やりますか」
そうやって集結した私たちは、ひたすら野菜を切り、りんごをすり、出汁を取る。
約束の半日前から白菜の水を切る私たちは年末進行の波に飲まれる側の人間でもある。
それでも、泣きながらネギを切り、思ったより疲れる人参の千切りをして、毎回上新粉に苦戦して、ニンニクと生姜をすりおろす。
キムチを作る。
少しずつアップデートした私たちのキムチはおいしい。
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出会った冬、キムチ教室の帰り際「絶対もっと美味しくなるよね」で、つながった。
その冬にすぐ2回目のキムチ作りをして、その次の冬、乳飲子を連れて私はキムチを作った。
乳飲子もう2歳になり、糊と言われるキムチの難関を一緒にかき混ぜ、りんごをつまみ食いして、野菜を混ぜ合わせている。
3年で私たちのキムチはずいぶんとおいしくなった。
メンバーは少しずつ変わり、場所も状況も少しずつ変わり、そこに理由と意味はもちろんあって、でも、キムチは作り続ける。
韓国のオモニみたい。
といいながら、手を動かして、今年1年の話をぽつりぽつりする。
にんじんの千切りをしながらシュトーレンを食べながら、酒を飲みながらキムチを漬ける。
キムチ臭い部屋で、キムチまみれのエプロンのまま「今年もいい一年だったね。キムチおいしくなりますように」と言って乾杯をする。
年が明ける頃、「この冬のキムチもいい感じだったね、次の冬までキムチ持つかな」といって、また来冬キムチを漬ける予定を立てる。
4人で12人前作ったキムチも次の冬にはちゃんとなくなる。
もちろんその間も会うし、SNSでも繋がってる。
だけど、キムチをつけるときはなんかちょっと特別な友だちな感じがする。
冬の友だち。
今年のキムチも、例年と変わらず「過去一じゃない?!」のできの予感。
最高の締めくくり。
キムチが漬かる頃、年が明ける。冬本番。