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当たり前こそ、奇跡

10年前の3月11日

父はまだ務めていたので家にいたのは私と愛犬の月だけ
お昼ご飯も食べて掃除も終わったから
月と2階に移動してベッドに入り呑気に昼寝を始めた

しばらくして、カタカタ揺れた
あ、地震だ…
なかなか収まらないどころが大きく揺れ始める
ようやく飛び起きて
「月!こっちにおいで!!」
月を抱きかかえてテレビをつける

そして東京にいる祖母へ電話をしたり
働いている父と兄にもメールを入れた

父は報道にも関わる仕事のため
地震が起きた日から家に帰ってきたのは
1週間近く経ってからだった

でも帰ってきても着替えを持ってすぐ会社へ行く
「ごめんな1人にして…」
父は疲労と申し訳ないという悲しそうな顔
「でもお父さん達いないと
困る人がいっぱいいるじゃない?
月もいるから私は大丈夫だって!平気だよー
それじゃあ気をつけて〜」
大丈夫ではないのに、この期間にも大丈夫と何度も言った

津波の被害はテレビ越しの映像から
被災地の強い地震もテレビからの情報
映像とインタビューだ
それを関東地域から見ていたにすぎない
だから怖いとか不安は地震被害や今後に向けた言葉ではなかった

父がいないことへの怖いと不安だった
メールをしても返信する時間なんてない
それを知っていても携帯が鳴るのをひたすら待っていた

家は無事、電気も火も使える、食料も水だってある、
でも大切な父とは落ち着くまで
ほとんど会うことが出来なかった

10年経ってもあの時の気持ちは覚えている
鳴らない携帯を握りしめて
今夜も開くことのない玄関を祈るようにして見ていた

3.11
それは当たり前の生活のありがたさを
改めて気づかせてくれた

ただいま

おかえりなさい

この言葉に込められた意味や気持ち
玄関を開ける大切な家族へ感謝すべきこと
それを10年前、私は知ることとなった

だからこれからも、この言葉を大切に気持ちを込めて言い続けたい

当たり前こそ奇跡なんだ

*愛音*



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愛音
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