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2024年のトピックスと2025年の抱負

文章教室課題のコラムを書いたら、そのままそれが、2024年のトピックスと2025年の抱負になった。

「 軆 」
文章を書くことに苦手意識がある。それでも書けるようになりたいと検索してみたら「AIを最大限に活用する文章教室」などもあって、なんか時代やなぁと思った。その中から、これかも! と思って通い始めた文章講座。教わった文章の手続きに沿って書いてみたら、なんやぁ……。声が漏れた。「ほんまはこんなこと思ってたんやぁ」見ないように蓋をしていたものが奥の方からぬるっと出てくる感じで、モヤモヤしていた何かがすっとしたような感覚があった。
あぁ、もしこれAIに任せてしまったらなんかもったいないよなぁ……。心の中でつぶやいた。

先日、仕事の資料のために調べものをしていたら”軆”という字を見つけた。常用漢字ではないが、キーボードで”てい””たい”など打って変換すると出てくる。意味は”からだ”や”姿”の他に”身につける”や”自分のものとする”などと書いてあった。ちなみに”身につける”という表現は『からだことば』といって身体部位にさまざまな言葉をひっつけ、もともとの意味を越えた表現のことである。
『からだことば』といっても、何か特殊な言葉ということでもないので、私たちが日常会話で何気なく使っていてそうなものを例としていくつか挙げてみようと思う。「今の話『目から鱗』やったわ」「講座受けただけでできた気になってた。ちょっと『なめてた』わ」とか、「先生が前に言うてはったこと最近ようやく『消化でき』てきたかもしれん」とか、「みのわさん、最近文章が『熟れて』きはったね」(まだ言われてないが)や、「小説家たちの文章の技術を『身につけ』たい」など。馴染みがあるものも多いのではないだろうか。
次に、”身につく”という状態になるまでを『からだことば』を使って表現してみるとこのようになると思う。
”なめる、かじる、噛み締める、噛み砕く、飲み込む、消化する、熟れる、肚落ちする、腑に落ちる、コツを掴む、身に沁みる、身になる、身につく”といったところだろうか。まるで、食べたものが口から入って消化して栄養を吸収して血肉になり我が身となるような、からだ感覚での理解がそこにあるように思う。また、今の自分がどういった状況なのかという現在地を客観的に認識でき、他者にも伝わりやすいような感じがする。もし、”知る→わかる→できる”というふうに単純化して言い表すことができたとしても、それは分かりやすさという点においては『からだことば』に分配が上がるのではないだろうか。

ここで”軆”の左にある”身”について少し掘り下げてみたい。たとえば、”身体”や”身長”、”中身”などは日常的に使っていると思う。他には? となるとその場でパッとは出てきにくいかもしれないが、辞書を開いてみると、あーそうだこれもかぁ……、という感じで並んでいる。
出身、独身、単身、身籠る、一身上の都合、身から出た錆、身内、身の上話、身の丈、等身大、身に余る、身に染みる、身が入る、身に覚えがない、身勝手、生身、身が持たない、身を捧げる、渾身、肩身が狭い、身の振り、親身になって、身銭を切る、身につく、身になる、身に沁みる、身を以って、身支度、身軽、身分、身元、身辺整理、身代金…… など。まだいくらでも書き出せるほどに、私たちの” 身のまわり”には”身”が溢れている。 ”身”は、いのちや心のはたらき、また心とからだを一つにした意味で使われたり、全力やまごころ、社会的地位や立場、わたしという存在だったりアイデンティティを表しているように思う。

ここから”身につける”の意である”軆”を読み解いてみると、<年齢を重ね経験を積んだ姿>や<のびのびと生きている>といった感じになるだろうか。そこにはゆったりとした呼吸の落ち着きのようなものがあるように思う。”身につける”までの過程は、トライアンドエラーの繰り返しだったり、からだ感覚で掴めるようになるまで地道な積み重ねが必要になるだろう。この時代コスパタイパと言われ、時間がかかることは好まれないのかもしれない。失敗したり間違ったりするのは時間の無駄だからと、ショートカットして最短距離で正解に辿り着けたらラクかもしれないけれど、何かもったいないような気がしてくる。”軆”の字を借りるならば「身にならない」「豊かにならない」とも言えそうだ。
”軆”は「迷ったり遠回りしても無駄じゃない。丸ごと自分の肥やしになるんやから」とか「そんなに焦らんでも時間かけたらええやん!」と、背中から応援されるような感じもある。
「もし間違えてたとしても、そんな怖がらんでも大丈夫やで」書きながら、自分に言っているように思えてきた。

文章への苦手意識をなくしたいと思って受講をはじめた文章講座は、先月からアドバンスクラスがはじまった。文章を書く楽しさと喜びを味わえるところに辿り着くまで” 軆 ”をお守りにして臨みたい。



※12月にフェリー旅をした別府市 明礬の湯の花を作っているところから見上げた冬の空

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