ピルへのアクセス
韓国に来て初めてピルを買った昨日。日本にいる時から、もう5年以上はピルを使っている。
生理はひどいけど、これは耐えるものだと思い込んでいた頃。友達が生理痛に関係する病気の存在を教えてくれて、ピルで治療ができると知った。
重い腰を上げて病院を受診してみたら、私も同じ病気があった。治療のために飲み始めたピルは、私の生活に欠かせないものになった。
そのピルを、あえて私は留学の全期間分は持たずに来た。出国前に調べてみたら、韓国では薬局で手に入ると知ったから。
日本でピルを手に入れておく方法はあったけど、「韓国の薬局でピルを買う」体験をしてみたくて、あえて足りない数だけ持って入国してみた。
今回はこの「ピルを手に入れた記録」を書いてみる。
買う場所はわかるけど、買い方がわからない
韓国では、いわゆるドラッグストアと薬局の差が日本よりも大きい。
ドラッグストアに薬はなくて、薬局では処方箋なしで薬が買える。
前に用事があって薬局に行った時、「頭の痛みと咳と喉と……」みたいな感じで薬剤師さんに相談して風邪薬を買っている人を数人見た。
薬局の信頼が高いんだなと、なんとなく思った。
ドラッグストアではなくて、いわゆるこの「薬局」のほうにどうやらピルは売っている。
そこまでは想像ができたけど、どう話しかければ良いのか、どの規模の薬局にならあるのか、そしてどの種類を買えば良いのかわからなくて躊躇していた。
街中で薬局を見つけるたびにソワソワしてチラチラと見る。大きければちょっと立ち寄ってみる。
でも、どの薬局も薬はカウンターの奥にあるから、どの規模の薬局なら買えるのか、どんな種類がいいのかは確認できずにいた。
買うと決めて、調べたこと
だけどいよいよ、必要な時が来てしまった。
本当はあと数日先だったけど、なんだか調子が悪かったようで、少し早くタイミングが来てしまった。
もうこれは買わなきゃいけないな、さていつどうやって買おうかな。
そう心が決まったら、自然と情報にアクセスしている私がいた。
まずは買いに行く日を決めた。ちょっと時間に余裕のある日、学校終わりの午後。
そこに間に合うように、種類を調べる時間を確保した。初めてのことなので、ちょっと余裕を持って時間を設定。
こうして調べて初めて、今まで自分が使ってきたものの成分を見ることになった。
調べてわかったのは、私が使っているピルは「初代」的なものらしいということ。
ピルで見るべきものは大きく分けて2つで、メインの成分の含有量と、サブの成分に何が使われているかということらしい。
私が使っていたのは、低用量ピルの初代的なもの。そして、韓国にある代表的なピルには、いまのものとまったく同じ成分のものが見当たらない。
なるべく似たものにするか、超低容量ピルと言われているものを使ってみるか。相談でもしてみるかと思いながら薬局に行くことにした。
薬局での話
調べてから薬局に向かってみたものの、まだちょっとドキドキして足が向かわない。一旦隣にあるドラッグストアに入ってみてから薬局に入った。
会計をしていた男性客がお店を出てから、女性スタッフに話しかけた。
「피임약 있어요?(避妊薬ありますか?)」
日本と比べて直接的な名前なことも、なんとなく言葉に出しづらい理由のひとつ。
これを聞いたスタッフ2人のうちの1人が「ああ、피임약!」という感じでサッと薬を出してくれた。
おそらく「服用は初めて?」的なことをその前に聞いてくれたと思う。
でもその時の私はなんと言われたのかイマイチわからなくて、出してくれるのをそのまま待った。
出してくれたのは、事前にネットで見ていた超低容量ピル。
それを買うと決めていたわけではなかったけど、でもいまこれを出されるということは一旦これでいいか。
そう思って購入して店を出た。時間は20秒、金額は900円。
アクセスに差がありすぎる
薬を受け取り薬局を出て、ドキドキが落ち着いてきてから思ったこと。
ピルへのアクセスが、日本と違いすぎる。
薬剤師の方に話しかけて出してもらうというハードルはあっても、話しかければたった20秒、900円で手に入る韓国のピル。
ピルがあれば、辛い生理痛を抑えることができる。生理のタイミングをコントロールして、生活を守ることもできる。
(もちろん、誰でも&100%というわけではないけれど。)
これに比べて、手に入れるまでに数時間はかかる日本のピル。
私は途中からはオンライン診療でピルを手に入れていたから、時間的なコストは少なかったと思う。ジェネリックに変えて、金銭的な負担も減らした。
それでもやっぱり、病院の予約、診察、薬局への連絡と受け取りといった負担はなくせなかった。診察から受け取りまで早くて1日、予定が合わなければ数日。
ちなみに、ジェネリックにする前は薬だけでも1ヶ月3000円がかかっていた。これに診察代や移動費もかかるのは、やっぱりハードルが高いなと思う。
このピルへのアクセス差は、本当に必要なのだろうか。
体を正しく知るために、病院を受診することは必要だと思う。でもそれは、薬をもらうためだけにも必要なのだろうか。
必ず内診があるわけでもなければ、ただただ「体調変わりないですか?」だけで流れ作業のように処方されることもあるのに。
ピルへのアクセス
そんなことを考えた、昨日の午後。
実は先日、緊急避妊薬を若者に配布する、性教育をすることに取り組むプロジェクトを支援した。
だからなおさらに、いま気になっているのかもしれない。ピルへのアクセスは、限りなく簡単であるべき。
女性にとってすごく身近なことなのに、お金や人の目や時間といったハードルが、簡単に行動を鈍らせてしまう分野。
低用量ピルは、服用しなくても「自分がすべて耐えればいい」とアクセスを避けてしまう。それでいままでもやり過ごしてきたからと。
緊急避妊薬は、希望的観測で病院に行かない選択をしてしまいそうになる。というのは、私の経験。
病院に行かないと決めても、待っているのは不安を抱えながら過ごす時間。私は幸い病院に行けたけど、使用しなかったことが最悪の結果を招いた事件はもうすでにたくさんある。
こんな世の中、嫌だなあと思う。そんなことを、久しぶりにじっくり考えた昨日。
声をあげ続けてくださっている方たちがいるから、思い立った今日の日にと私も微力ながら書いてみた。
言葉を選ぶテーマであり、知識を持っていなきゃと躊躇するテーマだけど、躊躇していたらいつまでもその日は来ない気がするから。
ピルを使うかどうかは個人の自由。でも、簡単にやる気を削がれる分野だからこそ、アクセスのしやすさは絶対に必要。
日本でも、ピルへのアクセスがもっと簡単になる日が(早く)来ますように。
そう願いをこめて。