若さは短命
若さは短命であることを知らなかった
知らなかったことは嘘になるが
本質的に理解していなかった
10代の頃ゆっくりと流れていた時間が
私を惑わして、残酷なその事実を悟れなかった
初恋の時に見た景色や香り、そこに纏わる感情
語り合い時が止まったように感じた不思議な時空
きっといつかこの無垢な五感の端端に触れた
記憶も忘れてしまう時が来る
「思い出」として美化してしまう時が来ることが
恐ろしくて私は泣いていた
その当時のままの寂しさ、虚しさ、若さがもたらした愛への信仰心を、そのまま抱いて生きたかったのに
永遠を悟らずに生きたかったのに
人は幸せを求めるために過去を
思い出として清算する語る、
でも、そんな日が来ることは許さず
現実にも牙を向ける純粋で裸な心を持っていた
今はやっぱりその当時を思い出すことしかできない、
振り返ることしかできない
それを語ることさえもいつしかきっと
過去の栄光になって、遠い日の記憶となる
それがオトナになるということ
世の中を知ったこの心で見える世界は狭くなり、
そんな現実を受け止められるその心が
大人なんだと思う
若さとは、無知だからこそ世界を広く感じて
永遠にさえも感じたあの【心】
その心にも、美しさにも、無垢な五感も、
虚しいほど短命で、青春で、
一度過ぎ去れば取り戻せない、
振り返ることしかできない
振り返っては浸って、
今見える狭い世界を生き延びようとする
その繰り返しの作業が、つまり生きることなのだ