なまぬるいさつじん
※性暴力を受けたときのことを書きます。フラッシュバックや精神不安定になりそうなどの恐れがある方は、読むのを控えたほうが良いと思います。
昔に受けた性被害のことを書こうと思う。
限られた友人にしか話したことはない。話を聞かされたって「つらかったね…」とか気を使われるというだけなのが目に見えているし、正直だから何?という感じでもある。
でもここは私の好きに書き記すところなので、気にせず書いていこうと思う。
話したくても話せないような内容だって。誰も聞いてなくたって。
大学受験の頃だった気がする。
つまり高校3年生とかだっただろうか。年始のことだった。
うちは年始にたびたび親戚が集まる。
そのときは祖父の何回忌かということもあって来ていた気がする。
まあ昔のことなので、過程はあまり覚えていない。
私には一つ年上の従兄がおり、年が近い従兄は珍しかったこともあって昔はよく遊んだ。(私に実兄もいるのだが少し年齢が離れているのだ)
仲が良かった、というよりただ一緒に私の部屋で漫画を読むだけ、などそういった地味な時間を過ごすだけだったが、とにかく二人きりになることは不自然ではなかった。
当時受験生だったこともあって、正月で宴会を開いている両親や親戚から離れ早々に自室に戻った。
大学入試のための勉強なんてだるいものではあったが、近かったこともあって仕方なく勉強することにした。
そうして自室で一人机に向かっていると、従兄が入って来た。
漫画でも読みに来たのか、と特に相手をせずにいたら、突然顔をつかまれて無理やりキスをされた。
ラグビー部で体格のよい従兄はいとも簡単にはカーペットの敷かれた床に私を抑えつけた。
声を出せなかった。抵抗をした気もするが、床に仰向けに押し倒される形になった私を固定するように、私の肩近くに跨った。
声を出すなとか、抵抗するなとか、何か言われた気もするけれど、そんなこと言われなくても私は何もできなかった。カチャカチャとベルトを緩める姿をただ見ていた。
そのまま強引に口に突っ込まれて、口淫に至った。
口の中に出されて気持ち悪くて吐きそうだったものを、しかたなく飲み込んだことだけ覚えている。余談だがそのあとめちゃくちゃお腹を壊した。
無抵抗になった私の胸なども適当に触られた気がするが、当時彼女がいた従兄は「彼女(の胸)より大きいな」と最低に最低を重ねる発言をしていた。
ゴムがないから挿れるのはやめとくわ、といって口淫だけで免れたのは幸運といっていいのかどうかわからない。
自分より大きな体格の人に押さえつけられて蹂躙されるということ。恐怖で声を出したり抵抗するなどできないこと。それが身内であることが余計に恥ずかしく、親や周りの人に言えないこと。
いろんなことが重なって、その後のことは正直あまり覚えていない。
それ以降、そもそもうちに来る機会自体があまりなかったこともあって顔をほぼあわせずに実家を出、会うこともなくなったが。
数少ない顔を合わせた機会は祖母の葬儀。
通夜の晩などで葬式場に寝泊まりしているときに、外で当時の恋人と通話をした後の私の腕をつかんでキスをされたこともあった。
この人は懲りていない、また二人になったらあんなことをされる――
そう思ったからこそ、二人になることをそれ以降徹底して避けた。
そもそも祖母の葬儀だというのに、こんな状況で?何考えてるの?バカなの?とも思った。どうしようもない人間だと改めて認識した。
どうしようもない存在なのだから、犯罪なのだから、声をあげるべきだ!他に被害者がいたら、生まれたらどうするんだ!と怒る人ももしかしたらいるのかもしれない。
けれど、当時の私はこんなことを親に伝えられるほど親との距離は近くなく、そもそも親に対して大きく距離をとっていた、性的な会話などもってのほかというほどに避けていたこともあって、とてもじゃないが言えなかった。
いつだったか親から彼が結婚したということを聞いたが、今は少しでもまともな人間になっていることを願うしかできない。
しかし、「私にあんなことをしておいて自分は幸せになるつもり?許せない」という感情が沸いたことも事実としてあった。
今ではその怒りの感情すらほぼなく、上記のように願うばかりだ。周囲の人間のために。
そういえば以前ニュースになったけれど、「口淫なんて合意の上でしかありえない」とSNSで言っている人を見かけて「そうか…知らないのか…」と思った。
私のこの体験を読んでも合意のものだと思われるのだろうか。合意したつもりは、一切ないのだが。
先の記事で書いた通り、自分が嫌いで死にたい感情は当時もあったからこそ、粗末に扱われる自分に安心した一面すらあるのだから本当に病んでいるなあと実感する。
一方で相手を許せない気持ちもあったし、恐怖心もあった。自分では気づかないトラウマもあるのかもしれない。
あとはまあ、細々した被害を挙げるなら、
夜の帰り道で不審者に「蛇に股間を噛まれた。暗いし怖いので自分で確認できないから代わりに股間を見てほしい」と言われたことや
電車での股間を押しあてられるタイプの痴漢
自転車に乗った人がすれ違いざまに胸を掴んできたこと
会社帰りの夜道に股間を触ってほしいと手を掴まれて無理やり触らせられたこととか
電車で酔って眠って帰っている際(これは私の危機管理がなっていないことももちろん悪いのだが)気づいたら隣にいたおじさんに抱き着かれ、駅で降りても腰を掴まれついてこられホテルに誘われ、駅員に泣きついて逃げたこととか…だろうか。
(ちなみに頭が回っていなかったので最寄りで降りたこともあり、その後駅前のコンビニで偶然再会してしまって、コンビニの出待ちをされてしまったので男友達に助けを求めたこともあった あれは恐怖だった)
私のように体型や容姿がよくなくてもこれだけ色々な性被害に遭うのだから、遭う人はもっと遭っているのだと思う。
性犯罪はなまぬるい湿度をもった心のさつじんだ。とおもう。
その湿度はいやに肌に張り付き、ずっととれることがない。べったりと、皮膚ではなく魂に刻まれる。
これを自傷だと脳が認識すると、私みたいにバグった人はかえって性に奔放になるという例もあると知ってもらえたらいいな。
少しでも息がしやすい世界だといい。
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