日本とイタリアの政党政治
両国の政党政治には明確に共通点があった
①一党優位
イタリアは第二次世界大戦後、終戦直後を除き、キリスト教民主党が常に与党だった。キリスト教民主党は、日本で言えば、自民党みたいな政党である。一方、野党第一党は共産党であった。
イタリアは比例代表制だったので、キリスト教民主党単独政権ではなく、その時によって連立相手を変えて、政権を維持してきた。(今後、日本も自民党が、そういう方針を採るかもしれない。)
1980年代になると、キリスト教民主党以外から首相が誕生するようになる。共和党や社会党から総理が出た。
➁選挙制度改革
1993年、日本で選挙制度改革を目指す細川連立政権が成立した年、イタリアも選挙制度を変更した。日本は翌1994年に小選挙区比例代表制にしたわけだが、イタリアも小選挙区と比例代表の組み合わせになった。
イタリアは日本と違い、下院だけでなく、上院、地方議会まで小選挙区と比例代表の組み合わせに変えるという徹底したものだった。(イタリアは小選挙区が4分の3、比例が4分の1の連用制で、日本の並立制とは比例区の割合とカウントの方法が異なっている)
改革の結果、イタリアでは第1党、第2党とも解党し、他の勢力と合流した。第2党は中道左派の民主党になった。
日本は第2党の社会党がほぼ解党同然の社民党となり、民主党が第2党になった点は似ているが、第1党はそのまま残ったので、異なった展開となってしまった。日本も第1党が分裂、解党すれば、改革できるかもしれない。
③その後
イタリアは再び、比例代表1本の制度に戻した。だが、2010年代に小選挙区比例代表並列制(小選挙区3分の1、比例代表3分の2の1票制)に再度、変更した。
その結果、左派ポピュリズム政党の5つ星運動が上下院で第1党となった。この政党は共同代表が芸能人なので、日本でいえば、れいわのような政党である。
この政党が支持を失った後、今度は右派ポピュリズムの同盟が政権を獲り、現在に至っている。
日本も左右のポピュリズム政党が議席を得られるようになったが、まだ勢力は小さく、政権を担うには程遠い。
➃日本の制度改革
衆議院と参議院の選挙制度改革協議会で話し合いが行われているが、なかなか意見の一致をみないようである。各党が自党の利益に沿う発言しかしていないし、今は政権が不安定なので、大胆な改革ができるとは思えない。ただ与党が過半数を割っているので、野党に有利な選挙制度にしてから解散総選挙となれば、面白いかもしれない。
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