野菜の専門家から学ぶAIの多面性:松尾豊教授の役割再考
皆さんは野菜の専門家や、野菜の第一人者というと何を想像しますか?
農家や八百屋、農協が頭に浮かぶかも知れませんが、野菜の専門家はそれだけではありません。野菜の専門家は数多く存在し、その知識の深さと範囲は各個人によって異なります。
また、AIは様々な産業に普及し、多岐にわたる研究が行われているためAIの専門分野は野菜の専門分野と比較すると、さらに大量に存在します。しかし、特定の専門家や研究者の意見を過度に政策に反映させることは、適切ではありません。なぜなら、AIの研究はその性質上、多くの分野にまたがるため、その全てを一人でカバーできている専門家は存在していないからです。
これは文末で説明するAI倫理の専門家だけでも、どれほど様々な専門家がAI倫理問題を検討するために必要かが分かると、一介のAI専門家の意見を過度に評価して、国家のAI政策を決めることが、如何に無謀か分るでしょう。
そのため『日本のAI研究の第一人者・松尾豊教授』といった表現は適切とは言えません。松尾教授のAIに対する理解度や知識を野菜の専門家に喩えると、有機野菜専門の八百屋の店主と同程度か、それ以下と言えるでしょう。
有機八百屋は、有機野菜の生産、農薬、農地の地質、野菜の流通、野菜の栄養素や、野菜に適した調理方法から、健康への影響まで、多岐にわたる幅広い知識を持っています。
しかし、もし一人の有機八百屋の店主が、『日本人が食べる野菜は全て化学肥料無使用、無農薬の有機栽培野菜でなければならない』と提唱した政策を、政府がそのまま実行した場合、日本人の過半数が餓死するでしょう。
江戸時代の日本の人口は3000万人程度でした。当時は化学肥料や農薬が無かったため、食料生産量に限界があり、このことが人口増加の大きな制限要因となっていました。他にも耕作技術や治水などの問題もありましたが、ハーバーボッシュ法により、窒素・アンモニア系肥料が大量生産できていなければ、マルサスの人口論で指摘されているような、食料生産量によって人口増加が制限されるという当たり前の現象が起こります。
この有機八百屋の事例からも分かる通り、一介のAI専門家が『AI研究の第一人者』と祭り上げられて、あたかもChatGPTのみがAIであるかのような誤解を生じさせる解説を行っていることは大問題だと言えます。
さらには、そのような解釈に基づいてAIに対する理解を深めようとする『一般ユーザの無知』、そして、それを批判的に評価できない『マスメディアの無知』も、AI無知倫理学上の大問題です。また、自らのAIに対する知識の欠如が理解できていない我田引水の『AI専門家の無知と無恥』も、倫理的な観点から大問題だと言えます。
また、AIについての知識が欠如している学者の意見を基に、日本のAI政策やガイドラインを決定している『政府や政党や官僚組織の無知』にも大きな問題があります。
AIのみならず野菜一つとっても、専門家と言われる人々が持つ知識は深く、多岐にわたります。それぞれの専門家が持つ視点や知識を尊重しつつ、それぞれの分野について深く理解することが求められています。一方で、『無知の認識』とその克服もまた重要であり、それが社会全体の知識と理解の深化につながると考えられます。
野菜の専門家の一部
野菜の研究・開発・改良
種苗会社の品種改良者、農学の研究者や学者、植物遺伝学の専門家、土壌学者、土壌微生物学者、生物工学者、植物病理学者、有機農業の専門家、肥料会社の化学者、堆肥会社の生物学者、植物生理学者、園芸研究者、植物育種学者、土壌肥沃性専門家、土壌微生物学者、農業気象学者、水資源管理者、野菜栽培用LEDライトの研究者・開発者、植物保護製品の研究開発者、農業用土壌センサーの開発者、畑作業ロボットの開発者、水耕栽培専門家など多数の専門家が存在しています。
野菜の生産・栽培
野菜栽培農家、有機農業農家、農業エンジニア、農業機械技術者、農業技術者、菜園コーディネーター、農地デザイナー、都市型農業(野菜工場など)の専門家、水耕栽培の専門家など野菜の専門家として高度な知識を有しています。
野菜製造関連製品・サービス開発
農機具製造業者、ビニールハウス製造業者、農業IoT会社のエンジニア、農業ドローンオペレーター、農業分野のデータ分析専門家(ハウス内の温度や湿度や照度以外に人工衛星で農業データを解析している専門家も大勢います)、野菜加工業者、冷凍食品加工の専門家、農産物検査員、植物検疫専門家、冷蔵・冷凍技術者(野菜の保存と運送に関する専門家)、野菜のパッケージデザイナー(野菜の鮮度保持袋の開発者や製造者や、野菜梱包の専門家)、フードスタイリスト(野菜の見栄えを良くするための専門家)、野菜ソムリエなど、これも専門家の例を挙げるときりがありません。
野菜の流通・販売
青果市場の運用者、卸売業者、野菜専門の流通会社の物流マネージャー、農産物仲卸、野菜専門商社、八百屋の店主や店員、スーパーマーケットの野菜コーナー担当者、種子販業者など、この分野も専門家も多数活躍しています。
野菜料理や飲食サービス
ビーガンやベジタリアン料理の専門シェフ、フェルメンテーション専門家(野菜を用いた発酵食品の製造者)、レストランのメニュー開発者(特に野菜料理を考案する専門家)、野菜ジュースメーカーなど様々です。
野菜関連の教育・情報提供
農業教育者、農業コンサルタント、園芸教育者、学校の農業教師、農業ジャーナリスト、野菜ソムリエ、野菜の評価家、地元食材推進員、農業出版物の編集者など、非常に多くの専門家がいます。
野菜関連の管理・規制
農薬製造業者、有機認証機関の認証技術者、農産物マーケティング専門家、農業廃棄物管理専門家、食品安全監督者、作物保険代理店、農業政策アナリストなども、それぞれの分野の野菜の専門家です。
その他
栄養士(特に野菜の栄養価に関する知識を持つ者)、野菜のイラストレーター・写真家、園芸療法士、環境科学者(特に農業生態系に焦点を当てたもの)、フードエコノミスト(特に野菜の価格、供給、需要についての研究をする者)、肥料、堆肥、農薬、畜産家(野菜を飼料として使用する専門家)、有機農法の専門家など、これも例を挙げるときりがありません。
非常に大雑把なAIの専門家のカテゴリ
AIの研究と開発
(1) AI研究者:新しいAI技術やアルゴリズムの開発を行います。
(2) 機械学習エンジニア:AIモデルの設計、訓練、テストを担当します。
(3) ディープラーニングエンジニア:特にディープニューラルネットワークに関する作業を行います。
(4) データサイエンティスト:AIに必要なデータを解析し、新たな知見を得ます。
AIの技術応用
(1) ロボティクスエンジニア:AI技術を使ってロボットの動きを制御します。
(2) 自然言語処理(NLP)エンジニア:AIが人間の言語を理解できるようにします。
(3) コンピュータビジョンエンジニア:AIが画像やビデオを解析できるようにします。
(4) AIソフトウェア開発者:AI技術を具体的なソフトウェア製品やサービスに統合します。
AIの戦略と管理
(1) AIプロジェクトマネージャー:AIプロジェクトの実行と管理を担当します。
(2) AI倫理専門家:AIの開発と利用における倫理的な問題を考慮します。
(3) AIコンサルタント:企業がAI技術を最適に活用するための戦略を提供します。
AIの教育と普及
(1) AIトレーナー:人々がAIを理解し、利用するための教育を提供します。
(2) AIコミュニケーター:AIの研究結果を一般の人々に伝える役割を果たします。
AIの法律と規制
(1) AI法律専門家:AI技術に関連する法的な問題を解決します。
(2) プライバシーとデータ保護専門家:AIが扱うデータのプライバシーと保護に関する問題を扱います。
AIとビッグデータ
(1) ビッグデータエンジニア:大量のデータを管理し、AIアルゴリズムにフィードするためのデータパイプラインを設計します。
(2) データアナリスト:ビッグデータを解析し、意味のある情報やインサイトを抽出します。
AIとハードウェア
(1) AIハードウェアエンジニア:AIアルゴリズムの実行に特化したハードウェア(例えばGPUや専用AIチップ)を設計・開発します。
AIと人間の行動学
(1) AIヒューマンファクターエンジニア:AIシステムが人間の行動と互動するための設計要素を考慮します。
AIと経済学
(1) AI経済学者:AI技術が経済、労働市場、産業構造にどのように影響を与えるかを研究します。
AIとセキュリティ
(1) AIセキュリティ専門家:AIシステムのセキュリティリスクを評価し、対策を策定します。
(1) AIフェアネス、透明性、説明可能性研究者:AIの意思決定プロセスが公平で、透明で、説明可能であることを保証するためのツールや手法を開発します。
その他
大量にあり過ぎて専門分野を列記するだけで、ハードカバー書籍が書けるほどのボリュームがあります。
AI倫理関連
AI倫理の分野における専門家は多岐にわたり、それぞれが異なる視点や専門知識を持ち、人工知能の倫理的な利用を推進しています。以下にいくつかの典型的なカテゴリをリストアップしてみます。
ちなみに、AI無知倫理学会では、このカテゴリのリストを作成するだけで、360ページのハードカバー書籍10冊分のボリュームがありました。
(1) AI倫理学者:人工知能が社会や個人に与える影響を理論的に考察します。具体的には、自律性、意識、自由意志、プライバシー、公正性、透明性、説明可能性など、AIと関連する倫理的な問題について深く考えます。
(2) AI法律専門家:AIと関連する法律や規制を解釈し、作成します。これはデータプライバシー、知的財産権、AIの責任とリスク管理などの問題を含みます。
(3) AIガバナンス専門家:AIの使用に関するルールやガイドラインを開発します。これには企業の内部ガバナンス、国際的な規範、または特定の技術(例えば、顔認識技術)の使用に関するガバナンスが含まれます。
(4) AI倫理の研究者・エンジニア:これらはAIの開発者であり、具体的には、公平性、透明性、説明可能性(FAT)の原則をAIの設計や実装に組み込む人々です。
(5) AI社会科学者:AIが人間の行動、社会構造、文化的な規範にどのように影響を与えるかを研究します。また、AIが既存の社会的な不平等をどのように増幅または軽減するかについても検討します。
(6) AIの哲学者:AIの本質的な問い(AIは意識を持つことができるのか、AIは道徳的なエージェントになり得るのか等)を探求します。これらの問いは、AIの能力とその結果に対する我々の理解を形成するのに重要です。
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