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ゲーム開発会社が、生成AIを導入するために考えるべきこと

生成AIはすさまじい勢いで進化しており、業界問わず注目されている技術です。ChatGPTによる文章作成や情報収集、Copilotによる画像生成などは、多くの方が利用しています。このほかにも、各ツールに生成AIボタンが機能として追加され、これまでより簡単に創作物を生成することができます。

企業でも生成AIの導入は進んでいますが、リスクや懸念点も存在しています。今回は、ゲーム会社で生成AIを導入する際に考えるべきことについてまとめました。

※本記事は2024年7月末時点の情報を基に作成してます。
※サムネイルの画像は、ai生成画像を元に作成された商用利用OK画像です。


ゲーム会社が、生成AIを利用するのにルールはある?

生成AI独自のルールは存在しませんが、経済産業省から「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」が公表されています。https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/aiguidebook.html

(中略)利活用の促進に向けて、特にゲーム・アニメ・広告の各産業における利活用ケースを調査し整理するとともに、政府関係省庁の各種ガイドライン等を前提として、コンテンツ制作において生成AIを利活用する際の法的留意点及び対応策を検討してまいりました。このたび、それらの調査・検討等の成果として、コンテンツ制作に携わる産業界のみなさまに向けて、知的財産権等の権利・利益の保護に十分に配慮した、コンテンツ制作における生成AIの適切な利活用の方向性をお示しするものとして、「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」を作成し、公表しました。
本ガイドブックは、生成AIを利用したコンテンツ制作の企画・検討や、利用する生成AIサービスの選択、リーガルチェック、さらに生成AIの利用に関する社内ガイドラインの作成などにご活用ください。

経済産業省 「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」を公表しました
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/aiguidebook.html

特に「活用シーンごとの留意点・対応策」は、ほとんど生成AIについて知らない方でも、わかりやすくまとまっています。


ゲーム開発で生成AIを使うなら、何に気を付けるべき?

主には、「著作権問題」と「情報漏洩」の2点があげられます。
そして、ゲーム開発で生成AIを使うものは「コード生成」「文章生成」「画像生成」の3つがあります。
それぞれの注意点についてまとめました。

ちなみに、この他にも、ユーザー動向の「分析」、ゲームのキャラクター・アイテムのダメージ率などを設定する「バランス調整」、ゲームのバグを見つける「デバッグ」などがありますが、これらは生成よりも計算・チェックに近いため今回は、除外します。

「コード生成」で気を付けること

「コード生成」については、もともとコードを公開する文化があるため、あまり拒否感なく受け入れられています。コードそのものは、誰が作ってもある程度同じものになることも理由のひとつでしょう。
例えば、GitHubなどのプログラムのソースコードを、オンラインで共有・管理するサービスでは、多くのオープンソースプロジェクトが存在しています。

「文章生成」で気を付けること

「文章生成」については、生成AIに素案を考えてもらう使い方が各企業で取り入れられつつあります。
文章の注意点は、生成されたものが既存の他社サービスや小説・漫画などのストーリーや設定と非常に似通う可能性があることです。これにより「見飽きた」「つまらないストーリー」が生成され、そのままでは使えないことがほとんどです。例えば、「昔話を書いてください。子供が主人公で、キジ、犬、サルを子分に従い、鬼退治をする話です」と細かいオーダー無しに生成させると、世間に認知されている一般的な大団円の話が生成され、新しさのない文章となります。

「画像生成」で気を付けること

最も物議をかもしているのが「画像生成」です。画像生成の学習データ元は非開示がほとんどですが、ネット上の画像を読み込ませて学習していると言われています。これにより、特定の絵柄に酷似したものが生成される可能性があります。ネットの画像を学習している場合は、著作権上疑わしい状態とも言えます。
画像生成した際の著作権侵害の可能性はありますが、これは人が描いても同じことが言えます。現在、生成された画像をそのまま使用する例は一部に限られていますが、案出し時間の短縮のために使い始めている企業は増えています。構図や方向性が固まった時点でイラストレーターに詳細とイメージを伝えて依頼することで、時間を短縮しながらも人が描いたイラストを完成させることができます。


ゲーム開発会社が生成AIを使う方法は?

無料生成AIですと、「情報漏洩」の懸念があります。
そのため、有料契約で学習データに活用されない「API契約」か、自社設備で運用する「物理サーバー構築」のいずれかの方法になります。

API契約をする

生成AIはLLMで生み出されます。
ほとんどのLLMは、API契約を用意しており、課金単位はトークン数で課金されます。トークンはテキストデータの単位で、1トークンは半角の英数字1文字を指します。日本語の漢字や全角の場合は1文字で2~3トークン使用することもあります。

OpenAI社から米国時間2024年7月18日に「GPT-4o mini」というとてもリーズナブルなプランが、発表されました。
月額20ドルの有料プランに契約して使用でき、入力と出力に別途以下の金額がかかります。
その料金を見ると以下のように記載されています。
月額20ドルの有料プランに契約した上で、入力と出力に別途以下の金額がかかります。

0.150ドル/100万 入力トークン($0.150 /1M input tokens)
0.600ドル/100万 出力トークン($0.600 /1M output tokens)

https://openai.com/api/pricing/

トークンは、日本語1文字だと1~3トークンと言われています。
100円かからず、100万文字弱が出力ができます。

金額については、使用環境・人数で変わるので一概には言えませんが、1ヶ月のモバイルゲームの1作品あたりの更新や新規開発の進捗で考えると、必要な文章量はある程度予測できます。そこから想定すると、安くて月額数十万、高くて数百万円と考えられます。


物理サーバーを構築する

物理サーバーを構築する場合は、初期費用で数百万~数千万円かかり、ランニングコストも数万~数十万円かかる可能性があります。
ただ、現在の状況から見ると、ゲーム開発会社はクラウドを利用するパターンが多いと思われます。
物理サーバーの必要性が高い企業は、情報セキュリティが特に厳しい金融関連企業などです。また、美術館や博物館など大多数に利用される場合も、最終的には物理サーバーを構築した方が都合が良いパターンです。


さいごに。生成AIとどう向き合うべきか。

懸念事項はありますが、生成AIを使用する最大のメリットは、仕事の効率化が図れることです。その結果、時間に余裕が生まれ、人が成すべき仕事に注力でき、クオリティの高い成果を残せる方向に進めます。企業面からも、業務のスピードアップにより利益に貢献する側面が期待できます。

世界では生成AIを積極的に利用しています。技術の進化が早いため、使い勝手が良くなり、懸念されている問題も解決していくかもしれません。

まずは、会社でガイドラインを用意し、個人利用を含めて全員が懸念点を理解することから始めると、より良い結果につながりそうです。


Qiitaを始めました!
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