【応援ブランディングvol.15】ブランディングでよくある3つの間違い③
③ブランドは自分たちのものではなく、お客様のもの
ブランドをつくる上で押さえておいていただきたいのが、ブランドは自分たちのものではない、ということです。
「ブランドをつくったのも育てたのも、自分たちなのになぜ?」と思われるかもしれません。
これは、ブランディングの定義を思い出していただくとわかりやすいでしょう。
ブランディングとは、企業側の「こう思われたい」と、お客様の「こう思う」をイコールにするための活動と定義しました。そのために必要なのが、企業側の「こう思われたい」を言語化したブランド・アイデンティティです。
そして、そのブランド・アイデンティティに沿って、ブランド名やロゴ、ブランドの基調色、パッケージなどを設計していきます。これらはブランドを識別するための最小単位のものであり、「ブランド要素」と呼ばれるものです。
これらの要素を使い、お客様との接点を設計していきます。その接点において、ブランドの世界観を伝える体験のことを「ブランド体験」と呼びます。
ブランド体験は、ホームページやSNSなどのデジタル空間、パンフレットやチラシなどのアナログ空間、店舗デザインや接客などのリアル空間において、ブランドの世界観を表現するものです。
そして、お客様はそれらのブランド体験に触れることで、自身の心のなかにある記憶のコップに水を貯めていきます。
このコップは無数にあり、たとえば「飲食店」というような大きな括りではなく、「和食」「中華」「フレンチ」「ファストフード」など、細かく分類されているイメージです。
たとえば、あなたがランチを食べに出かけるとします。
① 自分ひとりでさっと短時間で食べたい
② 友だちとゆっくりお話ししながら食べたい
③ 遠方から来た大切なお客様をもてなしたい
おそらく、①〜③のそれぞれで異なるお店を思い浮かべたのではないでしょうか?
仮に友だちとランチを食べるのであれば、その友だちはどのような食べ物が好きなのか、あるいは苦手なのかを考えていくと、お店の候補はさらに分類されていきます。
ブランディングとは、言葉を変えると〝お客様の記憶のコップに水を注いでいく活動〟です。
ただし、闇雲に水を注いでも意味がありません。注意していただきたいのが、ブランド側が意図したコップに水を注ぐということです。
たとえば、吉野家が「高級な牛丼」という記憶のコップに水を注いだとすればいかがでしょうか?
おそらくミスマッチなお客様が集まると思います。
注ぐべきなのは「うまくて、安くて、早く提供してくれる牛丼」という記憶のコップです。
また、記憶のコップは一つひとつのグラスが独立しているため、毎回バラバラのコップに水を注いでいては、いつまで経ってもお客様の記憶に定着することはありません。
短期的な成果を求めるマーケティング施策であれば、キャンペーンごとに伝えるメッセージを変えることがあります。刺激的な言葉を使えば選ばれる可能性は高まりますが、特定の記憶のコップには水は貯まりません。
ゆえに記憶に定着せず、必要になった時に思い出されないため、中長期的に選ばれ続けないのです。
注ぐべき記憶のコップを特定するのに必要なのが、ブランド・アイデンティティです。
ブランド・アイデンティティを策定した後は、それを体現するブランド要素をつくり、それらを含めたお客様との接点であるブランド体験を設計していけば、自然と注ぐべき記憶のコップに水が貯まっていきます。
ブランディングは、お客様の頭のなかに自社ブランドが意図したイメージを根付かせる活動です。
では、そのイメージはどこにあるのでしょうか?
それは間違いなく、お客様の心のなかです。
ブランドをつくり、育てるのはあなたですが、ブランドはお客様の心のなかに存在します。
言葉を変えると、ブランドはお客様の心のなかに資産化されているのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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※マガジン内の記事は、拙著【愛され続ける会社から学ぶ 応援ブランディング】から引用しています。豊富な事例も掲載しているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。