【応援ブランディングvol.13】ブランディングでよくある3つの間違い①
①かっこいいロゴをつくることがブランディングではない
ブランディングの相談でよくいただくのが、「ロゴをつくりたい」とか「ホームページを刷新したい」というご依頼です。
ブランディングのことをあまり理解されていない方からは、「○○(大企業)みたいな格好いいロゴをつくりたい」とか「△△(こちらも大企業)みたいなデザインにホームページを変えたい」というようなオーダーをいただくのですが、そのまま聞き入れてそれらをつくってしまうと、数年後、確実につくり直さないといけなくなります。
そんなもったいない失敗をしないために、ブランド戦略の全体像からお伝えします。
まずは、こちらの図をご覧ください。
これは戦略ピラミッド図と呼ばれるものです。流れとしては下から上に向かって各戦略が派生しています。
まず、すべての土台になっているのが一番下にある【ミッション・ビジョン・バリュー】と呼ばれるもの。
ミッションは日本語で言うと「使命」、ビジョンは「未来」、バリューはミッションとビジョンにたどり着くための「価値観」です。
ミッションは経営理念と同じ意味で使われたり、経営理念のほうが上位概念になっている会社もありますが、応援されるブランドづくりではミッション・ビジョン・バリューを戦略の土台として考えていきます。
もし、経営理念やパーパス(企業の存在意義)をミッションと同じ意味合いで捉えているのであれば、そちらで代用していただいても問題ありません。
たとえば、有名な企業では次のようなミッションを掲げています。
服を変え、常識を変え、世界を変えていく(株式会社ファーストリテーリング)
一人ひとりに想像を超えるDelight を(株式会社DeNA)
あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる(株式会社メルカリ)
ミッションは自分たちを鼓舞するフレーズであるものの、ファーストリテーリングやDeNA、メルカリのように抽象的な概念であることが特徴です。
また、ビジョンも数値で表わせない未来を表現する時には抽象的になることが多く、バリューも目には見えない価値観を定義します。
ゆえに、ミッション・ビジョン・バリューだけを見て、具体的なブランディング施策に落とし込むことは、解釈の余地があり過ぎて容易ではありません。
そのため、ミッション・ビジョン・バリューをベースに、ヒト、モノ、カネ、情報という限られた経営資源を、どの市場に対して投下すれば自社ブランドが成長するのかを考えます。それが先程の図の2階層目にある【①経営戦略】です。
そして、その経営戦略を顧客にフォーカスして考えたのが次の階層の【②マーケティング戦略】、さらにそれをメッセージ化したものが最後の階層である【③コミュニケーション戦略】となります。
冒頭のロゴやホームページの話は、各戦略の最終層であるコミュニケーション戦略の一部です。しかし、多くの広告会社やデザイン会社はこの部分だけを切り取って、ブランド戦略と呼んでいます。
なぜだと思いますか?
理由は簡単です。
ブランド戦略のなかで唯一、外部から見ることができるのが、コミュニケーション戦略だからです。
「ブランド戦略」はコミュニケーション戦略だけでなく、ミッション・ビジョン・バリューという土台を具体化させた経営戦略とマーケティング戦略を総称したものです。
もちろん、コミュニケーション戦略はブランド戦略の一部に違いはありません。
しかし、それはあくまでブランド戦略の枝葉であり、ブランドという樹を支える土壌にはミッション・ビジョン・バリューがあり、その根っこに経営戦略、幹にマーケティング戦略があってこそはじめて成り立つ戦略なのです。
さらにこれらの戦略は、ミッション・ビジョン・バリューから一貫して設計しないといけません。
たとえば、ミッションで「環境を守ることが自社ブランドの使命」と掲げているにもかかわらず、お客様へメッセージを届けるコミュニケーション戦略において、環境に負荷をかけるような施策を行なっていたとすればどうでしょうか?
おそらくお客様は、言行一致していないコミュニケーションに違和感を感じると思います。
また、そのようなミッションを掲げる会社のロゴであれば、グリーンを基調にしたやさしげなデザインが相応しいですが、経営者や担当者の好みで制作を進めると、環境とは無縁のデザインを採用してしまう可能性もあります。
ブランドの世界観を伝えるのであれば、ミッションから一貫性のあるデザインにしなくてはいけません。
これが本項の冒頭で言った「数年後、確実につくり直さないといけなくなる」という理由です。
〝仏造って魂入れず〟
一見ブランド風に見えたとしても、各戦略に一貫性がなければ、それはブランド戦略ではありません。
コミュニケーション戦略では、大企業が発信しているデザインを真似るのではなく、自分たちの内から湧き出る想い(ミッション・ビジョン・バリュー)を起点としたデザインにすることで、中長期的に使い続けられるのです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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※マガジン内の記事は、拙著【愛され続ける会社から学ぶ 応援ブランディング】から引用しています。豊富な事例も掲載しているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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