心臓
今朝も
目が覚めると
シュレッダーにかけられて
千切れたリボンのように
身体がばらばらする
この「私」という「一つの形」を取り繕うのに
バランスを取って繋げないと
立ち上がることもできない
足元をすくわれて土台が揺らぐ
谷間の綱渡りをするように
心臓がきしむ
ほろほろ瓦解して
地面に散らばってしまいそうで
横たわったまま動けない
この存在の頼りなさ
この存在の情けなさ
「始まる今日」への不安
カーテン越しの朝陽の眩しさ
心臓に手を当てて
心臓の音を聴く
すると
この世に生まれ出る前から
いっときも休まずに動いていた
この臓器が
だい じょうぶ
だい じょうぶ
だい じょうぶ
だい じょうぶ
と鳴っていた
心臓こそがこの肉体を「一つの形」に束ねていたのか
太古の昔から「命」を生かしていたのか
何億回もここで「私」を生かそうとしていたのか
流れ出ては戻ってくる
なま温かい血液のことを想い
だいじょうぶ
だいじょうぶ
だいじょうぶ
だいじょうぶ
と
起き上がる
心臓とともに「今日」を始めよう
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