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舞台風強2023が最高だった | 風が強く吹いている

2023年最初の現場は、推しであるA.B.C-Z塚田僚一さん(塚ちゃん)主演の舞台「風が強く吹いている」でした。
(すでに各種メディアミックスされている、舞台としても再演作となるので他作品と差別化したく、また何より公式Twitterの「 #舞台風強2023 」のハッシュタグが大好き過ぎたので、私もこのように表記させていただきます。)

千穐楽から1週間以上経って、2月に突入した今もまだ、「舞台風強2023」から受けた衝撃が忘れられなくて、呆然とふわふわ日々を過ごしていたのですが、感じたことをやっと文章化する気になり始めたので、この機会を逃さまい!と記録しようと思います。やっとこさ自分の中で咀嚼が完了した感じがします。

風が強く吹いている

将来を期待されながら、誰かの言いなりになって走ることに疑問を感じた蔵原走(カケル)は、 陸上競技部があるかも怪しい寛政大学へ進学。陸上界と距離を置こうとする。

そんなある日— —大学の先輩・清瀬灰二の紹介で格安の学生寮・竹青荘で暮らすことになった走は、 “十人目の選手”として迎え入れられることに。家賃が安いからくりは、箱根駅伝を目指すことが条件だった!?

「俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか」灰二の真摯な眼差しを受け、心を揺り動かされる走。 しかし、竹青荘の住人のほとんどは、陸上経験のない者ばかり。はたして彼らは箱根駅伝に出場し、 その先にある“頂点”を目にすることができるのか? いま、若者たちの熱い想いが駆け抜ける!

https://kazetsuyo-stage2023.com/

推しの舞台を120%楽しむべく手に取った原作、「風が強く吹いている」。

駅伝ランナーたちの孤独と絆。若者の心の成長。襷を繋ぐということ。ストーリーの本筋を支える、湿度まで感じるような巧みな情景描写。
後に直木賞を受賞する作家・三浦しをん先生が、20代のうちに書き上げたという大名作を前に、私は込み上げた涙を何度も拭って、その度にずぶりずぶりと「風強沼」にハマっていきました。それはもー、深く、深く。

書き手の心情が知りたくて、三浦先生のエッセイも読みました。

「舞台風強2023」の公演前に、結局原作は通しで3回読んで、お気に入りのシーンはそれぞれ細切れに複数回読んで、アニメ「風が強く吹いている」も一気見して、私が感じたのは

〈これ、一本の舞台でまとめきれるのか?〉

という一抹の不安と、舞台を通して、

〈『清瀬灰二』をもっと理解できるようになるかもしれない〉

という大きな期待でした。

まず、この長編を一つの舞台としてまとめきれるのかという、私のしょーもない不安について。

なんと言っても、原作小説は圧巻の全659頁、アニメは2クール分の全23話。
登場人物は最低でも、主人公のカケルとハイジ、その他の竹青荘のメンバー8人で、合わせて10人。それに、準レギュラーとして、マネージャーの位置にいる花ちゃんに監督である大家さん、ライバル校の榊、藤岡。それ以外にも商店街の後援会メンバーや、何よりも、一緒にレースを走る学生ランナーは何百人と出てくるのに、それを一体どう表現するのか。

ストーリーのネタバレになってしまうけれど、陸上経験のない寄せ集めメンバーで箱根を走る、というクライマックスに向けて説得力を持たせるために、放課後の練習シーンや、夏合宿、予選会のシーンなんかは削ることはできないはず。
そうすると、肝心の箱根駅伝本線のシーンが薄くなってしまうのではないか……ねえねえ一体どーするよ?!という具合で、勝手に心配をしていたのですが、私のバカタレ!!!まっっっったくの杞憂でした!!!

舞台は一幕:1時間20分で、プロローグから予選会まで、そして20分間の幕間を挟んで、二幕:55分は丸々、箱根駅伝本線のシーン、という構成でした。

もちろん、原作をそのまま、ということではなく、しっかり舞台化するエピソードを取捨選択して(その結果、まさかの監督不在のアオタケ!でも、実質の監督はハイジさんだから問題なし!)、ところどころ令和バージョンにアップデートし(王子はゲーム実況者に!キングは雑学王に!)、練られたストーリーに、すっかり原作厨になりかけていた私も敬服しっぱなしでした。それもそのはず、三浦しをん先生がしっかり監修されていたのです!

肝心のレースのシーンはというと…すごかった!!
セットの床は、「八百屋舞台」と呼ばれるもので、客席側に向かって傾斜があり、その傾斜を活かして、コースの起伏や、河川敷の高低差なんかが表現されていました。

そんな、足腰にも負担がかかるようなセットの上で、役者さんたちの走りの演技がほんとにすごくて!(語彙力)

塚ちゃんが舞台の練習期間、ジャニーズ有料ブログに「走りの振り付け」について書いていたことがあって、それを読みながら私は
「走りの振り付けとは?はて?」
と思っていたのですが、観劇して分かりました。そう、あれは振り付けなんです!!!(ドヤ)

舞台の中で駅伝を表現するために、当たり前なんですが、セットの上にとどまりながらも走っているように見せなければいけなくて。
だから役者さんたちは、時にその場で駆け足をしたり、ライバル校の選手役のアンサンブルの方たちなんかは、前に走っているように見せながらも実際には後ろ向きに走って、舞台上でカケルが急加速したことを表現したり(表現力の限界)、ああ、塚ちゃんの言ってたことはコレだったんだ!と思いました。

そして、『清瀬灰二』というキャラクターについて。

原作は、オーバーワークの末に故障した過去を持つ4年生の灰二(ハイジ)と、天才ランナーの1年生・カケルのダブル主人公でしたが、天才的な陸上能力を持つ反面、孤独を感じ、誰とも繋がれないカケルをはじめ、それぞれに葛藤や寂しさや迷いを抱えた竹青荘の面々が、ハイジの導きと「走る」という行為を通して、生きることに突き進んでいく、というストーリーの構成上、ハイジというキャラクターは主人公でありながら、

『カケルから見たハイジ』
『他のメンバーが語るハイジ』

と、どこか外側から描かれることが多くて。
(そうすることで、自分がまるで竹青荘の一員になったかのように読者に感じさせる、三浦先生の技法なのだと思います)

とてつもないネタバレですが、
例えば、選手生命が絶たれると分かって挑んだ復路の前夜、カケルは

ハイジさんは、なにを言いたいんだろう。〜中略〜よくわからないけど、ハイジさんが弱気になっている。

と、なんとなくハイジの異変を察知するし、8区のキングがスタート前に、10区のハイジと電話で話して、

清瀬はまるで、今日をかぎりに未来がなくなると考えているみたいだ。

と、わずかに不吉を感じさせるシーンがあるのだけれど、ハイジ自身の内なる気持ちは全く描かれていなくて。

この時、ハイジさんはほんとはどんな気持ちだったんだろう、とか、読者(私)は考えちゃうわけなんです。だって、ここまで読み進めている読者(私)は、ハイジさんのことが大好きになっているから。だってだって、ハイジさんだってただの大学生なんだよ…!ずっと強くいれるはずないじゃん…。

でも、その答えは書かれていないので、読者は想像するしかなくて。
それが小説の醍醐味であり、だからこそ、ハイジは魅力的なキャラクターで、この作品が、誰もが心をふるわせる名作になり得たのだと思うのだけれど…。
作者の三浦先生は、こんな読者の心情も織り込み済みで『清瀬灰二』というキャラを創造したんだろうなぁ、と思うと、もうなんだか、私は胸がいっぱいです!

だから、俳優・塚田僚一というフィルターを通して、原作では想像するしかなかったハイジの人間味みたいなものを感じられたなら、もっと『清瀬灰二』というキャラクターを理解できるようになるかもしれない、という大きな期待を抱いて、『清瀬灰二』を単独の主役として再構成された舞台風強2023を、私はほんとにほんとに楽しみにしていたのです。(我ながら重すぎる…塚ちゃんゴメン!!)

そして端的に言うと、塚ちゃん演じるハイジは、最高でした。

推しだから、とかそんなものは抜きにして、塚ちゃん演じるハイジの、周りを包み込むカラッと明るい陽のオーラみたいなものが強ければ強いほど、その奥に隠された陰がより濃く、強く私には感じられて、本当に良かった。

ハイジについて、人によって色々な想像ができると思うんです。
例えば原作では、

〜中略〜
 清瀬はひとの悪い笑みを浮かべた。
 「俺がいままで、なんのために毎日飯を作って、ここの住人の体調管理に努めてきたと思う?」
 いったい清瀬は、なにを言いたいのか。少なからず、清瀬の家事能力に恩恵を受けている一同は、危険を察知して沈黙した。

という描写から、ハイジって無茶振りなヤツだなーと感じる人もいるだろうし、カケルと、元チームメイトの榊がやり合う一触即発のシーンでは、カケルを諌めながらも、

 「東体大は真剣に練習して、箱根を目指してるんですよ。思いつきで走ってるひとたちのことなんか、かまっていられません」
 「気が合うな」
 清瀬のこめかみに青筋が浮いたのを、走は見た。「ガキくさいいやがらせで、真剣な練習の邪魔をされるのは、本当に迷惑なものだ」
〜中略〜
 「俺たちがいかに仲良く真剣に走っているか、予選会で見せてあげよう。ああ、でもきみたちは雑用で手一杯で、見る暇がないかもしれないな。ま、頑張ってレギュラーの座を獲得してくれ」

と、怒り爆発で、大人気なく振る舞う一面も描かれていて。

でも、ハイジを表す表現で私が一番好きなのは、

 一度、陸上で挫折を味わったからこそ、清瀬は初心者がほとんどだった竹青荘の住人たちを導けたのだ。優しさと強さ、走ることへの確信と情熱を持って。

という、7区を走るニコチャン先輩が箱根駅伝に辿り着くまでを回想しながら、ハイジの導きを振り返るシーン。この表現にハイジという人物の全てが詰まってるんじゃないかなと、私は思っていて。

それを裏付けるような塚ちゃんの演技…セリフのないシーンでみんなを優しく見つめる視線だったり、厳しい言葉を言う時の腕組みだったり、当たり前のように玄関で揃えられたスニーカーだったりを見て、ああ、私の解釈って間違いじゃなかった!!と感激しました。

舞台の上にいたのはA.B.C-Z塚ちゃんではなくて、完全に清瀬灰二、その人でした。


舞台風強2023と、原作「風が強く吹いている」、そして塚ちゃんハイジへの重すぎる愛を吐き出している間に、公式Twitterで「舞台風強2023」の公式パンフレット通販のお知らせが出ました!2023年2月21日までだって!

▼ここから公式HPへ飛べるよ〜▼
(回し者ではございません)


金髪を封じ、フィジーク大会のためにつけた筋肉を落として挑んだ、A.B.C-Z塚ちゃん演じるハイジさんのビジュ、全世界に届け!!!

おしまい。

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