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【木曽駒ヶ岳で山の日に出会った】高山植物20選

今年の山の日紀行に木曽駒ヶ岳を選んだ理由は、植物愛好家の端くれとして「高山植物の花畑がどれほどのものかを見てみたい」という純粋な理由もあった。(自宅には100鉢以上もの植物があり、旦那からは呆れられている)
というのも、高山植物のある種の予習として「牧野富太郎と山」を熟読していたのだが、読み進むにつれて紹介されていたシナノキンバイやヤマハハコなどを、この目で見てみたくてたまらなくなってしまったのである。

実際に行ってみると花期には少し遅かったのか、一番のお目当てのコマウスユキソウは見つけられず。チングルマも既に風媒花のように種子のみとなってしまっていたが、その他にも都心では見られないような珍しい高山植物の数々に出会うことができ、感無量だった。

本記事では、2024年山の日に登山道中で出会った20種類の高山植物を備忘として記載する。(もし間違いがあったなら、指摘していただけるとありがたい。)登山時期の選定などで、活用いただければ幸いである。

【おつかれ山日記|あらまし】

わたしについて

都内IT系メガベンチャーにて、荒波に揉まれながらも諸行無常に生きる、植物大好きHSPアラサー女子の山日記。
PC画面と睨めっこし、鬼畜上司やモンスタークライアントとの対峙で消耗した心身を清め、浄化しリセットする術として、旦那を引き連れ絶賛登山にハマり中。
直近は富士山登頂(須走ルート)、屋久島(縄文杉)トレッキング達成。

これまでの山

始まりは、2019年のゴールデンウィーク。
最初は一年に一山だったのだが。
登山を重ねるうち、本気登山に目覚めてしまい。ついに昨年2023年は、記念すべき山の日に富士山(山梨・静岡)へ登頂を果たすことができた。

  • 2019年 鋸山(千葉)

  • 2021年 大山(神奈川)

  • 2022年 御岳山(東京)

  • 2023年 筑波山(茨城)/ 大岳山(東京)/ 富士山(静岡・山梨)

  • 2024年 日和田山(埼玉)/ 函館山(北海道)

富士山はまた別の機会とするが、今回は長野県・中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳について記すことにする。

▼木曽駒ヶ岳へのアクセスはこちら

▼木曽駒ヶ岳の登山ルート詳細はこちら


1.木曽駒ヶ岳の高山植物|千畳敷カールエリア

千畳敷カールの代表的な景色

日照条件が良く、日当たりを好む植物が群生するエリア。群生するチングルマの足元にミヤマリンドウが咲いていたり、スポットでシナノキンバイやエゾシオガマなどが咲いており、目にも楽しい色鮮やかな花畑を楽しめるエリア。

1-1.チングルマ (稚児車, Geum pentapetalum)

チングルマ

日本の高山帯に生育するバラ科チングルマ属またはダイコンソウ属の多年草。高さ10〜30cmで、6月から8月にかけて白い5弁の花を咲かせる。花後にできる羽毛状の種子が風に揺れる様子が稚児の風車に似ていることから、チングルマと名付けられたのだとか。岩場や草地で群生し、風景に彩りを添える存在。残念ながら花期はもう終わっていたようだが、千畳敷カールの登山道に入りすぐの場所にたくさん生えていた。

1-2.ミヤマリンドウ (深山竜胆, Gentiana nipponica)

ミヤマリンドウ

高山帯に生育するリンドウ科リンドウ属の多年草。高さは5〜15cmで、青紫色の小さな花を7月から9月にかけて咲かせる。岩場や草地に生えるため、登山道沿いでよく見られる。花は閉じることが多いが、晴天の日には開花し、鮮やかな色彩で風景を彩る。

1-3.ヨツバシオガマ (四葉塩釜, Pedicularis japonica)

ヨツバシオガマ

シオガマギク属の多年草で、日本の高山帯に自生する。高さ20〜50cmで、ピンク色の花を7月から8月にかけて穂状に咲かせる。葉は対生し、羽状に細かく裂ける。名前の由来は、四枚の葉が輪生することによる。湿った草地や湿原で見られ、風景に彩りを添える存在。

1-4.シナノオトギリ (信濃弟切, Hypericum kamtschaticum var. senanense)

シナノオトギリ

オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草で、信濃地方に特有。高さ10〜30cmで、長く伸びた雄蕊が特徴的な黄色い5弁の花を7月から8月にかけて咲かせる。葉や茎に透明な点があり、薬草としても知られる。高山帯の岩場や草地に自生し、登山者の目を楽しませる。

1-5.シナノキンバイ (信濃金梅, Trollius japonicus)

シナノキンバイ

キンポウゲ科キンバイソウ属の多年草で、信濃地方の高山帯に生育。高さ30〜60cmで、鮮やかな黄色の花を6月から8月にかけて咲かせる。花は大きく、丸みを帯びた形状が特徴。湿った草地や湿原で見られ、群生することが多い。

1-6.エゾシオガマ (蝦夷塩竈, Pedicularis yezoensis)

エゾシオガマ

現在ではハマウツボ科に属する多年草で、北海道や本州の高山帯に生育。高さ20〜50cmの直立した茎を持ち、三角状披針形の葉は下部で対生、上部で互生する。8〜9月に白色から黄白色の唇形花を咲かせ、湿った草地や湿原に見られる。千畳敷カールの中腹部でも見られた他、剣ヶ池の方にもちらほら群生していた。

1-7.ミソガワソウ (味噌川草, Nepeta subsessilis)

ミソガワソウ

シソ科イヌハッカ属の多年草で、日本の高山帯に生育。木曽川の支流・味噌川付近に多く生育することから、この名がついたとか。高さ50〜100cmで、夏に小さな紫色の花を咲かせる。葉は対生し、卵形から披針形。

1-8.ミヤマアキノキリンソウ (深山秋の麒麟草, Solidago virgaurea subsp. leiocarpa)

ミヤマアキノキリンソウ

キク科アキノキリンソウ属の多年草。名前の由来は、夏〜秋に直径1.5 cm程の黄色い丸い花を咲かせることから。高さ30〜60cmで茎は直立し、細長い葉が互生する。高山帯の岩場や草地で見られ、登山者にとって秋の風景を彩る代表的な植物。

1-9.イワツメクサ (岩爪草, Minuartia verna var. japonica.)

イワツメクサ

ナデシコ科ハコベ属の多年草で、岩場に生育。高さ5〜15cmで、白い小さな花を6月から8月にかけて咲かせる。(通りで、ハコベっぽいなと思ったわけだ。)葉は細長く、先が尖った形状が特徴。耐寒性があり、高山帯の厳しい環境でも生育できる。岩の割れ目など細い隙間から、まるでこぼれ種で増えるグランドカバーのように、あちらこちらで自生していた。

2.木曽駒ヶ岳の高山植物|乗鞍浄土〜木曽駒ヶ岳エリア

木曽駒ヶ岳山頂にて

岩の割れ目や砂礫地など、厳しい環境で生き抜くTHE 高山植物が見られるエリア。植物探しも楽しい。

2-1.チシマギキョウ (千島桔梗, Campanula chamissonis)

チシマギキョウ

キキョウ科ホタルブクロ属の多年草で、高山帯に生育。高さ10〜20cmで、青紫色の釣鐘状の花を7月から8月にかけて咲かせる。岩場や草地に自生し、涼しい気候を好む。なお、似た品種にイワギキョウがあるが、こちらは萼片に白い繊毛が生えないので写真はチシマギキョウのはずだ。宝剣山荘から中岳山頂に至る途中の、大岩の下に隠れるようにして咲いていた。

2-2.コマクサ (駒草, Dicentra peregrina)

コマクサ

ケシ科ケマンソウ亜科コマクサ属のの多年草。高さ5〜15cm。ピンク色の花が特徴的で、ハート形をしたピンク色の葉が愛らしく、高山植物の女王としても有名である。花期は7月から8月。岩場や砂礫地に自生し、厳しい環境でも生育できる耐寒性がある植物。頂上山荘から木曽駒ヶ岳山頂へと向かう最後の登り登山道にて、忘れられたように咲いていた。(今回のルートで、コマクサを見かけたのはここだけ。写真が白飛びしてしまっていたのが悔やまれる..)

2-3.トウヤクリンドウ (当薬竜胆, Gentiana algida Gentiana)

トウヤクリンドウ

リンドウ科リンドウ属の多年草。見かけはよく見るリンドウだが、花色が淡い黄色で緑色の筋があるのが特徴。光が当たらないと花弁は開かないとのこと。ちなみに、和名のトウヤク(当薬)は、薬草でも知られている「センブリ」のことであり、トウヤクリンドウも胃薬になることから名付けられたそう。ちょうど見頃ということもあってか、木曽駒ヶ岳山頂のあちらこちらに生えていた。

2-4.ミヤマキンバイ (深山金梅, Potentilla matsumurae)

ミヤマキンバイ

こちらは正直自信がないのだが.. 標高2956mの木曽駒ヶ岳山頂に生えていたのでおそらくミヤマキンバイだと思っている。バラ科キジムシロ属の多年草で、日本の高山帯に自生する。ヘビイチゴのように、根元から束生し羽状に深裂する3つの小葉が特徴的。高さ10〜20cmで、6月から8月にかけて鮮やかな黄色の5弁花を咲かせる。(写真はおそらく花後。)岩場や砂礫地に群生し、耐寒性が高く、厳しい環境でも力強く咲き続ける植物である。

3.木曽駒ヶ岳の高山植物|剣ヶ池エリア

千畳敷駅からも下って行ける、剣ヶ池エリア。
お昼過ぎの訪問だったがすっかり霧が立ち込め、様変わりしていた。

千畳敷カールの下の方、剣ヶ池周辺のエリア。日照条件によっては日陰になりやすく、また池が近いために湿地を好む高山植物が自生・群生するエリア。

3-1.ハクサンボウフウ (白山防風, Peucedanum multivittatum)

ハクサンボウフウ

セリ科カワラボウフウ属の多年草で、白山や日本アルプスに特有。高さ50〜100cmで、白い小花が集まって咲く。7月から9月にかけて見られ、山地や草地で群生することが多い。葉は羽状に深裂し、風に揺れる姿が特徴的。

3-2.タカネスイバ (高嶺酸葉, Rumex lapponicus (Hiitonen) Czernov)

タカネスイバ

タデ科ギシギシ属の多年草、酸味のある葉が特徴的なスイバの高山系。高さ30〜90cmで、花は赤紫色で穂状に咲く。花期は5月から7月。ヨーロッパ原産だが日本では野生化しており、高山帯でも見られるようになったとか。食用や薬用としても利用される。写真は花後、種子になった姿。湿地を好むため、剣ヶ池付近に多く生えていた。

3-3.ムカゴトラノオ (零余子虎の尾, Bistorta vivipara)

ムカゴトラノオ

タデ科イブキトラノオ属の多年草で、高さ10〜30cm。ストロベリーキャンドルにも似た花は小さく白い。葉の付け根にできるムカゴ(小さな球状の芽)が特徴的。6月から8月にかけて花を咲かせ、風に揺れる姿が特徴的である。高山帯や湿原で見られ、千畳敷カール中腹〜剣ヶ池付近で群生していた。

3-4.ヤマハハコ (山母子, Anaphalis margaritacea)

ヤマハハコ

キク科ヤマハハコ属の多年草で、白い花と綿毛のような外見が特徴。高さ30〜50cmで、7月から9月にかけて咲く。岩場や草地に生育し、高山帯の風景を彩る。乾燥にも強く、夏の暑さにも耐えることができる。訪れた時は蕾も多かったのだが、まるで固く閉じたハルジオンのようで愛らしかった。

3-5.ミヤマバイケイソウ (深山梅蕙草, Veratrum stamineum)

ミヤマバイケイソウ

ユリ科の多年草で、白い花が特徴。高さは200cmになることもある。花期は7月から8月。葉は大きく互生し、縦に筋が入る。湿った草地や林縁に生育し薬草としても知られるが、有毒であるため注意が必要。
この花を見かけた時、その珍しい風貌からこれが噂のコマウスユキソウではないかと一瞬心躍った。が、すぐに本能的に違うと分かった。まるで来る者を拒むような、マムシグサのようになんとなく薄気味悪い湿地環境と様相に、「この植物には安易に近寄ってはいけない」と第六感が注意信号を伝えていたのかもしれない。

3-6.サクライウズ(桜井鳥頭, Aconitum sakuraii)

サクライウズ

キンポウゲ科の多年草。日本の本州中部の高山帯に自生する。トリカブトの変種だそうで、青紫色の繊細な花弁と、花に生える曲がった毛が特徴とのこと。高さ10〜30cmで、6月から8月にかけて淡紫色から青紫色の特徴的な花を咲かせる。花の形が鳥の頭に似ていることから「鳥頭」と呼ばれ、トリカブトの漢方名でもある。葉は根生し、3出複葉で、葉の縁は滑らか。岩場や砂礫地に生育するとのこと。剣ヶ池〜千畳敷駅に戻る途中のエリアに生えていた。

3-7.ウメバチソウ (梅鉢草, Parnassia palustris)

ニシキギ科ウメバチソウ属の多年草。その名の通り、梅鉢のような白い5弁の花が特徴。高さ10〜30cmで、花期は8月から9月。山地帯から亜高山帯下部の日の当たりの良い湿った草地に生えるとのことで、ここではまさに剣ヶ池のほとりにひょっこり生えていた。

【まとめ】木曽駒ヶ岳周辺にはアルカリ性を好む高山植物が中心に分布

乗鞍浄土から望む千畳敷駅

いかがだっただろうか?今回は特別編ということで、木曽駒ヶ岳で出会った高山植物20種について解説した。

ちなみにあとで分かったのだが、千畳敷カールはじめとする中央アルプスには、アルカリ性を好む高山植物が中心に分布しているようだ。というのも、中央アルプスは火山活動ではなく地殻変動によって生成された山脈系のため、地盤が石灰質系となっており、アルカリ性に傾いている。そのため、火山活動によって形成された酸性土壌を好む植物、シダやサツキなどは生育しにくいようだ。なお、アルカリ性を好む高山植物としては、今回出会った種類の中ではチングルマなどがあるようだ。確かに、千畳敷カール辺り一面に実に気持ちよさそうに繁茂していた。

植物愛好家の楽園!牧野気分で高山植物探訪に明け暮れよう

撮影当時は右も左もわからず、ただ出会ったことのない花がたくさん咲いているということで、初めて見る花は片っ端から夢中で一眼レフに収めていたところ、膨大な数になってしまった。おそらく、不躾ながらかの牧野富太郎氏も同じ気分だったのだと思う。勿体無いので、せっかくならと備忘録も兼ねて記事にすることにしたのが、本作である。(今回駒ヶ岳紀行について記事を合計4本書いたのだが、一番文字数が多かったのがこの高山植物編だった。笑)

植物好きにとっては、きっとただただ楽しい時間となること請負なので、ぜひ興味がある方はぜひ夏の木曽駒ヶ岳に足を運んでほしい。きっと最高の登山紀行、あるいは植物紀行になるはず。

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