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仮想読書会:「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著の(7)未来
***** 【 仮想読書会が初めての方へ 】 ******
■6人のキャラクターとの仮想読書会 ~AIと創る新しい読書体験~
■「仮想読書会の進め方」と「このnote」
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【 今回の仮想読書会の範囲 】
「世界の本当の仕組み」バーツラフ・シュミル著
第7章 未来を理解する—この世の終わり(アポカリプス)と特異点(シンギュラリティ)のはざまで
※引用に適した文字量などの事情もあり、元の書籍にある詳説のほとんどは、読書メモから割愛しています。今回の範囲に限りませんが、具体的な話や数値など、詳細に興味をお持ちで未読の方は、是非、ご自身でお読みになることをお薦めします。
【 読書メモ(引用、問いなど)】
・この関連で言うと、「農耕地を使わない」都市農業、すなわち高層ビルでの水耕栽培についてのメディアの報道はとりわけ、世界の食料需要が全く理解できていない。(中略)
常に人工光を当てる水耕栽培で、30億トン以上の穀物やマメ類を生産することは、到底ありえない。今や80億に迫り、ほどなく100億に達そうとする人々を養うには、穀物やマメ類に含まれる多量の炭水化物や、比較的多量のタンパク質と脂質が必要とされるのだが。(p.352)
・再び、2つの基本的なインプットの目を向けると、鋼鉄の生産に必要とされる一次エネルギーの理論的最小値、つまり、高炉と酸素転炉を合わせた必要量は、溶融状態の銑鉄1トン当たりおよそ18ギガジュールであり、アンモニアは1トン当たり約21ギガジュール未満では元素から合成することはできない。
解決策として1つ考えられるのは、鋼鉄をアルミニウムで置き換えることだ。これで、特定の構造の質量は減らせるが、一次アルミニウムは一次鋼材と比べて、生産に5~6倍のエネルギーを必要とし、鋼鉄が持つようなはるかに大きい強度が必要な多くの用途には向かない。
窒素肥料のエネルギーコストや環境負荷を削減する最も根本的な方法は、使用量を減らすことだ。その方法は、食料の供給と廃棄が過剰な富裕国であれば採用できるが、主としてアフリカの何億という発育不良の子供は、もっと畜乳を飲んだり肉を食べたりする必要があり、そのタンパク質をもたらすためには、彼らが耕作で使う窒素の量を大幅に増やすしかない。(中略)
基本的な素材の必要量は、今では1年当たり何億トン、何十億トンの単位で量る規模に達している。
それほど大量のものを、まったく異なる生産品に置き換えることなどできるだろうか?40億トン以上のセメントや20億トン近い鋼鉄に取って代わるものなど、あるだろうか?
そして、これらの必要不可欠なインプットを生産する完全に新しい方法へと、数十年単位ではなく数年単位で迅速に移行することも、とうてい無理だ。(p.353-354)
・風力や太陽光や新種のバイオ燃料といった新たな再生可能エネルギーの供給が、21世紀の最初の20年間に約50倍という目を見張るほどの増加を見せたにもかかわらず、世界の化石炭素への依存は、全供給量の87パーセントから85パーセントへとわずかに減っただけであり、そのささやかな相対的減少のほとんどは、旧来型の再生可能エネルギーである水力発電の拡大に起因するものだった。(中略)
最近の脱炭素化のペースを3倍や4倍にしたとしてさえ、2050年には化石炭素が相変わらず主役だろう。(p.355)
・情報や接続は非常に速く進展するし、新しい個人用電子機器の導入も進展が速い。
だが、生存に不可欠なものは、マイクロプロセッサや携帯電話と同じカテゴリーには属さない。
生存には、十分な水の供給の確保、作物の栽培や加工、動物の飼育と食肉処理、大量の一次エネルギーの生産と変換、原料の採掘と無数の用途に合わせた加工などが必要だ。
それらの営みを何十億という消費者の需要に合わせるために求められる規模と、そのような代替のしようがない必需品の製造と流通を可能にするインフラは、新たなソーシャルメディアのプロフィールの作成や、より高価なスマートフォンの購入とはまったく異なるカテゴリーに属する。(p.355-356)
・その結果、アメリカはパンデミックのさなか、せめて病院を閉鎖することだけは避けるため、とうてい数の足りない防護具の空輸の確保に、中国に法外な金額を払わなければならなかった。
グローバル化の素晴らしく優秀な主導者たちが、これらの必須物資の製造のほぼすべてを中国に集中させていたからだ。
毎年軍事に、仮想敵国の軍事費をすべて合わせた額を上回る5000億ドル以上も費やしているアメリカは、絶対確実に起こるはずだった出来事に対する備えがなく、基本的な医療用品の蓄えも十分ではなかった。
国内生産に数億ドル出資していれば、何兆ドルにも達した新型コロナによる経済損失を大幅に削減できていたというのに!(p.360)
・ただし、自然な老化と延命の組み合わせによって、65歳超の人口の割合が著しく増すので、次回のリスクは大幅に高まる。
2050年までにはその割合は約70パーセント増加し、富裕国では4人に1人が65歳を超えると、国連は推定している。
50年に新型コロナより感染力の強い病気のパンデミックが起こったなら、どのように対処すればいいのか?
そのとき、国によっては人口の3分の1が最も脆弱な人のカテゴリーに入ってしまっているのだから。(p.364)
・この難題に対処するときには、非常に大掛かりで長期的であるだけでなく、歴史上初めて真にグローバルな取り組みが求められる。(中略)
効果をあげるためには、どうしても世界的な合意が必要となる。(中略)
少なくとも、現在全排出量の80パーセントを占める上位5か国が、明確で拘束力のある協定に同意しないかぎり、真の進展はありえない。
だが私たちは今、そのようなグローバルな協調行動に着手する状況にはほど遠い。(中略)
さらに、効果的な取り組みはみな費用がかかる。
少なくとも2世代にわたって継続しなければ、温室効果ガスの排出を完全になくせないにせよ大幅に減らすという、望ましい成果をあげられない。
現実的にはとうてい想定できないほど劇的な削減をしたとしてさえ、納得のいく効果は何十年も先まで示せないだろう。
これによって、世代間正義という途方もなく難しい問題が生じる。
というのも、私たちには性懲りもなく未来を軽視する傾向があるからだ。
私たちは将来よりも現在を高く評価し、それに従って値段をつける。
30代の熱心な登山家は、翌年エベレストに登るために、許可証、装備、シェルパ、酸素などの費用として約6万ドルを喜んで払う。
だが、2050年に登頂できる保証を得るためならば、大幅な値下げを要求するだろう。
自分の健康状態、将来のネパール政府の安定性、登山できなくなるほどの大規模な地震がヒマラヤ山脈で起こる確率、エベレストへのアクセスが断たれる可能性など、明らかに登山の妨げとなる不確実性を考えてのことだ。
グローバルな気候変動を緩和するために炭素の値段を付けるというような、複雑で費用のかかる事業を計画するときには、将来を軽視するこの普遍的な傾向はおおいに問題となる。
費用のかかる企てに着手する世代には、はっきり実感できる経済的利益がないからだ。
温室効果ガスは排出された後、長期間大気中にとどまる。
二酸化炭素の場合には、それが最長200年にも及ぶ。
そのため、非常に熱心に削減努力をしてもなお、グローバルな平均地表面温度の最初の著しい低下という、成功の明確な表れは何十年間も見られないだろう。(p.367-369)
・一般的に使われる気候・経済モデルによると、2020年代初めに着手した温室効果ガス排出の削減努力が損益分岐点に達する年、すなわち最適な政策によって正味の経済的利益が得られ始めるときは、早くても2080年頃になるだろうという。
気候変動緩和策を実施したなら、世界の平均寿命(2020年には約72年)が変わらないと仮定した場合、その対策によって蓄積された経済の正味の利益を最初に得るのは、21世紀の半ばに生まれた世代だ。
富裕国の若者たちは自分の目先の利益よりも、このような遠い将来の利益を優先する気になるだろうか?
この方針を、進んで半世紀以上維持するだろうか?
人口が増加している低所得国は、生きるための手段として、化石炭素への依存を拡大し続けているというのに。
そしてまた、現在40代や50代の人は、自分がけっして得ることのない利益をもたらすために、若い人々に加わる覚悟はあるだろうか?(p.370)
・人口が50億人以上も増え、しかも、食料の全生産量のうち、弁解の余地がないほど多くを無駄にし続けているというのに、歴史上どの時代よりも食料に恵まれている世界など、1945年には誰にも予想できなかっただろう。
そしてまた、次のような世界を予見した人もいなかった。
ポリオがあらゆる場所で、結核は富裕国で撲滅されたことに代表されるように、多くの感染症が歴史の片隅に追いやられたものの、最も裕福な国々でさえ、経済的不平等の拡大を防げない世界。
以前よりはるかに清潔で健康だが、同時に、海にはプラスティックが漂い、土壌には重金属が蓄積し、これまでにない形で汚染されており、生物圏の環境の悪化が進んでいるために危うくもある世界。
あるいは、事実上無料で即座に得られる情報があふれているものの、その代償として、誤報や噓、言語道断な主張が大量に拡散している世界を。(p.373)
・パンデミックは1900年以降、18年、57年、68年、2009年、20年と発生しており、その頻度を考えると、2100年までに少なくともあと2、3回起こることが見込まれる。
このような根本的な不確実性とともに生きることは、人間の境遇の本質であり続け、先を見越して行動する私たちの能力に制約を課す。(p.374-375)
<問1>
私たちは、文化的背景や、それまでの経験や学習という素地に基づいて、新たに得た情報を解釈し、活用します。
ところが、クリティカル・シンキング(厳密さを求めるがために批判的でありつつも、建設的な思考)を用いることを忘れ、ウソや誤情報を信じ込んでしまったり、意見が合わない相手と話し合う機会すら放棄してしまったりすることで、社会的な分断が起きてしまうといった状況も起きているのが実態です。
私は、生成AIにプロンプトを入力する際に「ハルシネーション」(出力結果に含まれる誤情報)が無いように指示を与えるのを忘れないよう、気を付けていますが、みなさんは、自身が「カテゴリー錯誤(※)をしてしまわないための工夫、誤情報の発信元にならないための工夫、得た情報を鵜呑みにしない工夫」として、どんな工夫をされているのか、例えば「サイバーセキュリティ対策のために〇〇している」といった具体的な事例を挙げて教えてください。
※あるカテゴリーのものにしか適切に当てはまらない特性あるいは振る舞いを、別のカテゴリーに誤って当てはめること
<問2>
今回の範囲では、「効果的な気候変動緩和策の実施には、世界的な合意と長期的な取り組みが必要」だけど、「その対策に着手する世代には、明確な経済的利益などがない」という趣旨の記述もありました。
このような「長期的で、経済的・社会的な代償を払う必要があるけれど、立場が異なる人々を束ねて取り組む覚悟を決めるために有効な解決策」を、この場ですぐに考え出すのは難しいかもしれませんが、それでも、「目先の利益よりも、遠い将来の利益を優先する決断をして、実際に行動を起こして、望ましい成果が得られた!」という、身近なエピソードを共有し合うことで、何らかのヒントが得られればと思います。
みなさんの暮らしや仕事でこれまでに経験したエピソードを教えてください。
【今回の成果共有】
芸術家:赤松さん
カテゴリー錯誤を避ける工夫として、僕はまず、自分がどんな“視点”でものを見ているかを意識しようとしているんだ。例えば、アート作品を見るときの美的観点と経済指標を見るときの合理性を、一緒くたにしないように心がける。誤情報を発信しないためにも、日々の対話の中で『それはどの文脈で語られているか』をしつこいくらいに確認しているよ。
あと、遠い将来を優先する決断をした経験としては、新作の制作で採算がすぐには取れない代替素材を使ったことかな。すぐ売れるわけじゃないけど、資源が枯渇する未来を思うと長期的に持続する手段を選びたいと思ったんだ。結果としてエコを意識しているギャラリーの目に留まり、作品の評価につながっていったんだよね。
実務家:青柳さん
私の対策としては、まず社内外の情報を取り扱う際にチーム内でダブルチェックのプロセスを設けています。特にサイバーセキュリティでは、不審なリンクのクリックを避けるルール徹底や、送信前の添付ファイル確認など、複数のステップを踏んで誤情報の配信源にならないよう努めています。
また、若いスタッフの研修で長期的視野の事例を伝えたことがあります。入社直後は苦労が多くても、計画的にスキルを高める研修を受けることで、数年後大きなチャンスが巡ってきたケースが多数。短期的成果を追うだけではなく、将来的な利益につながる挑戦が報われる実例を見せると、若い人たちも納得してくれます。
フリーランス:黄田さん
自分は自由に動き回る立場なので、フェイクニュースを鵜呑みにしないためにソースを最低でも2カ所から確かめるようにしてる。例えばネット記事だけじゃなく、信用できる機関の理解を参照するようにしてるんだ。『この数字は誰が出して、どう検証されたのか』っていう疑いの視点を忘れないようにしてるよ。
長期的な取り組みのエピソードとしては、昔、初めて海外に渡ったときに、すぐに成果が出なくても現地の人との信頼関係を丁寧に築いたことが後々大きなビジネスチャンスにつながったことがあった。目先の利益を焦って掴むより、人とのつながりを重視することで、結果的にもっと大きな成功が得られるんだなと思ったよ。
起業家:緑川さん
カテゴリー錯誤への対策としては、一つの概念に対して可能な限り複数の比喩的説明を用意してみたりします。文脈が違えば意味も変わるので、同じ言葉でもどのカテゴリーに属する話かを、あえて言い換えや質問で確かめるようにしてます。
長期視点のエピソードとしては、かつて顧客向けの学習サービスを開発するとき、すぐに教材販売利益を上げるのではなく、継続学習を支援する仕組みを優先したんです。最初は赤字覚悟だったけど、長く続けることで顧客満足度が高まり、後々ブランド価値と口コミ効果につながりました。
物理学者:白石さん
私は常に情報源を複数持って、その信頼性を数値的に評価するよう心掛けています。論文やデータを探すときには、どの地点での測定か、誤差はどの程度かなど、可能な限りファクトを精査し、誤解を招くようなカテゴリーの混乱が起きないよう厳しくチェックします。
そして、長期的に投資をする例としては、研究分野で基礎実験を数年継続し、その後に応用研究へ展開する手法を採ったことがあります。初期は目立った成果がすぐに出ないのですが、長期的には成果物の信頼度や追加の研究資金獲得につながりました。
政府官僚:黒木さん
行政の立場では、誤った情報を鵜呑みにした政策決定をしないため、複数機関のデータを比較し、さらに市民やNPOの意見聴取を行うようにしています。特に環境政策では仮説を立てて検証し続ける姿勢をチームに徹底させています。
長期的利益の具体例としては、以前NPOにいたときに、現場視察に時間とコストをかけるということを決断したんです。書類だけだとわからない実情を長期間観察することで、住民の合意形成が円滑に進み、後々追加コストを下げることに成功しました。短期的には負担でも、長期的にはメリットが大きいと実感しました。
主宰者:7人目
赤松さんの「『それはどの文脈で語られているか?』を確認する話」、緑川さんの「複数の比喩的説明を試みる話。目先の教材販売利益よりも、継続学習を支援する仕組みを優先した話」、黒木さんの「書類だけだとわからない実情を長期間観察することで、住民の合意形成が円滑に進み、後々追加コストを下げることに成功した話」が、特に参考になりました。
問2の「明確な経済的利益などがない、立場の異なる現世代の人々の当事者意識を高めて、束ねて、次世代以降の人々のために気候変動緩和策に着手する件に関するヒントを得る」のは、やはり簡単ではなさそうだと感じました。
「苦痛を避けて、快楽を得る」という人間の行動原理を踏まえるなら、様々な人々の自発的な行動に期待・依存し過ぎていては、気候変動緩和策に着手する見込みが薄いので、やはり「何らかの全地球的視点に立ったうえでの制度を設計し、効果的に運用する方策」に、一定の役割を期待したいと考えました。
◆今回の成果から、どんな問いや展開が浮かびますか?◆
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