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嗚呼ゆめゆめ終わってくれるなぼくの夏休み

また旅が終わる。
分刻み必至のスケヂウルからの解放と云はれれば、さうかもしれない。旅の終わりの独特の疲労感と相混ざつた夢から覚める心地。その微睡みの中で、現実へと向かわねばならぬ日々から、後少し、目を背けてみよう。

今の仕事を始めてから二年。下手くそな能率で仕事をこなしていく中で、私に黒いものがのしかかる。それは時に休めば消えていくもの、時に乗り越えれば気づかぬものであつたが、私にはそれが見えておらぬだけで、その黒いものにずうつと、足首を掴まれていたのである。嘆かわしくも気付かなかつた私は、それの増殖にもてんで無頓着であつた。いつしか自力では外せぬほどに成長し、外圧も加わつて動けぬ日々が続いた。

気づけば、観劇券の抽選を申し込んでいた。決まれば旅券も宿も予約、旅先で会える人に片端から声をかけた。お陰で、駅で待ち合わせて午前中に会う人と出かけ、そこから午後の待ち合わせに移動し別の人と会う、という綿密スケジュールになつてゐた。会う人との時間をできるだけ長くしたい。だが次の人とも長く会いたいから待ち合わせギリギリの電車に乗る。本当に分刻みの旅程である。こんな疫病の蔓延する災禍の中で、防疫は徹底すると云へど、惜しみなく日程調整をして会おうとしてくれる友人たちに感謝である。

京都のある喫茶店の灯り

私は、全国各地に様々な友人がいる。ネツトのオンオフを問はず、会ひたい人、話の合う人がたくさんいる。今回の旅では、高校時代の親友、大学時代の親友或いは先輩、大学時代の恩師、学生時代からのインタアネツト友達(中には初めて会う人も数年振りの人もいた)、社会人になつてからのネ友に、本当に時間の許す限り会つた。疫災や日程が合わず念願が叶わぬ友人もいたが、それさえもまたここに来る理由になる。

旅のスケヂウルを聞いた人からは「よくそんなバイタリテイがあるね」と云はれた。いや、バイタリテイと云ふよりも、「心の充電」が正しいかもしれぬ。旅する事自体が、私を黒い何かから引き剥がす。そして、気の合う友人たちと会ふことが、心の泉を潤す。時に好きな世界観の美術館見学や演劇の観劇。時に好きなインク沼の話や紙にインクを書く行為、インクの展示販売を見て新規購入。時にカラオケやホテル、喫茶店でのとりとめのない会話。時に持ち寄ったボードゲヱム。どの時間もキラキラと光り、どの時間も愛おしかつた。1人の移動時間、睡眠時間がとても惜しかつた。

ここまで誰かに会ひたいと思ふその理由に、今私が、この旅で会つた人々と、遠く離れた場所で、生活しているというのもある。同じ日本に住んではいるが、簡単に週末ドライヴに誘える距離でもなし、此方に遊びにおいでよと無責任に云へる感染状況でもない。それでも会ひたい、話がしたいので、この機会を逃すまい、と多くの友人に声をかけた。総勢12人の会つてくれた皆様、こんな私との時間を作つてくれて本当にありがとう。2人の会へなかつた人達。次こそは会ふ。絶対だ。

貴方達にもう一度会ふ為に、初めて会ふ為に
私は、また現実に戻るし
また、計画を練るし
黒いものに潰されぬよう
生きる所存であります

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なんくるあひる
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