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出奔旅行記3(ギリシャ/アテネ編A)

前作はこちら。

アテネに到着。
ナフプリオからはKTELの直行バスでアテネのバスターミナルへと戻ってきた。(いままでの流れを確認しておくと、日本→シンガポール(トランジット)→アテネ→スパルタ→ナフプリオ→アテネ)
アテネのバスターミナルからホテルへは、ギリシャタクシーの相乗りを経験し、さらにタクシーでぼったくられた(本来せいぜい7€のところを15€)のだが、私がギリシャ語全然わからなかった手落ちと、ガツガツ問い詰めれなかったので無念。

大都市や観光地で旅行する時に思うのは、値段についてちまちま言うのは下品でもみっともなくもないから、しっかり問い詰めたほうがいいなということ。彼らは観光客相手にナチュラルにふっかけてくるし、指摘されてもバレたか〜程度しか思っていない。そういう姿勢を許すのはよくないし(先人のぼったくられは、後人のぼったくられに繋がるから)、ぼったくられるとテンション下がって旅行の気分が萎えるから、ガツガツ言ったほうがいい。
確かに日本だとお金にネチネチ言うとケチって思われるから抵抗があるかもしれないが、適正価格を払おうとすることはケチじゃなくて普通のことであり、それより取られそうなら相手がおかしいのであって、こっちが引く必要はない。
ただ反論を言ってキレられて命が危なくなったりしたら元も子もないから、あんまり無茶はしちゃダメ


国会議事堂前の微動だにしない衛兵たち

国会議事堂前の警備の兵隊さん

日本では政治といえば永田町で、永田町自体に行っても普通の人にとっては特に何もない(失礼)場所だけど、ギリシャはそうではない。シンタグマ広場と呼ばれるアテネの中心地スポット(観光客にとっても地元民にとっても)の目の前に国会議事堂があり、その他の重要な施設も付近に存在している。
国会議事堂前には日本語では「無名戦士の墓」と呼ばれる、独立戦争などで亡くなった戦士たちのためのお墓がある。そしてその左右に衛兵がおり、1時間毎に交代する様子が見られる。
この日は雲ひとつない晴れた日で、衛兵の2人は背中にじとっと汗をかいていた。ファンとかも置かれていない直射日光の元で一ミリも動かずに立っていたらそりゃ汗かくわ。
タイミングによっては盛大な交代式が見られるらしいので、手軽な観光にぴったり。衛兵の交代式は世界のいろいろな場所でこだわって行われているけれど、ちょっとした動作にも意味があったりして調べると面白いと聞いたことがある。(調べる余力はなかった。情報求む)

ミトロポリス大聖堂の礼拝に参加

ミトロポリス大聖堂入り口

シンタグマ広場から西にまっすぐ行くとあるのが、ミトロポリス大聖堂。(西とか南とかよくわかった試しがないので地図見て調べた)
おそらくギリシャの教会のボスのような存在で、いろいろな式典が行われたりするそう。ちょうど日曜日にアテネにいたので礼拝にも参加してみた。
私自身はプロテスタントのクリスチャンなのだが、正教会の礼拝に出るのは人生で初めて。カトリックの礼拝は出たことがあるが、正教会はプロテスタントがカトリックと別れるよりもずっと前の、大シスマ(1054年頃)によって分裂した教派なので、もっと大きな違いがある。
旅行先で自分の宗教とは違うところの礼拝に出るのは如何なものかという意見もあると思うが、教会は誰でも受け入れてくれる場所であるし、献金する人大歓迎に違いないと思い、礼拝開始時刻8:30にいそいそと教会へ向かった。
8:30のアテネの街は昼間すごく静かだが、モーニングをやっているカフェには人がいたし、遍在している教会からは歌声が聞こえて来て、歩いていて一番好きだった時間かもしれない。(なお朝に散歩をするならシンタグマ広場の横にある国立庭園が良いと思う!)

ちなみに、教会は誰にでも開かれている場所だから、マナー(露出のめっちゃ多い服を着ない、礼拝中に喋らないなど)を守って参加すれば、全く問題ない。そもそも、クリスチャンは信仰を宣べ伝えたい人たちなので(語弊がある)、教会に興味を持ってくれる人を基本的にめっちゃ歓迎する。礼拝が始まる前に、初めてきました〜って教会員とかに伝えると優しく案内してる(はず)。献金箱が回ってくることがあるけれど、金額に決まりはないので、好きにして大丈夫(もちろん献金をしなくても問題ない)。
ただ、礼拝の中で行われる、パンと葡萄酒を食べる儀式すなわち領聖は受けられない。(パンと葡萄酒を食べる儀式は、プロテスタントでは聖餐式、カトリックでは聖体拝領、正教会では領聖と呼ばれる。)これらは洗礼を受けた人たちのみが受けることができる儀式なので、洗礼を受けていない人は、座って待っていること。
なお、たとえプロテスタントで洗礼を受けていても、正教会やカトリックの礼拝で領聖や聖体拝領は受けられないただ反対に、プロテスタントの聖餐式を正教会やカトリックで受洗した人が受けるのはオッケー。もちろんプロテスタントやカトリック、正教会の中でも細かに異なるので、一概には言えないけれど、初めて行く教会では無茶しないのがいいと思う。

ミトロポリス大聖堂の内観

8:30に間に合うように教会へ向かったのだが、8:30より前から礼拝は始まっていた。なんでや。
ホームページで何度も確かめていたので、時間通りに行ったのに、すでに礼拝が始まっていた時にはマジでびっっっっくりした。大きな教会だし、新来者にも慣れていて親切だろうと思い、早めに行ってどなたかに教えてもらうつもりだったのだが、そういう雰囲気ではない。アレレ〜って思ってたら、信者の人が「きみがプロテスタントでもカトリックでも構わない、同じ神様を見つめているからね。誰でも教会は受け入れるよ」と言って席に座るように案内してくれたので、席に座った。ホッ。礼拝が始まっていただけで、やはり新来者に親切だった。
ちなみに、泊まっていたホテルの受付のおじさんも、「プロテスタントでもカトリックでも関係ない、教会は誰でもオッケー」って言って教会までの道を教えてくれたので、おそらく観光中に現地の教会の礼拝に行く人は相当いるのだろう。礼拝中に途中参加してきた人の多くがグーグルマップを開いて教会に来ていたので、大きな教会だけれど礼拝の参加者は地元民中心というよりも一度きりの新来者中心なのかもしれない。ま、教会は献金があつまれさえすれば誰がきてもいいからな。

正教会の礼拝は、全身で神様を感じるようにできていると思った。プロテスタントの礼拝では、祈って聖書を共に読み、賛美し、牧師の説教があるのが普通だけれど(カトリックも似たようなスタイル)、正教会ではそういう流れで礼拝を行なっていないように見えた。
もちろん、私がギリシャ語を全くわからなかったので(何もわからない言語の礼拝に参加したということになる。今思うとチャレンジャー)、流れを理解できなかったのかもしれない。けれど礼拝自体は、前の方で聖職者の男性たちがマイクの周りで歌っている(聖書を読んでいるのか、祈っているのか、讃美歌を歌っているのかは不明)のを、信徒たちは座ったり立ったりしながら聞いているというスタイルだった。
教会の奥の方では、司祭(?)らしき人たちが何かをしているのが見え、奥からたまにその人たちが出て来て鐘をならし、(聖書を読んだか祈ったか不明だが)歌うように何かを言う。信徒たちはそれを聞き、立って十字を切ったり祈ったりしていた。
おそらく、プロテスタントなどが頭で聞いて福音を理解するようなやり方をするのに対して、正教会では聖霊によって福音を理解するような方法をとっているのだと思う。聖霊の説明をするのは難しすぎるので省くけれど、簡単に雑にいえば、正教会の礼拝は神聖な雰囲気の中で神様を感じるスタイルだった。礼拝堂は本当に美しいし、教会に反響する歌うような声も心地がいい。教会到着直後は、「こんなにわからない言葉で歌ってるだけの礼拝を2時間も聞いてらんなくね?」って思ってたけど、案外時間があっという間にすぎていた。
クリスチャンの友人たちに、正教会の礼拝に出る・出たという話をしたら、大体みんな私と同じような体験をしていたので、正教会の礼拝はこんな感じであってるっぽい。ある台湾の友達(長老派)は、賛美がホーリーな感じが好きでたまに出ているって言っていて、ちょっと依存性があるねと盛り上がった。確かに、あの神聖な感じはもう一度味わいたいと思うし、説教の礼拝とは違った良さがあるなと感じた。
そして何より、イスラム教に若干繋がる気がする。特にイスラム教ではアザーンという、美しい声の人が選ばれて礼拝への呼びかけをするのシステムがあるのだけれど、正教会で響いた聖職者らの綺麗な歌声に似たところがあるような気がした。本当にそんな気がしただけだから主観オブ主観だけれども、正教会に対抗するように発展したイスラム教だからなんらか影響を受けて似ているところがあってもおかしくはないと思う。考えるのではなくて感じろ!っていう雰囲気も似てる気がする。

ドキドキワクワク! アテネのメトロ

地下鉄の電車の様子

アテネで電車を使って観光をするのであれば、一回ずつのチケットを買うよりも何日分かのチケットを買って使用する方がお得かもしれない。私は5日チケットを買って利用をした。9€だったはず。
パリやイスタンブールでは、チケットは入り口だけで通せば出る時は自由だが、アテネでは入る時も出る時もチケットをタッチするシステムだ。日本と同じだけれど、料金のシステムは距離ではなく、時間だ。
例えば一度だけ電車を使うのであれば、90分のチケットを買って乗ることになるが、この時に一駅だけ乗っても10駅乗っても同じ値段になる。
そういう発想で料金を取るシステムを想像したことがなかったので、知った時は衝撃だった。
ちなみに、アテネの観光地はほとんど歩ける場所に集まっているので、シンタグマ広場近くの宿を取ればメトロをわざわざ使わずに徒歩で観光ができると思う。何度も言うが私は貧乏学生旅行者なので、少し治安の悪いアテネ大学付近に宿を取ったため、体力温存のためにメトロを駆使することになった。
なお、治安が悪い地域(オモニア駅の周辺)で電車に乗ると、電車がすごく落書きされているのがみられる。いっそ芸術だったので写真を撮っておいた。とはいえ、治安は悪そうだけれど、スリが多いっていう感じでもないし、強いていえばジモティーのトラブルが少々ある地域かもしれないけど、観光客に危険な場所という雰囲気ではなかった。(ギリシャはオモニアの治安の悪さを改善するために、いろいろ開発をしたのでそれがうまく行っているんだと思う。かつてはスリでも有名だったらしいし)

治安が悪い地域の落書きラッピング電車

超絶マイナー博物館攻め

ビザンティン・クリスチャン博物館のチケット

後輩に連れられて訪れたのがこのビザンティン・クリスチャン博物館。博物館の見た目に反して、展示物の量が半端ない。ヘビーだった。
ビザンツにおけるキリスト教の歴史のようなものをまとめてくれており、わかりやすい展示ではあるものの情報量が多すぎて回るのが大変だったという印象。前半は当時の文化や慣習の説明が多めだったが、後半はイコンがずらっと並べられた部屋に通されて脳がパンク一生分のイコンを見た。この博物館に行く前は、友達にイコンをお土産にしようかと思っていたけれど、もうイコンを選ぶのもめんどいってくらい見飽きてしまった。

博物館内に復元されていた教会のパーツ

見応えはあるけれど展示物が多すぎて、みんなが足早に会場を抜けていくのが面白かった。私もそれなりに飛ばしながら見ていたが、それよりも皆が早いスピードで私を追い抜いていく。

エロースが目隠しでラッパを吹いている絵

全てではないものの、特徴的な作品のそばにはQRコードがあり、作品説明などがあったので楽しめた。この絵が意味わからなすぎて、QRコードで解説を開いたのだが、解説もほとんど意味がわからなかった。「中央のラッパで目隠しされているのがエロス、左右にはドラゴンの口に閉じ込められている男女がいる」くらいしか書かれていない。ワクワクしてQRコードを読み込んだ私の気持ちが宙ぶらりんになった。なんで男女がドラゴンに喰われてるんだよ。なんでエロースはラッパ2個同時吹きなんだよ。博物館の最後の展示物でこれが来たので膝から崩れ落ちた。

ビザンティン・クリスチャン博物館は、アテネで観光に飽きてどこにも行くところがなくなったり、キリスト教が大好きな人にはオススメの博物館だった。そうでない限りは他の観光スポット行った方が楽しいと思われる。

想像力が試されたリュケイオン

この写真を撮ったときにはウキウキしていたがまさか……

ビザンティン・クリスチャン博物館の隣にはリュケイオン跡地があった。アリストテレスの学び場があったところだ。
私はアリストテレス大好きオタク(史上から一人人物を消せるのであればアリストテレスを消したいと思っているくらいアリストテレスが好き。アリストテレスいない世界線で生きてみたい。つまりだいぶ嫌い)なので、来訪しておこうと思い、入場。

リュケイオンの様子

……が、これがまた難儀な遺跡だった。
ほとんど何も残ってなくて、岩がゴロゴロしているだけ。運動する場所だったとか散歩して哲学をする場所だったとか色々言われているが、じゃあ実際どこで何をしていたのかはさっぱりわからない。遺跡があまりにも残っていないから、研究も進んでいないらしく、パネルの説明も曖昧だった。
この乏しい考古学的遺跡から、この場所が人類の歴史の中で最も重要な場所の一つであることを理解することは困難である」とまで書いてあるパネルもあった。

右の方にIt is difficult to appreciate, from the scant archaeological remains on this site[……]とある

これにはアリストテレス大好きオタクの私も参ってしまった。想像力豊かな方だが、なにも浮かばない。ワクワクして訪れたものの非常に残念。でもそうだよな、アリストテレスの著作だってモノホンは残ってなくて、全集だってロドスのアンドロニコスが編集してこうなったんだしなあ。ケッ。
不貞腐れて、「やはりわざわざ旅行して場所を訪れずとも、家で本を読んでいる方がよっぽど得るものが多いし、生で何かを見なくてもパソコンの画面で十分だろ」と思いながらリュケイオンを後にした。

ハドリアヌスの凱旋門でテンション爆上げ

北東側から見たハドリアヌスの凱旋門

リュケイオンでガン萎えしていたテンションが、このハドリアヌスの凱旋門を見たことで爆上げ。今思えばただの門の跡なのだけど、リュケイオンがあまりに草原すぎたのでそれに比べたら立派な遺跡だった。
ハドリアヌスといえば、テルマエ・ロマエでお馴染みのあの温泉おじさん(市村正親が演じていた)だが、色々なものをアテネで作っている。アテネに再び繁栄をもたらしたとも言われ、ハドリアヌスを讃えるために建てられたのがこの凱旋門。
テルマエ・ロマエといえばだけど、アテネにもテルマエの跡があった。
ハドリアヌスの凱旋門の近くにあって(このテルマエの遺跡はゼウス神殿の中)、買ったドリンクを飲むために座る場所を探していたら見つけた。ちなみに、シンタグマ広場の近くにも、もう一つテルマエの遺跡があったので(ギリシャは街中に平気で遺跡が放置してある。開発途中に見つかっちゃったんだと思う)、テルマエはめちゃくちゃポピュラーな娯楽施設だったっぽい。

テルマエの跡地(ゼウス神殿の敷地内)

ちょっとわかりにくいけれど、服を脱ぐスペースや待合室、温かいお風呂だけじゃなくて水風呂まであったらしい。やはりコレもハドリアヌスの時代のものらしいが、その後教会として使用されたようで、バシリカ建築ぽい跡が見えた。
おい耶蘇!

教会に蹂躙されたハドリアヌスの図書館

ハドリアヌス繋がりで述べておくと、ハドリアヌスの図書館という遺跡もある。これはアゴラの近くの方なので、ゼウス神殿や凱旋門からは少し歩く。
図書館っぽい跡はあまり残っていない、というのもその後に教会が建てられてしまったので、バシリカ建築が色濃く残っているからだ。とりあえず、入場料分はガッツリ楽しもうと思って、写真撮影をいっぱいしてきた(後輩撮らせてごめんね、ありがとう)

あんまり映えなかったので供養

書物を読み上げるレクチャールームの跡などは少し残っていたので、そういうのに興味があれば行く価値はあると思うけれど、基本的には当時の様子があまり想像できない遺跡なので、欠かさずに行ったほうがいいタイプの名所ではないかもしれない。

一本盗んでもバレなそうなゼウス神殿

さて、ゼウス神殿ハドリアヌスの凱旋門から見えるくらい近いのだが、入り口がすごく遠くにあって、凱旋門からは無駄に歩かされる。けれど、訪れるなら一緒に済ませた方がいい。

いいそびれたが、アテネの近辺の遺跡はオープンデーだと無料だけれど、普通はちょこっとずつお金がかかる(一箇所だいたい6€-15€)。まとめて来訪するコンバインチケット(共通チケット)が30€であるのでそちらがお得。1日に全てを回る必要はなく、5日かけてOK。25歳以下の学生は半額でどこでも入れるけれど、それでももしかしたらコンバインチケットが安いかもしれないので要確認。ちなみに、夏場と冬場ではチケットの料金も、営業時間も異なるはずなので注意されたい。

こちらもオープンデーで無料だった。

ゼウス神殿は、アテネが僭主政の時代に立てようとしたものの、途中で挫折。その後、初代皇帝アウグストゥスの時代に再建がスタートされて、ハドリアヌスの時代に完成したらしい。
百本以上の円柱が建てられ、壮大な神殿だったが、東ローマ帝国時代に(テオドシウス2世の治世)キリスト教以外の宗教施設だからという理由で破壊されてしまい、石材は周辺の教会建築に利用されたと言われている。

ゼウス神殿は工事中だったけれど、きっと壮大な神殿が立っていたのが想像できた。

スパルタでもそうだったが、キリスト教はそれ以前の宗教の神殿を壊して素材を利用して好き勝手して、クソ宗教じゃねぇか……。っていうか他の宗教を潰そうとする宗教はよくないぜ……。広げたいのはわかるけどよ……。

この神殿を見ていて驚いたのは、こういう石の長い円柱って一本の石で作られているのではなくて、だるま落としみたいに、輪切りの石柱が重ねられているってことだった。
写真が少しわかりにくいのだけれど、石柱が倒れた時には一本が粉々になるのではなく、輪切りパーツに分かれて崩れている。

輪切り石柱の様子

今まで、こういった石柱をまじまじと見たことなかったから気づかなかった。遺跡に行ったからこそ気づけたし、やっぱり生で遺跡を見るのって価値があるな〜!

感動して友達に神殿の写真送ったら、「一本くらい持って帰ってきたら?」って返事がきたが、歴史上で石柱を持って帰った人はすでにちゃんといる。
再建前の状態の神殿から、ルキウス・コルネリウス・スッラって人は、ローマに神殿を建てるためにここから石柱を持ってっちゃったらしい。そりゃできてる円柱あったら持ってくわ。

いざアテネ考古学博物館へ!

考古学博物館の正面。朝9時に行きました。

後輩に連れられ(今更だけど後輩は考古学ガチ勢なのでこの旅行では博物館にたくさん行く)、朝から博物館に。チケットは予めスマホ上で購入しておいた。そういえばギリシャのアテネ観光用サイトでのスマホでの決済は、SIMのモバイルデータ通信では上手くいかなかったのに、ホテルのWi-Fiだとうまくできた。なぜかはわからない。
入場時にチケットで混みそうな場所は、予めここでチケットを買っておくのはオススメ。QRコードを読み込ませるだけですぐに入れる。

さて、気を取り直して博物館へIN。
一番最初に目に飛び込んできたのはコレ、アガメムノンの黄金のマスク!!!
あのミケーネ遺跡からシュリーマンが見つけたという……!
ミケーネ遺跡にも行ったので、興奮がマックス。2つの金のマスクの間に入ってスリーショットを後輩に撮ってもらった。その写真をラテン語の先生に送ったら「勝手に送ってくるなんてお前変なやつだな」って言われたけれどそれくらい興奮してた。

右がアガメムノンの黄金のマスク

後輩曰く、シュリーマンのホメロスの読解が発掘に繋がったらしくて、そんなバカな……って感じがとにかくエモい。シュリーマン何者?
この後、あまりに金のアイテムが出土しすぎてて金を見飽きた。何でもかんでも展示をすればいいってもんじゃないんだぞ。出し惜しみしてくれ。

帽子が2つくっついちゃったみたいに見える

こ、この特徴的は瓢箪は……!
ミケーネ遺跡のところの博物館では、この瓢箪のような形の絵が展示されていた。後輩曰くそれはミケーネの盾だと聞いていたが、考古学博物館では実物にまみえることができた。破損しているから詳しくはわからないけれど、この盾って凹凸が元々あったんだな。てっきりぺたんこの盾だと思っていたから、実物を見て驚いた。
というか、ミケーネの考古学博物館では盾の壁画しか見られなかったのに、アテネでは出土品としての本物の盾を見ることができて、完璧なフラグ回収が起きてすごく楽しい。
他にも、アテネ考古学博物館は見どころたっぷりで、ガッツリ見ると時間がどんどん食われた。程よく飛ばしながら、サクッと見て回ってきた。

美術の教科書とかに載っているらしい像
お気に入りの馬と少年。精巧な作りだった。
盾の近くに展示されていた武器。金が付いている部分で殴ると痛そうで思わず写真を撮った。
教養人の間では有名な像らしいが……。後輩撮影。

そういえばギリシャ、こういう像と同じポーズで写真を撮ることが不敬とされているみたいだ。同じポーズを撮るとスタッフらに怒られるらしい。

古代アゴラ散策

世界史で学んだアゴラは、人が集まる場所って習ったから、公民館みたいな感じの狭い場所だと思っていたのだけれど、アテネのアゴラは広大だった。アゴラって場所に色々なものがあるっていうより、色々な施設がある場所をアゴラと呼んでいたんだな。アゴラ自体はそこまで綺麗に残っていないものの、この場所を歩いた人たちを想像してワクワクした。

アゴラの様子

アゴラには、ソクラテスが収監されていたかもしれない刑務所の跡地もあった。というか、跡地自体は石がゴロゴロしているだけでわからなかったんだけれど、説明を読んでそこが刑務所だと発覚。細長い建物だったとわかっているそうだ。

気持ち細長そうな岩があるところ、刑務所跡地らへん

ソクラテスはニンジンポイズンで死んだと言われているけど、その跡地からはそのポイズンが入れられていただろう薬瓶がいくつか見つかっているらしい。あと、ソクラテスらしき小像も見つかったことから、ソクラテスを処刑した後にアテネ人がそれを悔いて記念に飾ったのではと言われてる。
てか、毒ニンジンが英語でhemlockって呼ばれているのをここで初めて知った。ヘムロック、かっこいい。

刑務所跡地の近くに立っていた説明パネル石

ソクラテスの刑務所を見て喜ぶ観光客、私以外誰もいなかったんだけど、じゃあ一体みんなはアテネに何をしにきているんだろう?と思いながら刑務所を満喫。
この日は風が気持ちよくて、アゴラのベンチに座ってるだけで楽しかった。一人で行ってたら、一時間くらい座ったままぼーっとしてたかもしれない。私が今座っているところにも、かつては誰かが座って、オウィディウスみたいに女を口説いたりしたのかな、とか思うと楽しい。

古代アゴラの博物館
古代アゴラ遺跡内のストアの部分に博物館があった。ストアとは回廊のことで、細長い長方形の空間、つまりもうなんかでかい廊下だ。ちょうどいいからと、でかい廊下が博物館にされていて、出土したものが展示されていた。
まじでアテネは博物館が多すぎる。出土したものを全て飾ろうとしなくてええんやで?
てか、旅行の同行者が違かったらこの博物館をスキップしてたかもしれない。

陶片追放の陶片

古代アゴラの博物館には、世界史で学んだ、陶片追放の陶片が飾られていた。オストラコンとは陶片のことで、ギリシャ語ではオストラキスモスと言われるから、こちらの言葉で覚えている人もいるだろう。
高校生の時に学んだ時には、変なシステムだなあって思ってたけれど、発掘されている陶器の多さを思うと、割れた陶器を使うのって賢いなと感じる。
これで一定数の票数を獲得すると10年追放されるらしいが、実際に陶片追放で追放されたのは10件ほどだそうだ。
陶器をよくよく見てみると、一番上の陶器にはペリクレスという名前が書いてある。アルファベットとも共通しているから、ギリシャ語が読めなくても「*E*IKLES」と書いてあるのは読めるはず。ペリクレスはアテネの最盛期の指導者として有名(やはり世界史で覚えた)なので見れて嬉しい。

ペリクレスと書かれた陶片

他の展示物は大体アテネ考古学博物館と似ていたのでサラーっと見学終了。

アクロポリス博物館

アゴラとはみんなが集まる場所だったが、アクロポリスとはポリスの「アクロス(高い)」ところにあり、神殿などが築かれている。アゴラから少し登ったところにアクロポリスがあるというわけだ。
さて、アゴラにも考古学博物館があったけれど、アクロポリスにも考古学博物館がある。アクロポリス博物館は、アクロポリス入場料とは別なので注意したい。かなり新しい博物館で、展示はスタイリッシュ。アクロポリスから出土したものはもちろん、パルテノン神殿の復元の展示とかもあるので、見ておくと実物を前にした時の解像度が上がる。
学生料金で入ったはずだけれど、10€。結構しっかり取るみたい。

サイトを確認したら一般は15€だった。けれど、展示内容は充実しているし妥当なお値段だと思う。というのも、私はここに入るまでは、「今からパルテノン神殿を生で見に行くのにここ行く必要ある?」と後輩に駄々を捏ねていたのだが、行ってみたらかなりしっかり展示があってびっくりした。どうせ出土された壺が大量に並んでいるだけだと思っていたがそんなことはなかった。閉館時間が他の施設に比べて早めなので注意が必要。
チケットを購入し中に入る。

アクロポリス考古学博物館

アクロポリスには、パルテノン神殿以外の神殿もある。パルテノン神殿の隣にあるエレクテイオン神殿の玄関は特徴的で、女の子6人が玄関の屋根を支えている。その女の子の現物がここに展示されていた。(外のアクロポリスには複製が設置されている)
こういう屋根を支える女の子の像をカリアティードというらしく、観光客がこぞって写真を撮っていた。私もワクワクして写真を撮った。ちなみに6人のうちの1人は大英博物館に拉致られているらしい。返してやれよ、イギリス。とはいえ、イギリスは、この子を返すと他の拉致被害者(他の国から取ってきた品々)も返さなきゃいけなくなるだろうし、そう簡単に返してくれなさそうだった。

カリアティードの後ろ姿。

続いて、壺が多すぎるので飛ばしていたら後輩から呼び止められて鑑賞した壺がこちら。ちなみに、バスからの風景をみていて驚いたけれど、ギリシャの土は基本的に赤い。そのために壺はオレンジなんだと思う。(ギリシャの壺に対してテラコッタという説明はあまりみないから、詳しくはわからんけど)壺の模様にも時代の変遷があって、最初は黒のインクで模様を描くだけだったのが、黒絵式と呼ばれる黒いシルエットで絵を描くのが流行り、その後に赤絵式と呼ぶような、背景を黒にして、赤い部分に黒で線をかいて細かく描写するのが流行った。下の壺は赤絵式の壺。

赤絵式の壺

これは、アテネの結婚式の様子を描いている壺なのだが、花嫁が重装ベールをかぶっている。後輩曰く、古代の結婚では花嫁は前が見えない状況で家から連れ出されて相手の家に嫁いだらしい。何それ、やば、萌える。
かるーく調べたけれど、古代アテネでは結婚式は3日に渡って行われたらしく、結構な儀式がなされていたようだ。現代につながる儀式もあって面白い。ベールを花婿が取るのも(anakalypteriaと言うらしいが)、古代アテネの儀式から由来しているのだろうと思う。
自分が結婚から程遠すぎて、現代の結婚システムもよく分かってないからこれ以上これ調べるのしんどいしやめておこう。気になる人は、このWikiが手っ取り早かったのでどうぞ。これ読んでて、アテネの結婚よりもスパルタがとにかくやばくて笑った。

ギリシャ、アテネといえば……アクロポリス

そして念願のアクロポリス。後輩が、「パルテノン神殿から見る夕日は最高」というので夕日が見える時間を狙ってアクロポリスに登っていく。人に見せてあげたいほど素晴らしい景色を知っているのは、幸せなことだと思う。
パルテノン神殿があるアクロポリスは、入場で混むかもしれないからとチケットはあらかじめ買ったが、そんなに混んではいなかった。そういやオーバーツーリズムのニュースをこの夏は何度か聞いたかが、ギリシャはそんなにヤバいって感じではなかったな。それでいうと、日本が一番混んでる気がする。

アクロポリスは入場口からも上に登る必要があり、黙々と丘を登っていく。途中にいくつか遺跡があり、職人たちがここで工芸をしていたとか、小さな劇場があったりするのを見ながら進む。
途中で音楽が聞こえ出して近づいてみると、アクロポリスの音楽堂にオケが入っていた。その晩にはコンサートがあったようで、リハーサル最中だった。ここはヘロディス・アッティコス音楽堂というのだが、改修がなされたことで現代も使用されているらしい。ここで喜劇とかをみるのは最高だろうと思うが、同時に現代のマナーを持ち込まなきゃいけないから、夢が壊れるし、だるそう。(オウィディウスみたいに目ぼしい相手の膝に触って口説いたりとかはできなそう)薄めたワインとか飲みながら見れるのだろうか。

アクロポリスのヘロディス・アッティコス音楽堂

この音楽堂、解説のパネルには、このヘロディスさんが妻を亡くした際に追悼で建てた音楽堂だとあった。ヘロディスさんは愛妻家だったんだなあ、とその時は思っていたが、Wikiを読んでみたら、ヘロディスさんはもちろん愛妻家だがそれ以上にかなり濃いキャラだったので、皆さんもよければぜひ。

自分の財産を惜しみなく社会のために使うの、かっこいいなと思う。私もそういうことしたい。

パルテノン神殿
プロピュライア
と呼ばれる、神殿の入り口のような門を抜けると、パルテノン神殿が見える。残念ながら改修中らしく、足場が組んであったものの、圧巻だった。かっこいい。
すきぴに写真を送ったら「思ったより黄色い」と返ってきたが、確かに結構黄色い。すきぴがかわいい。

世界遺産のマークとかに使われている、パルテノン神殿の表側

アクロポリス博物館ではこの上の装飾が再現されている。

アクロポリス博物館の展示

この右の馬の部分があるのだが、ちょっと注目してほしい。

アクロポリス博物館の装飾の展示のアップ

パルテノン神殿の現地にもこの馬は残っていて、柱の上部に潰されたみたいにいた。画像は少し彩度を上げて見やすくしているけれど、馬が口を開いているのが見えると思う。

パルテノン神殿の装飾

こういう装飾が全て残っている時に見たかったなと思うと同時に、むしろこれだけ残っているだけでもすごいよなと感心する。

エレクテイオン神殿
エレクテイオン神殿はパルテノン神殿の目の前にある。エレクテイオン神殿は作りがかなり複雑で不思議な神殿で、見応えがあった。作りも複雑なら用途も複雑だったらしく、現地ガイドがそれぞれバラバラな説明をしていた。

先ほどの博物館で見た6人の少女たちは、ここで玄関の屋根を支えている。最初、まさかここが玄関だと思わなくて、なんでここだけ飛び出してるんだ?って感じだった。ちなみにこの玄関は、ペロポネソス戦争のために予算が縮小されたとかなんとか。

右がエレクテイオン神殿、中央奥はプロピュライアと呼ばれる神殿入り口

エレクテイオン神殿の神殿の方は、博物館やガイドの説明で聞いていた通り不思議な作りをしていて、見学するのも一苦労だった。結構な時間を使って内部を見たが、ごちゃごちゃした遺跡でよくわからなかった。
神殿の神域にはオリーブが植えられていて、これは神話に基づいて最近植えられたオリーブだった(アテナがポセイドンと戦っている時にオリーブが生えた話が元になっていて、その話を元にした像もあり、アクロポリス博物館に保存されている)。べつにこの木自体は特別なオリーブではないのに、みんなが写真を撮っていた。多分みんな、大昔からあるオリーブだと勘違いしている。

別になんでもないオリーブだけど、植えられた場所が場所なので特別扱いされてるオリーブ

アクロポリスの神殿たちは、保存状態も良く、迫力があった。結構長い時間見ていても飽きないし、いく時には余裕を持っていくといいかもしれない。
ちなみに、せっかく夕日を見にきたのに分厚い雲が被ってしまって日が落ちるのをみることはできなかった。アクロポリスから見る夕日を熱弁していた後輩だったので可哀想だった。その日が最終日だったので、どうすることもできなかったが、前日にもアクロポリスに行って夕日チャレンジをしていればよかったの少し後悔。夕日を見にいくのであれば、日数に余裕を持っていくのが吉。

パルテノン神殿の裏(エレクテイオン神殿がない方)からはアテネの街が見下ろせる。アクロポリスが思いの外アクロス(高い)ところにあるのがわかってもらえると思う。神殿に向かって、アクロポリス内でも斜面があるのはもちろん、街全体が坂になっているから、この見晴らしの良さは納得だ。

アクロポリス頂上から見た景色。中央やや左の黒い建物がアクロポリス博物館

さて、アテネ編Aはここまで。飲食物などをまとめたアテネ編Bへと続く。


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