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三鷹歌農書 2341-2360

無花果は花の無き果と言はるるも果を花のごとひらくもありぬ
三鷹歌農書(二三四一)
鍬よりも長くなりたるヘビウリの何を目指すや寂しからんか
三鷹歌農書(二三四二)
大きさも重さも超えてしまひたるトロンボンチーノをシャベルと並ぶ
三鷹歌農書(二三四三)
湧きいづるウコンの白き苞葉のうすむらさきの端のあかるさ
三鷹歌農書(二三四四)
銛かまへ狙ひ定むる落花生土に子房柄つき刺すところ
三鷹歌農書(二三四五)
掘り上げしところを軽く蹴とばせばオオマサリまだ出るは出るは
三鷹歌農書(二三四六)
採らざれば烏に取られ落花生それでもお裾分けは忘れずに
三鷹歌農書(二三四七)
洗ふのは二度までにせよラッカセイ土色残るらしさも美味さ
三鷹歌農書(二三四八)
二十年使ひ続くる洗ひ棒しぶきは桶の高さを越えず
三鷹歌農書(二三四九)
塩すこし水から茹でてさんじゆつぷん経てばオオマサリのアルデンテ
三鷹歌農書(二三五○)
オオマサリならばなほさら茹であげし殻の積まれて山なす速さ
三鷹歌農書(二三五一)
オオマサリの殻に一粒のみなれど翻車魚(まんばう)のやうなるを口に入れたり
三鷹歌農書(二三五二)
満月の縁のひび割れたるを取るボウルの塵を濾しし蜜蝋
三鷹歌農書(二三五三)
花房の銀河に包むオカワカメ葉の萎れゆくブドウの棚を
三鷹歌農書(二三五四)
焼却炉の煙突よりも長くなりヘビウリは己のためのみに伸ぶ
三鷹歌農書(二三五五)
咲き笑ひ枯れて舌出すしたたかさローズヒップはあつけらかんと
三鷹歌農書(二三五六)
家に着くまではの首飾りとなるもトロンボンチーノの役目の一つ
三鷹歌農書(二三五七)
ま二つに折りてレシピを教へあへばトロンボンチーノがマラカスに見ゆ
三鷹歌農書(二三五八)
舞踏会のステキなドレスですよねと結球したるレタスに少女
三鷹歌農書(二三五九)
一列に踊り子並べ指揮をとるレタスの畝に少女しやがんで
三鷹歌農書(二三六○)


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